ー特別編グレーゾーンボーイー
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両手にひとつずつもって得意気にいう。
「こっちが電話につかうほう。こっちの緑のやつは撮影専門だから、スピーカーにつながるコードを切ってあるんだ。仕事用だよ」
「パンチラ映像がビジネスか」
盗撮用に違法改造をした携帯電話をもつ小学生。
二十一世紀の子供たちは、どこまで進化するのだろうか。
おれにはついていけそうにない。
「これをCD-Rに焼いて、ネットで販売する。あれこれ試したんだけど、高性能のデジカメより、画素のすくない携帯のCCDのほうが、お客には評判がいいんだ。そっちのほうがリアルだって。それに価格もね、安くするより高いほうがよく売れる」
おれはあきれて名門校の初等部にかようビジネスマンを見た。
「それも試したのか」
やつはうれしそうにうなずいた。
「うん。一枚三千円と七千円。同じものを売ってるのに、注文は七千円のほうが倍以上になる。なんかみんな高いほうが中身があるなんて、勘違いするみたい。」
俺も反省した。
高いからにはそれだけのコストがかかってるなんて、おれたちは盲信しがちである。資本主義の神話だ。
「よかったじゃないか。商売はうまくいってるんだろ。春麗のフィギュアをぽんと買うくらいなんだから。」
ミノルは浮かない顔をする。ソファの横においた制帽を手にしていじり始めた。生意気なチビの商売人が急に年相応の小学生に見えてくる。
「それが変な人たちに秘密を知られてしまった。」
よかった。
おれはこの子にだけ、神様が不公平に幸運をさずけたのではないかと心配していたのだ。
にっこりと大人の余裕の笑顔をみせてやった。
「それで、なんに困ってるのかな、ミノルくん」
「うちのクラスの大山くんのせいなんだ」
ちいさな声でやつはいう。
おれはホームルームで恐喝を受けるミノルを想像した。なんだかうれしかった。
ちょっとくらい痛め付けられたほうが、この子にはいい薬かもしれない。
「大山くんには高等部にお兄さんがいて、その翔太くんがぼくの仕事を手伝ってやるってうるさいんだ」
小学生の非合法ビジネスに手を出す高校生か。
弱肉強食はITビジネスや球団経営だけではなさそうだった。
「そいつはつかえるやつなのか」
ミノルは首を横に振った。
「撮影する度胸もないし、パソコンはつかえないし、まともな計算もできないよ。うちの学校ってエスカレーターでうえにすすめるでしょう、途中でついていけなくなった人も、高校生になれるんだよね」
ため息をついて、ミノルは俺を見上げた。
おれはやつの目を見ていった。
「おまえも自分のやってることが立派な仕事なんて思ってないよな。それでもずっと盗撮ROMを売るつもりなのか」
ミノルは肩をすくめた。
進学校の灰色の制服は、しゃれた動作にぴったりだ。
「こっちが電話につかうほう。こっちの緑のやつは撮影専門だから、スピーカーにつながるコードを切ってあるんだ。仕事用だよ」
「パンチラ映像がビジネスか」
盗撮用に違法改造をした携帯電話をもつ小学生。
二十一世紀の子供たちは、どこまで進化するのだろうか。
おれにはついていけそうにない。
「これをCD-Rに焼いて、ネットで販売する。あれこれ試したんだけど、高性能のデジカメより、画素のすくない携帯のCCDのほうが、お客には評判がいいんだ。そっちのほうがリアルだって。それに価格もね、安くするより高いほうがよく売れる」
おれはあきれて名門校の初等部にかようビジネスマンを見た。
「それも試したのか」
やつはうれしそうにうなずいた。
「うん。一枚三千円と七千円。同じものを売ってるのに、注文は七千円のほうが倍以上になる。なんかみんな高いほうが中身があるなんて、勘違いするみたい。」
俺も反省した。
高いからにはそれだけのコストがかかってるなんて、おれたちは盲信しがちである。資本主義の神話だ。
「よかったじゃないか。商売はうまくいってるんだろ。春麗のフィギュアをぽんと買うくらいなんだから。」
ミノルは浮かない顔をする。ソファの横においた制帽を手にしていじり始めた。生意気なチビの商売人が急に年相応の小学生に見えてくる。
「それが変な人たちに秘密を知られてしまった。」
よかった。
おれはこの子にだけ、神様が不公平に幸運をさずけたのではないかと心配していたのだ。
にっこりと大人の余裕の笑顔をみせてやった。
「それで、なんに困ってるのかな、ミノルくん」
「うちのクラスの大山くんのせいなんだ」
ちいさな声でやつはいう。
おれはホームルームで恐喝を受けるミノルを想像した。なんだかうれしかった。
ちょっとくらい痛め付けられたほうが、この子にはいい薬かもしれない。
「大山くんには高等部にお兄さんがいて、その翔太くんがぼくの仕事を手伝ってやるってうるさいんだ」
小学生の非合法ビジネスに手を出す高校生か。
弱肉強食はITビジネスや球団経営だけではなさそうだった。
「そいつはつかえるやつなのか」
ミノルは首を横に振った。
「撮影する度胸もないし、パソコンはつかえないし、まともな計算もできないよ。うちの学校ってエスカレーターでうえにすすめるでしょう、途中でついていけなくなった人も、高校生になれるんだよね」
ため息をついて、ミノルは俺を見上げた。
おれはやつの目を見ていった。
「おまえも自分のやってることが立派な仕事なんて思ってないよな。それでもずっと盗撮ROMを売るつもりなのか」
ミノルは肩をすくめた。
進学校の灰色の制服は、しゃれた動作にぴったりだ。