ー特別編ー命ヲ啜ル玩具
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グリーン大通りにはJR池袋駅からまっすぐに護国寺まで延びる東口のメインストリートである。
両側にイチョウやケヤキの並木がそろい、端正なオフィスビルが妙な統一感をもって数百メートルも続いている。
空は湿った灰を巻いたような曇り空だった。
東京では抜けるように硬い青空は冬の印で、空が鈍く灰色がかったら春がきた証拠なのだ。
楽に二台の車がすれ違えそうな広い遊歩道を歩きながら、おれはコモモにきいてみた。
「なんで日本の企業と話をつけようと思ったんだ」
コモモは残念そうにいう。
「中国で異議申し立てができればよかったのですが。どの工場でも同じ状態では、説得力がありません。警察も司法も新聞も、党の味方なのです。どこかに方法がないかと探しているときに、日本人の観光客を案内しました。わたしは地元ではガイドをやっているのです。ニッキー・Zと工場の話をしたら、日本にいくといいとその人が教えてくれました。日本では党ではなく、消費者が一番えらい。子供たちの遊ぶ人形が、そんな環境でつくられているなら、みんな関心をもつだろう。資本主義の世界なのだから、お金の流れる上流から圧力をかけるほうがいいと」
どこにでも頭のいいやつがいるものだ。
コモモの横顔を見ると、柔らかな笑みにとろけていた。なるほど。
「で、そいつとコモモは今でも、つきあっているのか」
コモモはあわてて手を振った。こういうときには若い女は世界のどこでも同じかもしれない。
「つきあっているなんて、とんでもない。彼は名古屋に住んでいるし、奥さんもいるし、つきに一度会って食事をしたりするくらいです。」
顔を赤くして、コモモはいった。純情なのだろう。
こんなふうに照れる若い女を久しぶりにおれは見た。
ビラ配りなどやめて、このまま春の雑司が谷霊園(葉桜が見事なのだ)でも散歩したくなる。
歩道の先にたいへんな人だかりが見えてきた。
コモモは表情を引き締めていう。
「到着しました。キッズファームです」
おれも目をあげて、鈍い曇り空を一段青く映すガラスのビルディングをにらんだ。
キッズファームの本社屋は、ハーフミラーで包まれた九階建てのインテリジェントビルだった。
正面の壁面には、一辺が十数メートルはある黒い布が張られてダブルベッドほどの幅の金のリボンがかけられていた。
4・23、ニッキーZになにが起こる?
ここでもウエディングキャンペーン一色だった。
一階の天井は五メートルほどの高さの吹き抜けになっていて、受付と自社製品のショールームを兼ねていた。
人だかりはすべて、ニッキー・Z人形のブースに集中している。
本社限定販売の特別モデルと有名デザイナーの衣装が売られているのだ。
小学生くらいの女の子と若い母親が、同じようなセクシーなへそだしのコスチュームで行列をつくっていた。
両側にイチョウやケヤキの並木がそろい、端正なオフィスビルが妙な統一感をもって数百メートルも続いている。
空は湿った灰を巻いたような曇り空だった。
東京では抜けるように硬い青空は冬の印で、空が鈍く灰色がかったら春がきた証拠なのだ。
楽に二台の車がすれ違えそうな広い遊歩道を歩きながら、おれはコモモにきいてみた。
「なんで日本の企業と話をつけようと思ったんだ」
コモモは残念そうにいう。
「中国で異議申し立てができればよかったのですが。どの工場でも同じ状態では、説得力がありません。警察も司法も新聞も、党の味方なのです。どこかに方法がないかと探しているときに、日本人の観光客を案内しました。わたしは地元ではガイドをやっているのです。ニッキー・Zと工場の話をしたら、日本にいくといいとその人が教えてくれました。日本では党ではなく、消費者が一番えらい。子供たちの遊ぶ人形が、そんな環境でつくられているなら、みんな関心をもつだろう。資本主義の世界なのだから、お金の流れる上流から圧力をかけるほうがいいと」
どこにでも頭のいいやつがいるものだ。
コモモの横顔を見ると、柔らかな笑みにとろけていた。なるほど。
「で、そいつとコモモは今でも、つきあっているのか」
コモモはあわてて手を振った。こういうときには若い女は世界のどこでも同じかもしれない。
「つきあっているなんて、とんでもない。彼は名古屋に住んでいるし、奥さんもいるし、つきに一度会って食事をしたりするくらいです。」
顔を赤くして、コモモはいった。純情なのだろう。
こんなふうに照れる若い女を久しぶりにおれは見た。
ビラ配りなどやめて、このまま春の雑司が谷霊園(葉桜が見事なのだ)でも散歩したくなる。
歩道の先にたいへんな人だかりが見えてきた。
コモモは表情を引き締めていう。
「到着しました。キッズファームです」
おれも目をあげて、鈍い曇り空を一段青く映すガラスのビルディングをにらんだ。
キッズファームの本社屋は、ハーフミラーで包まれた九階建てのインテリジェントビルだった。
正面の壁面には、一辺が十数メートルはある黒い布が張られてダブルベッドほどの幅の金のリボンがかけられていた。
4・23、ニッキーZになにが起こる?
ここでもウエディングキャンペーン一色だった。
一階の天井は五メートルほどの高さの吹き抜けになっていて、受付と自社製品のショールームを兼ねていた。
人だかりはすべて、ニッキー・Z人形のブースに集中している。
本社限定販売の特別モデルと有名デザイナーの衣装が売られているのだ。
小学生くらいの女の子と若い母親が、同じようなセクシーなへそだしのコスチュームで行列をつくっていた。