ー特別編グレーゾーンボーイー
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翌日は急に冷え込んで、東京も年末らしい寒さになった。
それでも平年なみらしいが、暖冬に慣れた身体には一桁の気温は厳しい。
おれはダウンジャケットをクローゼットから引っ張り出していると、携帯電話がなった。
『もしもし、ともきさん』
悲鳴のようなミノルの声だった。
「どうした」
『丸岡さんがきてる』
「どこに」
『ぼくのうちのまえ。今朝から何度も番号非通知の電話がかかってきて、ずっとシカトしてたら、あの人がうちのまえの通りにいるんだ。さっき学校から帰ってきたときは、いなかったんだけど。こんなに寒いのに、シャツ一枚でずっとガードレールに座ってる。なんだか死神みたいな人だ。』
ガードレールに座る死神。一度おれも見てみたくなった。ミノルの声は震えている。
本気で怖がっているようだ。
『ねぇ、ともきさん、どうしたらいいの』
さて、どうするか。ひとまず丸岡をミノルの家から離さなければならない。
「わかった。いいか、次に電話がなったら、応答しろ。それでこれから話をしようというんだ。どこか人のたくさんいる場所がいいだろう。」
最初に西口公園を考えたが、この寒さじゃ小柄なミノルにはきついだろう。
「東京芸術劇場のエスカレーターをあがったところにある喫茶店知ってるか。あそこで一時間後に待ち合わせしよう。おれもいくから、ミノルもこい。まだ時間早いから家を出られるだろ」
ミノルの声はまだ震えていた。
『だいじょうぶ。うちのおかあさんは今日はパートの日だから、しばらく帰らない。じゃあさ、いっしょに晩ごはんたべようよ。ぼくがおごるから。』
いくらおれが貧しい学生でも、小学生にめしをおごられるわけにはいかなかった。
「割り勘でいい。じゃあ、うまくいったら、また電話くれ。」
おれはそういって窓の外を見た。
雲が厚く冬空をおおって、一面の灰色に煙っている。
夕方にかけて寒さはさらに厳しくなるようだった。
おれは誰かに狂犬と呼ばれる人生について想像してみた。
池袋みたいなほこりっぽい街の何でも屋(ピエロ)と呼ばれるほうがずっとましだ。
まぁ、あの街にはキングもボスも居るんだけどな。
おれはきっかり一時間後、芸術劇場まえの広場に立った。
西口公園では、この寒さでも青空将棋に人だかりができている。
噴水まえにはキーボードとアンプをもちこんだ弾き語りがひとり。
ベタベタに濡れたラブソングをうたってる。
ベンチでは恋人たちが周囲から完全に孤立して、ふたりの世界に閉じ籠っていた。
誰もが他人のしていることに無関心なのだ。
無数の人がそれぞれの孤独を誰とも分けあわずに、この場所と時間を生きている。
おれには都会の冷たさや無関心が心地よかった。
この街で生きていれば誰だってそうなる。
それでも平年なみらしいが、暖冬に慣れた身体には一桁の気温は厳しい。
おれはダウンジャケットをクローゼットから引っ張り出していると、携帯電話がなった。
『もしもし、ともきさん』
悲鳴のようなミノルの声だった。
「どうした」
『丸岡さんがきてる』
「どこに」
『ぼくのうちのまえ。今朝から何度も番号非通知の電話がかかってきて、ずっとシカトしてたら、あの人がうちのまえの通りにいるんだ。さっき学校から帰ってきたときは、いなかったんだけど。こんなに寒いのに、シャツ一枚でずっとガードレールに座ってる。なんだか死神みたいな人だ。』
ガードレールに座る死神。一度おれも見てみたくなった。ミノルの声は震えている。
本気で怖がっているようだ。
『ねぇ、ともきさん、どうしたらいいの』
さて、どうするか。ひとまず丸岡をミノルの家から離さなければならない。
「わかった。いいか、次に電話がなったら、応答しろ。それでこれから話をしようというんだ。どこか人のたくさんいる場所がいいだろう。」
最初に西口公園を考えたが、この寒さじゃ小柄なミノルにはきついだろう。
「東京芸術劇場のエスカレーターをあがったところにある喫茶店知ってるか。あそこで一時間後に待ち合わせしよう。おれもいくから、ミノルもこい。まだ時間早いから家を出られるだろ」
ミノルの声はまだ震えていた。
『だいじょうぶ。うちのおかあさんは今日はパートの日だから、しばらく帰らない。じゃあさ、いっしょに晩ごはんたべようよ。ぼくがおごるから。』
いくらおれが貧しい学生でも、小学生にめしをおごられるわけにはいかなかった。
「割り勘でいい。じゃあ、うまくいったら、また電話くれ。」
おれはそういって窓の外を見た。
雲が厚く冬空をおおって、一面の灰色に煙っている。
夕方にかけて寒さはさらに厳しくなるようだった。
おれは誰かに狂犬と呼ばれる人生について想像してみた。
池袋みたいなほこりっぽい街の何でも屋(ピエロ)と呼ばれるほうがずっとましだ。
まぁ、あの街にはキングもボスも居るんだけどな。
おれはきっかり一時間後、芸術劇場まえの広場に立った。
西口公園では、この寒さでも青空将棋に人だかりができている。
噴水まえにはキーボードとアンプをもちこんだ弾き語りがひとり。
ベタベタに濡れたラブソングをうたってる。
ベンチでは恋人たちが周囲から完全に孤立して、ふたりの世界に閉じ籠っていた。
誰もが他人のしていることに無関心なのだ。
無数の人がそれぞれの孤独を誰とも分けあわずに、この場所と時間を生きている。
おれには都会の冷たさや無関心が心地よかった。
この街で生きていれば誰だってそうなる。