ー特別編グレーゾーンボーイー
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二日後、おれは丸岡に電話した。
おれがかけたのは昼過ぎだったけれど、やつは起き抜けの声で返事をする。
ふざけた男。
おれは朝から学校に行き、半日授業を受け、昼飯をすませたあとなのだ。
こういう男が、ミノルのあがりの六割をよこせという。
おれはやつを恐れる振りをした。
「あれからいろいろ丸岡さんのことをききました。このまえの話のとおりでいいですから、手打ちをしてもらえませんか。ミノルは初等部だから無理だけど、一席設けますから」
よだれを垂らしそうな声が戻ってきた。
『わかった。じゃあ、今夜がいいな。』
話の早い狂犬だった。
へりくだっていう。
「ショウタさんたちにも声をかけておいてください。人数は五人で予約しておきます。西口におでんのうまい居酒屋があるんです」
『ちぇ、おでんかよ。しけてるな』
ほんとうにうまい店なのだ。おれはむっとしたが、下手にでた。
「ほかにもいい肴がありますよ。丸岡さんが好きなら、そのあとで女のいる店にいって、飲み直してもいいし」
なんだか悪質なキャッチセールスにでもなった気分だった。
カモを落とすのはこんなに簡単なものだろうか。
丸岡は寝ぼけた声でいった。
『そのうちあのガキをはずして、おれたちだけで仕事をまわそう。ショウタたちは間抜けだが、おまえは話がわかるし、細かなつなぎもうまい。おまえをうちのグループのナンバー2にしてやるよ。明日からは、あの三人好きにつかっていいから』
ジャングルで生き残るには、狂暴なだけではダメなのだ。
丸岡は悠やケンジさんやタカシさんと違って、ストリートの知恵をまるでもっていなかった。
おれは哀れなマッドドッグにいった。
「夜八時にマルイのまえで、待ち合わせしましょう。今夜はいくらのんでもらってもいいですから」
丸岡の声はまた夢見る調子になった。
『じゃあ、また薬局のはしごしなくちゃな。』
いくらでもクスリをのむといいだろう。
それはやつが池袋でのむ最後の市販薬になるはずだ。
西口五差路の角にマルイはある。
正面の壁には、巨大な二次元のクリスマスツリーが飾られ、電飾がビルの屋上近くまで伸びていた。
「ホワイトクリスマス」が流れる十二月の夜の街を、おしゃれなカップルが腕を組んであるいていく。
こういう歳末もあるのに、おれが待っている相手は、ヤクザにもなれなかった狂犬と名門校の落ちこぼれの半端な不良が三人だった。
白い石の柱にもたれていると、西口公園のほうから、やつらがやってきた。
軽く頭をさげて挨拶する。
「おはようございます。今夜はよろしくお願いします。」
丸岡はすでに兄貴気取りだった。
「おう」
黒皮のライダースジャケットを素肌に来ている。
拒食症のマーロン・ブランドのようだ。
ショウタはおれと目を合わせない。
おれは先頭に立って横断歩道をわたり、池袋三丁目ののみ屋街にはいっていった。
おれがかけたのは昼過ぎだったけれど、やつは起き抜けの声で返事をする。
ふざけた男。
おれは朝から学校に行き、半日授業を受け、昼飯をすませたあとなのだ。
こういう男が、ミノルのあがりの六割をよこせという。
おれはやつを恐れる振りをした。
「あれからいろいろ丸岡さんのことをききました。このまえの話のとおりでいいですから、手打ちをしてもらえませんか。ミノルは初等部だから無理だけど、一席設けますから」
よだれを垂らしそうな声が戻ってきた。
『わかった。じゃあ、今夜がいいな。』
話の早い狂犬だった。
へりくだっていう。
「ショウタさんたちにも声をかけておいてください。人数は五人で予約しておきます。西口におでんのうまい居酒屋があるんです」
『ちぇ、おでんかよ。しけてるな』
ほんとうにうまい店なのだ。おれはむっとしたが、下手にでた。
「ほかにもいい肴がありますよ。丸岡さんが好きなら、そのあとで女のいる店にいって、飲み直してもいいし」
なんだか悪質なキャッチセールスにでもなった気分だった。
カモを落とすのはこんなに簡単なものだろうか。
丸岡は寝ぼけた声でいった。
『そのうちあのガキをはずして、おれたちだけで仕事をまわそう。ショウタたちは間抜けだが、おまえは話がわかるし、細かなつなぎもうまい。おまえをうちのグループのナンバー2にしてやるよ。明日からは、あの三人好きにつかっていいから』
ジャングルで生き残るには、狂暴なだけではダメなのだ。
丸岡は悠やケンジさんやタカシさんと違って、ストリートの知恵をまるでもっていなかった。
おれは哀れなマッドドッグにいった。
「夜八時にマルイのまえで、待ち合わせしましょう。今夜はいくらのんでもらってもいいですから」
丸岡の声はまた夢見る調子になった。
『じゃあ、また薬局のはしごしなくちゃな。』
いくらでもクスリをのむといいだろう。
それはやつが池袋でのむ最後の市販薬になるはずだ。
西口五差路の角にマルイはある。
正面の壁には、巨大な二次元のクリスマスツリーが飾られ、電飾がビルの屋上近くまで伸びていた。
「ホワイトクリスマス」が流れる十二月の夜の街を、おしゃれなカップルが腕を組んであるいていく。
こういう歳末もあるのに、おれが待っている相手は、ヤクザにもなれなかった狂犬と名門校の落ちこぼれの半端な不良が三人だった。
白い石の柱にもたれていると、西口公園のほうから、やつらがやってきた。
軽く頭をさげて挨拶する。
「おはようございます。今夜はよろしくお願いします。」
丸岡はすでに兄貴気取りだった。
「おう」
黒皮のライダースジャケットを素肌に来ている。
拒食症のマーロン・ブランドのようだ。
ショウタはおれと目を合わせない。
おれは先頭に立って横断歩道をわたり、池袋三丁目ののみ屋街にはいっていった。