ー特別編ー命ヲ啜ル玩具
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誰もが手に人形をもっている。おれはひどく場違いなところにはいりこんだ気がした。
コモモが声を抑えていった。
「いきましょう。悠さん。」
遊歩道の人波に突入すると、キッズファームと人形の製造工場への告発文を配り始めた。
おれはやけになって、前髪をしっかりとあげて後ろに結わえて思い切り陽気に叫んだ。
「みなさーん、かわいいニッキー・Zの誰も知らない秘密を書いたチラシがありますよ。お友達にもあげてくださいねー」
小学生の女の子がおれのところに殺到する。
NHKの体操のお兄さんにでもなった気がした。
まあ、相手が子どもならおれの爽やかさがものをいう。
コモモとおれは小さな段ボール箱とキッズファームの玄関先を何度も往復し、ビラをまいた。
そのうちにショールームでも、おれたちの動きに気づいたようだった。
最初にやってきたのはピンクと紫の60年代風のタイトなワンピースを着たコンパニオンだった。
おれのまえに立つと困った顔でいう。
「あの、なにをなさっているんですか」
おれはとっておきの笑顔をつくり、つけまつげをした巻き髪のコンパニオンにビラを十枚ほどまとめてわたしてやった。
「こいつはニッキー人形の誕生の秘密だ。会社のえらいさんにみせてやってくれ。全部真実だし、おれたちはこれから毎日ここに顔をだす。池袋の駅前でもこのビラを配る。それが嫌なら……」
おれはコモモの必死の表情を見た。
どんな言葉が適切なのだろうか。そこで思い出していう。
「……どうすればいっしょに正しいことができるのか、おれたちと話し合ってくれ」
女はなにをいっているのかわからないという顔で、ビラをもってガラスの巨大な自動ドアをくぐった。
コモモとおれは声をあわせた。
「ニッキー・Zの誕生秘話が書いてあるよ。無料パンフレットです。どうぞ」
やはり広告理論のいうとおりだった。
メッセージは絞りこまれたターゲットにピンポイントで送ったほうがより効果的なのだ。
もみくちゃになりながら、ビラを配るコモモにいった。
「もう駅まえはしんどいからやめよう。明日からは本社まえだけでいいよ」
凄腕キャッチは闘いの顔のまま、おれにうなずき返した。
反応はコンパニオンがもどって、五分後にあらわれた。
濃いグレイのモード系のスーツを着た男が、両手をまえに組んでおれたちのまえに立った。
アラン・ミクリの薄い四角のしゃれたメガネに、はらりと額に落ちたまえ髪。
三十歳若ければ学園ドラマの嫌味な学級委員役が似合いそうな中年男だった。
うしろには体格のいい男性社員がふたり、センスのかけらもない紺のブレザー姿でこちらをにらんでいる。
中年男はていねいに頭をさげていった。
コモモが声を抑えていった。
「いきましょう。悠さん。」
遊歩道の人波に突入すると、キッズファームと人形の製造工場への告発文を配り始めた。
おれはやけになって、前髪をしっかりとあげて後ろに結わえて思い切り陽気に叫んだ。
「みなさーん、かわいいニッキー・Zの誰も知らない秘密を書いたチラシがありますよ。お友達にもあげてくださいねー」
小学生の女の子がおれのところに殺到する。
NHKの体操のお兄さんにでもなった気がした。
まあ、相手が子どもならおれの爽やかさがものをいう。
コモモとおれは小さな段ボール箱とキッズファームの玄関先を何度も往復し、ビラをまいた。
そのうちにショールームでも、おれたちの動きに気づいたようだった。
最初にやってきたのはピンクと紫の60年代風のタイトなワンピースを着たコンパニオンだった。
おれのまえに立つと困った顔でいう。
「あの、なにをなさっているんですか」
おれはとっておきの笑顔をつくり、つけまつげをした巻き髪のコンパニオンにビラを十枚ほどまとめてわたしてやった。
「こいつはニッキー人形の誕生の秘密だ。会社のえらいさんにみせてやってくれ。全部真実だし、おれたちはこれから毎日ここに顔をだす。池袋の駅前でもこのビラを配る。それが嫌なら……」
おれはコモモの必死の表情を見た。
どんな言葉が適切なのだろうか。そこで思い出していう。
「……どうすればいっしょに正しいことができるのか、おれたちと話し合ってくれ」
女はなにをいっているのかわからないという顔で、ビラをもってガラスの巨大な自動ドアをくぐった。
コモモとおれは声をあわせた。
「ニッキー・Zの誕生秘話が書いてあるよ。無料パンフレットです。どうぞ」
やはり広告理論のいうとおりだった。
メッセージは絞りこまれたターゲットにピンポイントで送ったほうがより効果的なのだ。
もみくちゃになりながら、ビラを配るコモモにいった。
「もう駅まえはしんどいからやめよう。明日からは本社まえだけでいいよ」
凄腕キャッチは闘いの顔のまま、おれにうなずき返した。
反応はコンパニオンがもどって、五分後にあらわれた。
濃いグレイのモード系のスーツを着た男が、両手をまえに組んでおれたちのまえに立った。
アラン・ミクリの薄い四角のしゃれたメガネに、はらりと額に落ちたまえ髪。
三十歳若ければ学園ドラマの嫌味な学級委員役が似合いそうな中年男だった。
うしろには体格のいい男性社員がふたり、センスのかけらもない紺のブレザー姿でこちらをにらんでいる。
中年男はていねいに頭をさげていった。