ー特別編ー命ヲ啜ル玩具
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『マルコ・ポーロ』は、東洋と西洋を結んだマルコの旅を一年間の四季に分けて、重層的に描いた作品だ。
オーケストラだけでなく、お得意の中国琵琶とかタブラとかシタールとかが大活躍する。
おれはCDコンポで「時空之書:春」を無限リピートさせながら、コモモの文章を読んだ。
日本語のテニヲハですこし間違いがあるが、心情のこもったいい告発文だった。元の文章に熱があるなら、直しは最小限にしておいたほうが結果はいい。
おれは自分のコラムに手を入れたときの原則に従って、赤字はほとんどいれなかった。
三度目の春をきいたあとで、パソコンを立ち上げた。サーチエンジンに飛んで、キッズファームと入力する。
ヒットしたサイトの数は天文学的な百四十万件。
コモモの闘う相手の巨大さに目がくらみそうになった。
本社のホームページでは、四月二十三日になにかが起こるという予告広告ばかりだった。
そこでいくつかしたに並んだキッズファームの非公式サイトに飛んでみる。
BBSをのぞいたら、すぐに人形になにが起こるのかわかった。
なんともバカらしい話。
芸能人カップルの中継なんかでもそうだけど、おれたちはいつからこんなことで空騒ぎするようになったのだろうか。
日本の女たちも、小栄の十分の一でいいから、工場のなかを走った方がいいのではないだろうか。
BBSでは議論が白熱していた。
テーマはニッキー・Zの結婚について。
お相手は才能あるラッパーにして、シアトル・スーパーソニックスの名ポイントガード、MCフライだ。
MCフライはニッキーの幼なじみで、「音楽的にお互いを高めあう」良好な関係をハイスクールのころから築いてきたという。
どちらの人形の経歴も、いくらスクロールしても読みきれないほど詳細にでっちあげられていた。
四月二十三日は人形同士の結婚式の日なのだ。
とことんくだらない話。
だが、その夜テレビをつけたらおれは驚くことになった。
例の黒地に金のリボンのCFが集中豪雨的に、どのチャンネルからも流れていたのである。
とんでもない量の出稿で、半端じゃない額の広告費を投入しているはずだった。
キッズファームは本気なのだ。ニッキー・Zをもっている世界一千万のファンに、ソウルパートナーとしてMCフライを買わせようとしている。
ウエディングイベントは、すべて周到なマーケティングによる販売作戦なのだった。
おれはベッドに倒れ込んで考えた。
これほどの大キャンペーンを打つ国際優良企業と、コモモは紙切れ一枚で闘おうとしている。
イラクとアメリカ、紅姉妹とキッズファーム。
正義と物量の戦いでは、歴史上つねに物量が勝利を収めてきた。
おれは全力を尽くすつもりだったが、最後は祈ることしかできないのではないかと思った。
春の池袋で、その他大勢の世界と同じ結果が起きませんように。
アラーもキリストもついでにブッダも信じてないおれの祈りは、どこに届くのだろうか。
オーケストラだけでなく、お得意の中国琵琶とかタブラとかシタールとかが大活躍する。
おれはCDコンポで「時空之書:春」を無限リピートさせながら、コモモの文章を読んだ。
日本語のテニヲハですこし間違いがあるが、心情のこもったいい告発文だった。元の文章に熱があるなら、直しは最小限にしておいたほうが結果はいい。
おれは自分のコラムに手を入れたときの原則に従って、赤字はほとんどいれなかった。
三度目の春をきいたあとで、パソコンを立ち上げた。サーチエンジンに飛んで、キッズファームと入力する。
ヒットしたサイトの数は天文学的な百四十万件。
コモモの闘う相手の巨大さに目がくらみそうになった。
本社のホームページでは、四月二十三日になにかが起こるという予告広告ばかりだった。
そこでいくつかしたに並んだキッズファームの非公式サイトに飛んでみる。
BBSをのぞいたら、すぐに人形になにが起こるのかわかった。
なんともバカらしい話。
芸能人カップルの中継なんかでもそうだけど、おれたちはいつからこんなことで空騒ぎするようになったのだろうか。
日本の女たちも、小栄の十分の一でいいから、工場のなかを走った方がいいのではないだろうか。
BBSでは議論が白熱していた。
テーマはニッキー・Zの結婚について。
お相手は才能あるラッパーにして、シアトル・スーパーソニックスの名ポイントガード、MCフライだ。
MCフライはニッキーの幼なじみで、「音楽的にお互いを高めあう」良好な関係をハイスクールのころから築いてきたという。
どちらの人形の経歴も、いくらスクロールしても読みきれないほど詳細にでっちあげられていた。
四月二十三日は人形同士の結婚式の日なのだ。
とことんくだらない話。
だが、その夜テレビをつけたらおれは驚くことになった。
例の黒地に金のリボンのCFが集中豪雨的に、どのチャンネルからも流れていたのである。
とんでもない量の出稿で、半端じゃない額の広告費を投入しているはずだった。
キッズファームは本気なのだ。ニッキー・Zをもっている世界一千万のファンに、ソウルパートナーとしてMCフライを買わせようとしている。
ウエディングイベントは、すべて周到なマーケティングによる販売作戦なのだった。
おれはベッドに倒れ込んで考えた。
これほどの大キャンペーンを打つ国際優良企業と、コモモは紙切れ一枚で闘おうとしている。
イラクとアメリカ、紅姉妹とキッズファーム。
正義と物量の戦いでは、歴史上つねに物量が勝利を収めてきた。
おれは全力を尽くすつもりだったが、最後は祈ることしかできないのではないかと思った。
春の池袋で、その他大勢の世界と同じ結果が起きませんように。
アラーもキリストもついでにブッダも信じてないおれの祈りは、どこに届くのだろうか。