ー特別編グレーゾーンボーイー
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おれたちはそれから三十分、丸岡が帰ってくるのを待った。
やつは帰ってくこなかった。
レジのウエイトレスに先に帰ると伝言を残して、おれたちは店をでた。
ウエイトレスは不思議そうな顔で、俺たちを見送る。不思議なのは、おれたちも同じだったけどね。
その夜は五人でラーメンをくった。
東口にある和龍軒で豪華に全部のせだ。
きちんと話をしてみると、三人組もそれほど悪いやつらじゃなかった。
ちゃらんぽらんなところはあるが、日本全国の高校生には、おおかれすくなかれそんなところがある。
別に不満などなくても荒れてみたいし、傷ついてなくても傷ついた振りがしたいのだ。
池袋西口駅のまえで、みんなと別れた。
おれが家に帰ったときは夜七時。
何気なくリビングでテレビをつけると健康バラエティが映る。
血液をさらさらにするとか、肌の張りを回復するとか、内容はローテーションを組んでまわっている。
おれは健康だから、健康番組など見るつもりはない。つけたテレビを消して、自室に行き、CDコンポで『魔笛』の続きをかけた。
三人の少年コーラスが歌っている。
「着実に、忍耐づよく、賢くあれ。そうして、男らしく困難を克服せよ」
モーツァルトの少年たちは、三原学院高等部の三人組より、はるかに賢そうだった。
わけのわからないマッドドッグが相手でも、着実に、忍耐強く、賢く立ち回るといい。
どんな粗暴な狂犬にも、どこかに弱点があるはずなのだ。
オペラが終わっても、なにもいい考えは浮かばなかった。
誰かにきいてみよう。
本当は悠に相談したいが居ないので、おれは携帯を開いて池袋の街のガキの王様にかけた。
とりつぎがでて、王に代わる。電話のむこうで、気圧が急に下がったようだ。
寒冷前線の予感。
『なんの用だ。』
どうやら王の機嫌はよくなかったらしい。
挨拶はやめて、すぐ用件にはいった。
「崇さん、丸岡ってやつ、知ってますか。何年かまえに三原学院を退学になったらしいんですけど」
うんざりした冷たい声。
まぁ無理もない。
タカシさんには池袋中のガキのちいさなもめがとが無数に持ち込まれるのだ。
彼は絶対権力であるばかりでなく、ガキの司法も兼ねている。
『知ってる。マッドドッグ。あいつはまだ人を殺してない人殺しで、まだ火をつけていない放火犯だ。そのうちどちらかをやらかすだろう。両方いっしょにやるかもしれない』
おれの知らないところで、すでに指名手配をくらってるやつのようだった。
「あいつになにか弱点はないですか?」
『わからないな。一番いいのは牙の届く場所に近づかないことだ』
暗い気分になった。
ちいさな声で王さまにいう。
「軽く噛まれていたら、どうすればいいですか」
タカシさんは電話のむこうで低く笑った。
『ともきとマッドドッグか。なかなか面白い組み合わせじゃないか。お手並み拝見というところだな。まあ、最後にどうしようもなくなったら、おれが力をかしてやる。』
カチンときた。
おれたちはいつだって、フィフティフィフティだったはずだ。
これで今回はSウルフの手を借りる案はなしになる。
やつは帰ってくこなかった。
レジのウエイトレスに先に帰ると伝言を残して、おれたちは店をでた。
ウエイトレスは不思議そうな顔で、俺たちを見送る。不思議なのは、おれたちも同じだったけどね。
その夜は五人でラーメンをくった。
東口にある和龍軒で豪華に全部のせだ。
きちんと話をしてみると、三人組もそれほど悪いやつらじゃなかった。
ちゃらんぽらんなところはあるが、日本全国の高校生には、おおかれすくなかれそんなところがある。
別に不満などなくても荒れてみたいし、傷ついてなくても傷ついた振りがしたいのだ。
池袋西口駅のまえで、みんなと別れた。
おれが家に帰ったときは夜七時。
何気なくリビングでテレビをつけると健康バラエティが映る。
血液をさらさらにするとか、肌の張りを回復するとか、内容はローテーションを組んでまわっている。
おれは健康だから、健康番組など見るつもりはない。つけたテレビを消して、自室に行き、CDコンポで『魔笛』の続きをかけた。
三人の少年コーラスが歌っている。
「着実に、忍耐づよく、賢くあれ。そうして、男らしく困難を克服せよ」
モーツァルトの少年たちは、三原学院高等部の三人組より、はるかに賢そうだった。
わけのわからないマッドドッグが相手でも、着実に、忍耐強く、賢く立ち回るといい。
どんな粗暴な狂犬にも、どこかに弱点があるはずなのだ。
オペラが終わっても、なにもいい考えは浮かばなかった。
誰かにきいてみよう。
本当は悠に相談したいが居ないので、おれは携帯を開いて池袋の街のガキの王様にかけた。
とりつぎがでて、王に代わる。電話のむこうで、気圧が急に下がったようだ。
寒冷前線の予感。
『なんの用だ。』
どうやら王の機嫌はよくなかったらしい。
挨拶はやめて、すぐ用件にはいった。
「崇さん、丸岡ってやつ、知ってますか。何年かまえに三原学院を退学になったらしいんですけど」
うんざりした冷たい声。
まぁ無理もない。
タカシさんには池袋中のガキのちいさなもめがとが無数に持ち込まれるのだ。
彼は絶対権力であるばかりでなく、ガキの司法も兼ねている。
『知ってる。マッドドッグ。あいつはまだ人を殺してない人殺しで、まだ火をつけていない放火犯だ。そのうちどちらかをやらかすだろう。両方いっしょにやるかもしれない』
おれの知らないところで、すでに指名手配をくらってるやつのようだった。
「あいつになにか弱点はないですか?」
『わからないな。一番いいのは牙の届く場所に近づかないことだ』
暗い気分になった。
ちいさな声で王さまにいう。
「軽く噛まれていたら、どうすればいいですか」
タカシさんは電話のむこうで低く笑った。
『ともきとマッドドッグか。なかなか面白い組み合わせじゃないか。お手並み拝見というところだな。まあ、最後にどうしようもなくなったら、おれが力をかしてやる。』
カチンときた。
おれたちはいつだって、フィフティフィフティだったはずだ。
これで今回はSウルフの手を借りる案はなしになる。