ー特別編ー命ヲ啜ル玩具
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そこには金のリボンをかけられた黒い箱がおいてあり、中には等身大のニッキー・ZとMCフライがはいっている。
女の人形はダイヤモンドをちりばめた時価三千万円の白いウエディングドレス、男は白いタキシードだという。くだらない話。
社長のカウントダウンと同時に箱はひらかれ、ウエディングパーティが始まるのだ。中途半端なタレントやCMにでているだけのモデルや女優が、すでにたくさん会場には集まっている。
簡単なリハーサルが終わると、五分ほどで本番だった。女性レポーターの声は、半音高くなり、必死の調子になった。
日差しはもう夏だ。
風も気持ちいい。
絶好の生中継日和。
「池袋のキッズファームまえからライヴでお送りしています。今日はみなさん、なんの日かわかりますか」
おれたちのほうを振り向く。誰もニッキーのウエディングとこたえなかった。
レポーターは真っ赤な顔になっていた。
Sガールズはさっとふたてに分かれ、おれとコモモを守るような隊型をとる。
ちいさな声でディレクターが叫んだ。
「どうしたんだ。」
おれとコモモはニッキーのフェイスマスクを脱ぎ捨てた。
コモモはカメラに向かって血まみれのニッキー・Z人形と引き伸ばした紅小栄の写真を突きだした。
写真は二枚。
ひとつはうつくしい笑顔、残りは誰が見ても死んでいるとわかる解剖台のうえの死体だった。コモモは早口に叫んだ。
「わたしの姉は中国にあるニッキーの工場で殺されました。ファンのみなさん、この人形は中国の女性たちの血で濡れています。工場の環境をよくするために、力を貸してください。キッズファームに今すぐ抗議の電話をしてください。もう人形のために人がしぬことがないように」
生放送はパニックになった。現状では誰も状況を正確に把握しているものはいないようだ。
ガードマンがSガールズに突入したが、テレビカメラのまえで女を殴るわけにもいかない。
もみあっているだけ。
最初に事態収集に動き出したのは、あの広告部長である。灰色のスーツの裾をなびかせ、青ざめたレポーターに近づき、マイクにむかっていった。
「このかたは中国から、現地工場のたいへんな状況を知らせにやってきてくれました。わたしどもの会社としましても、事態を深刻に受け止め、きちんと調査をして、全国のファンのみなさまにご報告するつもりです。紅さん、今日はどうもありがとうございました」
カメラから顔をそむけると、刺さりそうな視線でおれとコモモをにらみつけた。おれはやつの目の前で、つぎのハンドサインをだしてやった。
五十人の声がまたそろう。
「ニッキーは人を殺さない。ニッキーは人を殺さない。ニッキーは人を殺さない。イエー」
そのあとでさらに七分間続いたお昼のワイドショーの内容については、おれはぜんぜん知らない。
なにせ生中継の現場にいたからね。おれたちは中継が終わる前にその場を撤収していた。
逃げ足が速いのは、この街で生き残るための絶対な条件なのだ。
タカシは通りの反対側にとめたシヴォレー・アストロから、おれたちのほうを眺めていた。
スモークフィルムの張られたヴァンのなかには、いざというときのための戦闘要員も準備していたのだ。
だが、今回その必要はなかった。仕事というのはいつも、こんなふうに血を見ずにスムーズにいきたいものだ。
女の人形はダイヤモンドをちりばめた時価三千万円の白いウエディングドレス、男は白いタキシードだという。くだらない話。
社長のカウントダウンと同時に箱はひらかれ、ウエディングパーティが始まるのだ。中途半端なタレントやCMにでているだけのモデルや女優が、すでにたくさん会場には集まっている。
簡単なリハーサルが終わると、五分ほどで本番だった。女性レポーターの声は、半音高くなり、必死の調子になった。
日差しはもう夏だ。
風も気持ちいい。
絶好の生中継日和。
「池袋のキッズファームまえからライヴでお送りしています。今日はみなさん、なんの日かわかりますか」
おれたちのほうを振り向く。誰もニッキーのウエディングとこたえなかった。
レポーターは真っ赤な顔になっていた。
Sガールズはさっとふたてに分かれ、おれとコモモを守るような隊型をとる。
ちいさな声でディレクターが叫んだ。
「どうしたんだ。」
おれとコモモはニッキーのフェイスマスクを脱ぎ捨てた。
コモモはカメラに向かって血まみれのニッキー・Z人形と引き伸ばした紅小栄の写真を突きだした。
写真は二枚。
ひとつはうつくしい笑顔、残りは誰が見ても死んでいるとわかる解剖台のうえの死体だった。コモモは早口に叫んだ。
「わたしの姉は中国にあるニッキーの工場で殺されました。ファンのみなさん、この人形は中国の女性たちの血で濡れています。工場の環境をよくするために、力を貸してください。キッズファームに今すぐ抗議の電話をしてください。もう人形のために人がしぬことがないように」
生放送はパニックになった。現状では誰も状況を正確に把握しているものはいないようだ。
ガードマンがSガールズに突入したが、テレビカメラのまえで女を殴るわけにもいかない。
もみあっているだけ。
最初に事態収集に動き出したのは、あの広告部長である。灰色のスーツの裾をなびかせ、青ざめたレポーターに近づき、マイクにむかっていった。
「このかたは中国から、現地工場のたいへんな状況を知らせにやってきてくれました。わたしどもの会社としましても、事態を深刻に受け止め、きちんと調査をして、全国のファンのみなさまにご報告するつもりです。紅さん、今日はどうもありがとうございました」
カメラから顔をそむけると、刺さりそうな視線でおれとコモモをにらみつけた。おれはやつの目の前で、つぎのハンドサインをだしてやった。
五十人の声がまたそろう。
「ニッキーは人を殺さない。ニッキーは人を殺さない。ニッキーは人を殺さない。イエー」
そのあとでさらに七分間続いたお昼のワイドショーの内容については、おれはぜんぜん知らない。
なにせ生中継の現場にいたからね。おれたちは中継が終わる前にその場を撤収していた。
逃げ足が速いのは、この街で生き残るための絶対な条件なのだ。
タカシは通りの反対側にとめたシヴォレー・アストロから、おれたちのほうを眺めていた。
スモークフィルムの張られたヴァンのなかには、いざというときのための戦闘要員も準備していたのだ。
だが、今回その必要はなかった。仕事というのはいつも、こんなふうに血を見ずにスムーズにいきたいものだ。