ー特別編ー命ヲ啜ル玩具
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「もうあきらめます。わたしはどこか別な街にいって、アルバイトを探すことにします。もうすこし日本で生活したいから、姉のこともキッズファームもすべて忘れます。」
新は黙ってコモモの肩を抱いていた。
おれの腹の底からなにかグラグラと沸き上がってきた。
ちいさな正義を求めて、女ひとり数千キロを旅してコモモは、この街にきた。
その返事がこれなのだろうか。
正当な怒りも、ささやかな償いも、わずかな現状の改善さえなく、すべてを忘れて日のあたらない場所で隠れていける。
日本という国は、何万人というコモモのような人間を、ただの労働力として使い捨てにするだけなのだろうか。
それでは深センの工場とこの国と、まったく同じことになる。おれたちは誰ひとりただのベルトコンベアではないし、人形の頬を染めるスプレーマシンでもないはずだ。
おれはコモモにいった。
「わかったよ。だけど尻尾を巻くのはいつでもできる。4・23までは姉さんのために闘ってやらないか。やつらだって、アンタの姉さんのことはよくないことだとわかってるんだ。そうでなきゃ、こんなに必死になってコモモを潰そうとはしない。いいな、やつらも怖がっているんだぞ」
新が目をあげて、おれを見た。黙ってうなずく。
コモモもまだ腫れの残る顔をあげた。
「わかりました。あとすこしだけ、がんばります」
新が明るい声をだした。
「そうと決まったら、今夜からうちに泊まっていきなよ。コモモちゃんはあたしといっしょに寝ればいいよ。どんなやつが来ても手を出させないから安心してよ」
新さんといって、コモモは泣きながら新に抱きついた。なぜだか知らないが、おれのまわりにいる女たちはみな抱きつく相手を間違えるのだ。
ここにひとりMCフライの何十倍もリアルでいい男がいるのに。
見る目がないのは困ったことだ。
その夜、おれは池袋のホットラインを使用した。
ガキの王様にまっすぐつながる携帯の生命線だ。
取り次ぎから変わったタカシにいった。
「水曜の夜に定例の集会があるよな」
タカシの氷は四月の終盤になっても、少しも角を丸めていなった。
『悠が集会の話をするなんて、めずらしいな。今度はなんだ』
「ちょっと顔をだして、おれに話をさせてもらいたいんだ」
やつがおもしろがっているのがわかった。
電話のむこう側の空気が急に冷え込んだからである。おれはコモモとキッズファームの闘いを手短に話した。
タカシはふんふんと鼻の先で返事をしている。
「今回、金は全然ないんだ。でも、コモモをなんとかしてやりたいし、キッズファームのやり口にも我慢できない」
新は黙ってコモモの肩を抱いていた。
おれの腹の底からなにかグラグラと沸き上がってきた。
ちいさな正義を求めて、女ひとり数千キロを旅してコモモは、この街にきた。
その返事がこれなのだろうか。
正当な怒りも、ささやかな償いも、わずかな現状の改善さえなく、すべてを忘れて日のあたらない場所で隠れていける。
日本という国は、何万人というコモモのような人間を、ただの労働力として使い捨てにするだけなのだろうか。
それでは深センの工場とこの国と、まったく同じことになる。おれたちは誰ひとりただのベルトコンベアではないし、人形の頬を染めるスプレーマシンでもないはずだ。
おれはコモモにいった。
「わかったよ。だけど尻尾を巻くのはいつでもできる。4・23までは姉さんのために闘ってやらないか。やつらだって、アンタの姉さんのことはよくないことだとわかってるんだ。そうでなきゃ、こんなに必死になってコモモを潰そうとはしない。いいな、やつらも怖がっているんだぞ」
新が目をあげて、おれを見た。黙ってうなずく。
コモモもまだ腫れの残る顔をあげた。
「わかりました。あとすこしだけ、がんばります」
新が明るい声をだした。
「そうと決まったら、今夜からうちに泊まっていきなよ。コモモちゃんはあたしといっしょに寝ればいいよ。どんなやつが来ても手を出させないから安心してよ」
新さんといって、コモモは泣きながら新に抱きついた。なぜだか知らないが、おれのまわりにいる女たちはみな抱きつく相手を間違えるのだ。
ここにひとりMCフライの何十倍もリアルでいい男がいるのに。
見る目がないのは困ったことだ。
その夜、おれは池袋のホットラインを使用した。
ガキの王様にまっすぐつながる携帯の生命線だ。
取り次ぎから変わったタカシにいった。
「水曜の夜に定例の集会があるよな」
タカシの氷は四月の終盤になっても、少しも角を丸めていなった。
『悠が集会の話をするなんて、めずらしいな。今度はなんだ』
「ちょっと顔をだして、おれに話をさせてもらいたいんだ」
やつがおもしろがっているのがわかった。
電話のむこう側の空気が急に冷え込んだからである。おれはコモモとキッズファームの闘いを手短に話した。
タカシはふんふんと鼻の先で返事をしている。
「今回、金は全然ないんだ。でも、コモモをなんとかしてやりたいし、キッズファームのやり口にも我慢できない」