ー特別編ー命ヲ啜ル玩具
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それでも、コモモとおれはめげなかった。
コモモのアパートは、風呂なしの四畳で、北口から歩いて十分。
おれたちは湿った畳の上で、新たに三百枚をガリ版で刷りあげて、街にでる。
箱にではなくビニール袋に入れたビラを、おれは軍パンのウエストに押し込んだ。
宣戦布告の意味もこめて、グリーン大通りのキッズファームにいった。
「ニッキー・Zの秘密だよ。」
日曜日の半分ほどの長さになった行列にビラを配る。広告部長はガラスのむこうから、感情の読めない視線でじっとこちらを見つめてきた。
おれは瞬間接着剤をビラに塗ると、やつの目の前に張り付けてやった。
ガードマンが飛んでくる前にコモモにいった。
「いこうぜ。ここはもういい。次は郵送だ」
空は今にも雨の降りそうな重苦しい銀色に変わっていた。おれたちは念のために西一番街じゃなく。新宿に戻った。
コモモの腫れたら頬を見て、新は顔色を変えた。
「まさか悠がやったんじゃないよね!」
コモモは力なく首を横に振った。
「部屋で作業がある。うるさいから、顔をださないで店番していてくれ。」
おれの部屋にあがり、マスコミの住所録をネットで調べた。
思い付く限りのニュース番組の名前を書いた封筒に、あのビラと小栄の写真のコピーをいれていく。
連絡先はおれとコモモの携帯にした。
こんな餌でやつらがくいついてくればいいのだが。
一枚の紙切れと広告の大スポンサーでは、だいぶ分が悪いと思った。
今回のケースはテーブルのしたで足を蹴り合うような泥仕合だった。
おれがいつも相手をしているストリートのガキどもは、腕っぷしは強くてもさして頭がよくない、だが、キッズファームの対応は陰湿で、しつこかった。
コモモが真っ青な顔でうちの店先にたったのは、その日の真夜中である。
夜になって音もなくあたりをびしょびしょに濡らす春の雨が降っていた。
コモモは中国製の破れたビニール傘をなげやりにさしている。
木戸を閉じようとして気づいた新がいった。
「どうしたの、コモモちゃん!」
コモモはもう涙を隠さなかった。
「新さん、悠さん、わたしはキャッチの仕事、首になりました。もう来月から暮らしていけないです。」
新はコモモを奥室にあげて、バスタオルで濡れた肩と髪をふいてやった。
しゃくりあげるコモモの話を総合するとこんな調子。
警察への通報とコモモ襲撃に続いて、やつらがつかったのは一本の電話だった。本社前でおれたちがビラまきをしているとき、コモモの働くチャイニーズヘルスに垂れ込みがあったのだ。
おたくのキャッチガールが、地元の立派な大企業と問題を起こしている。
おかげで北口の風俗はあがったりだ。いつまでもあんな女を雇っているなら、警察の調べが入るぞ。
匿名の電話は突然切れて、寒がった(びびった)オーナーはその日のうちにコモモの首を切った。
風俗営業は警察ににらまれるわけにはいかない仕事だ。事情を知らないオーナーを責めることもできない。
コモモは最後にいった。
コモモのアパートは、風呂なしの四畳で、北口から歩いて十分。
おれたちは湿った畳の上で、新たに三百枚をガリ版で刷りあげて、街にでる。
箱にではなくビニール袋に入れたビラを、おれは軍パンのウエストに押し込んだ。
宣戦布告の意味もこめて、グリーン大通りのキッズファームにいった。
「ニッキー・Zの秘密だよ。」
日曜日の半分ほどの長さになった行列にビラを配る。広告部長はガラスのむこうから、感情の読めない視線でじっとこちらを見つめてきた。
おれは瞬間接着剤をビラに塗ると、やつの目の前に張り付けてやった。
ガードマンが飛んでくる前にコモモにいった。
「いこうぜ。ここはもういい。次は郵送だ」
空は今にも雨の降りそうな重苦しい銀色に変わっていた。おれたちは念のために西一番街じゃなく。新宿に戻った。
コモモの腫れたら頬を見て、新は顔色を変えた。
「まさか悠がやったんじゃないよね!」
コモモは力なく首を横に振った。
「部屋で作業がある。うるさいから、顔をださないで店番していてくれ。」
おれの部屋にあがり、マスコミの住所録をネットで調べた。
思い付く限りのニュース番組の名前を書いた封筒に、あのビラと小栄の写真のコピーをいれていく。
連絡先はおれとコモモの携帯にした。
こんな餌でやつらがくいついてくればいいのだが。
一枚の紙切れと広告の大スポンサーでは、だいぶ分が悪いと思った。
今回のケースはテーブルのしたで足を蹴り合うような泥仕合だった。
おれがいつも相手をしているストリートのガキどもは、腕っぷしは強くてもさして頭がよくない、だが、キッズファームの対応は陰湿で、しつこかった。
コモモが真っ青な顔でうちの店先にたったのは、その日の真夜中である。
夜になって音もなくあたりをびしょびしょに濡らす春の雨が降っていた。
コモモは中国製の破れたビニール傘をなげやりにさしている。
木戸を閉じようとして気づいた新がいった。
「どうしたの、コモモちゃん!」
コモモはもう涙を隠さなかった。
「新さん、悠さん、わたしはキャッチの仕事、首になりました。もう来月から暮らしていけないです。」
新はコモモを奥室にあげて、バスタオルで濡れた肩と髪をふいてやった。
しゃくりあげるコモモの話を総合するとこんな調子。
警察への通報とコモモ襲撃に続いて、やつらがつかったのは一本の電話だった。本社前でおれたちがビラまきをしているとき、コモモの働くチャイニーズヘルスに垂れ込みがあったのだ。
おたくのキャッチガールが、地元の立派な大企業と問題を起こしている。
おかげで北口の風俗はあがったりだ。いつまでもあんな女を雇っているなら、警察の調べが入るぞ。
匿名の電話は突然切れて、寒がった(びびった)オーナーはその日のうちにコモモの首を切った。
風俗営業は警察ににらまれるわけにはいかない仕事だ。事情を知らないオーナーを責めることもできない。
コモモは最後にいった。