ー特別編ー命ヲ啜ル玩具
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月曜日はまた春の鈍い青空。おれは学校や店のことを丸投げしてから、パルコにむかった。
今年のカラーはさまざまなトーンのグリーンのようで、ショーウインドウのなかには緑の服を着たマネキンがたくさん突っ立っていた。背景は鮮やかな菜の花の鉢植え。
洗礼されている。
おれはウインドウのへりに腰かけて、コモモを待った。
仕事にあぶれたキャッチガールはなかなかやってこなかった。
電話しようかと携帯を抜いた十五分後、両手にピンクのハイヒールをさげて、裸足で池袋駅まえをふらふらと歩いてくる。
片方の頬が薄く内出血していた。
「どうした、コモモ」
コモモはおれの顔を見て安心したようだった。
たくさんの通行人がいきかうなかで、しゃがみこんでしまう。
おれはひざをついて、震える肩に手をおいた。
「何があったんだ。話してみろ」
コモモは必死に涙を落とさないように耐えていた。
打たれた頬は前髪を垂らして隠している。
「線路をくぐる地下道の手前で、男たちに襲われた。ビラのはいった段ボール箱を取ろうとしたけど、わたしはつかんで離さなかった。そうしたら思い切り頬をたたかれて、突き飛ばされた。日本の黒社会のやつら。見て」
コモモはハイヒールをあげて見せる。片方のヒールが根元からはがれていた。
「そうか。キッズファームも必死だな。ここで待ってろ。瞬間接着剤、買ってきてやる。」
おれは近くのコンビニに向かいながら考えた。
きっと昨日の帰りに誰かが、コモモのあとをつけていたのだろう。
住まいと仕事はすぐにばれて、やつらの嫌がらせが始まった。何億円ものキャンペーン費用をかけて一大イベントを盛り上げようとういときに、怪しげな中国娘が出てきて告発文をファンに配り、マスコミに送るというのだ。
やつらが理不尽と思うのは無理もなかった。
だが、押し潰せる障害なら、まるごと粉砕して利益だけ極大化しようというキッズファームの体質には問題があるはずだった。
利益率をあげるために、無理な発注をする。
それがまわりまわって中国の南西部で小栄を生むことになるのだ。
おれは見事なショーウインドウを横目にみながら、複雑な気分だった。
おれたちの社会では気ままな消費者でいることはもうできないのだ。
安いから、かわいいから、便利だからというだけでは、十分ではない。
自分でなにかを選んで代価を払うとき、その買い物が地球上の遥かに離れた場所で引き起こすバタフライ効果を予測しなければならないのだ。
アンタの買い物で、どこかの国の子どもがひとり命を落とすなんて、嫌だろう。
ショッピングは優れて理論的にして、哲学的な難題になりつつある。
おれはコンビニで、これを買うことで誰かを苦しめませんようにと祈りつつ、接着剤を購入した。
今年のカラーはさまざまなトーンのグリーンのようで、ショーウインドウのなかには緑の服を着たマネキンがたくさん突っ立っていた。背景は鮮やかな菜の花の鉢植え。
洗礼されている。
おれはウインドウのへりに腰かけて、コモモを待った。
仕事にあぶれたキャッチガールはなかなかやってこなかった。
電話しようかと携帯を抜いた十五分後、両手にピンクのハイヒールをさげて、裸足で池袋駅まえをふらふらと歩いてくる。
片方の頬が薄く内出血していた。
「どうした、コモモ」
コモモはおれの顔を見て安心したようだった。
たくさんの通行人がいきかうなかで、しゃがみこんでしまう。
おれはひざをついて、震える肩に手をおいた。
「何があったんだ。話してみろ」
コモモは必死に涙を落とさないように耐えていた。
打たれた頬は前髪を垂らして隠している。
「線路をくぐる地下道の手前で、男たちに襲われた。ビラのはいった段ボール箱を取ろうとしたけど、わたしはつかんで離さなかった。そうしたら思い切り頬をたたかれて、突き飛ばされた。日本の黒社会のやつら。見て」
コモモはハイヒールをあげて見せる。片方のヒールが根元からはがれていた。
「そうか。キッズファームも必死だな。ここで待ってろ。瞬間接着剤、買ってきてやる。」
おれは近くのコンビニに向かいながら考えた。
きっと昨日の帰りに誰かが、コモモのあとをつけていたのだろう。
住まいと仕事はすぐにばれて、やつらの嫌がらせが始まった。何億円ものキャンペーン費用をかけて一大イベントを盛り上げようとういときに、怪しげな中国娘が出てきて告発文をファンに配り、マスコミに送るというのだ。
やつらが理不尽と思うのは無理もなかった。
だが、押し潰せる障害なら、まるごと粉砕して利益だけ極大化しようというキッズファームの体質には問題があるはずだった。
利益率をあげるために、無理な発注をする。
それがまわりまわって中国の南西部で小栄を生むことになるのだ。
おれは見事なショーウインドウを横目にみながら、複雑な気分だった。
おれたちの社会では気ままな消費者でいることはもうできないのだ。
安いから、かわいいから、便利だからというだけでは、十分ではない。
自分でなにかを選んで代価を払うとき、その買い物が地球上の遥かに離れた場所で引き起こすバタフライ効果を予測しなければならないのだ。
アンタの買い物で、どこかの国の子どもがひとり命を落とすなんて、嫌だろう。
ショッピングは優れて理論的にして、哲学的な難題になりつつある。
おれはコンビニで、これを買うことで誰かを苦しめませんようにと祈りつつ、接着剤を購入した。