ー特別編グレーゾーンボーイー
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「いいよ。なんでもいえよ。」
「これから家に帰るから、ぼくを見ていてくれないかな。ひとりだと途中でダメになりかもしれない。正直になる勇気がだせなくなりかもしれない。あのさ、うちのなかにははいってこなくていいよ。でも、家の外から、ずっとぼくを見ていてほしいんだ」
そういえば、丸岡はガードレールにすわっているだけで、ミノルを震えあがらせた。
どうやらおれは逆に、遠くから見守るだけでこいつの勇気を震い起こさせる力があるらしい。
これが人徳ってやつだ。
着実に、忍耐強く、賢くあれ。
そうすれば、いつかあんたもゴールにたどり着ける。
ミノルの家は雑司が谷鬼子母神の先にある分譲住宅地の一角だった。
周囲は緑と寺の多い静かな街だ。
きれいに区画整理された敷地には、クローンのようにどこが違うのかわからない白い家がすき間なく並んでいた。
どれも冬の夕日を浴びて、濡れたようなオレンジ色だった。
「じゃあ、いってくる。全部話したら、あとで二階の窓から手を振るから」
おれはランドセルの肩ストラップをぎゅっとにぎって、戦場にむかうように白い家に帰るミノルの背中を見つめていた。
勇気のあるところを見せるんだ、ちいさなブラザー。
二車線の狭い通りのむかいにあるガードレールにすわって、夕日の色が深まるのをじっと見つめていた。
オレンジ色の家が真紅に一瞬燃え上がるまでの二十五分間。
おれはただ待った。
待つことは苦になら無かった。
冬の風が吹いても寒くはなかった。
空にだけ明るさが残り、家々の屋根が黒く沈むころ、ミノルの白い家の二階に明かりがついた。
カーテンが開いて、やつのてのひらがしっかりと振られている。
ミノルは泣き笑いの顔でおれを見た。
おれはほほえんでガードレールから立ち上がった。
家に帰る。
夕空に見つけたちいさな星。そいつをずっと目の端で追いながら。
そんな気分ならクリスマス前の街をひとりで歩くのも、そう悪くないものだ。
ーグレーゾーンボーイ・完ー
「これから家に帰るから、ぼくを見ていてくれないかな。ひとりだと途中でダメになりかもしれない。正直になる勇気がだせなくなりかもしれない。あのさ、うちのなかにははいってこなくていいよ。でも、家の外から、ずっとぼくを見ていてほしいんだ」
そういえば、丸岡はガードレールにすわっているだけで、ミノルを震えあがらせた。
どうやらおれは逆に、遠くから見守るだけでこいつの勇気を震い起こさせる力があるらしい。
これが人徳ってやつだ。
着実に、忍耐強く、賢くあれ。
そうすれば、いつかあんたもゴールにたどり着ける。
ミノルの家は雑司が谷鬼子母神の先にある分譲住宅地の一角だった。
周囲は緑と寺の多い静かな街だ。
きれいに区画整理された敷地には、クローンのようにどこが違うのかわからない白い家がすき間なく並んでいた。
どれも冬の夕日を浴びて、濡れたようなオレンジ色だった。
「じゃあ、いってくる。全部話したら、あとで二階の窓から手を振るから」
おれはランドセルの肩ストラップをぎゅっとにぎって、戦場にむかうように白い家に帰るミノルの背中を見つめていた。
勇気のあるところを見せるんだ、ちいさなブラザー。
二車線の狭い通りのむかいにあるガードレールにすわって、夕日の色が深まるのをじっと見つめていた。
オレンジ色の家が真紅に一瞬燃え上がるまでの二十五分間。
おれはただ待った。
待つことは苦になら無かった。
冬の風が吹いても寒くはなかった。
空にだけ明るさが残り、家々の屋根が黒く沈むころ、ミノルの白い家の二階に明かりがついた。
カーテンが開いて、やつのてのひらがしっかりと振られている。
ミノルは泣き笑いの顔でおれを見た。
おれはほほえんでガードレールから立ち上がった。
家に帰る。
夕空に見つけたちいさな星。そいつをずっと目の端で追いながら。
そんな気分ならクリスマス前の街をひとりで歩くのも、そう悪くないものだ。
ーグレーゾーンボーイ・完ー