ー特別編グレーゾーンボーイー
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
女の目は明るい黄緑。
星を浮かべた瞳のおおきさは、畳二畳分くらい。
まあ、とんでもなくでかい顔の表面積の三分の一を占めるんだから、当然だよな。
笑顔のまま開いた口のなかには、赤く丸まった舌先と小型冷蔵庫くらいある白い歯。
うわ目づかいの恥ずかしそうな表情のまま、その女はサンシャインシティまえの広場を見下ろしている。
着ているのはショッピングピンクのメイド服だ。
ヴィクトリア朝のイギリスで生まれ、二十一世紀の日本で最盛期をむかえた様式である。
肌の露出をおさえ、あごのしたまで布地で隠してるくせに、ぎりぎりに絞られたウエストのせいで、豊かな胸が強調されている。
ひざ丈のスカートのした、どっさりたたまれたフリルのあいだで、ガキがかくれんぼできそうだ。
ストッキングは白い格子模様。紫の髪は風になびき、幅一メートルのメビウスの輪を無数につくる。
日本が世界に誇る二次元の美少女は、サンシャインのむかいにある十二階建てのビルの壁面いっぱいに描かれている。
夕日を浴びてるときなんか、あまり感受性の鋭くないおれでさえ、きっと未来のアートはこんなふうに、軽やかで巨大で、ものすごく薄っぺらになるんだろうなと感心するくらいだ。
なあ、あんただって、アニメやコミックスは好きだよな。
だって、おれたちのささやかな教養の主要部分は、あのカット割とストーリーとキャラの魔法によってできているのだ。
意味がわからないって?
俺が言いたいのは簡単。
東京じゃあ秋葉原だけがオタクの街で有名だけど、池袋にもちゃんとアニメやエロゲーのソフトショップが山のようにあるってこと。
サンシャインシティまえの一角は、乙女ロードと呼ばれて、どっさりその手のショップがある。
新刊古本マンガの店、フィギュアやアニメグッズの専門店、合法非合法のロリコン屋。
かつてのアニメ少年少女が年をくって小金をもち、街や風俗の様子を変えたのだ。
この世に同じままのものはない。
今回はそのオタクの街にまぎれこんだ灰色の少年のお話。
やつはガキだが、ビジネスの腕は上々。
たったひとりでバカでスケベな大人たちを手玉に取って、鮮やかに金儲けをしていた。
ただ池袋は安全で清潔なネバーランドじゃない。
完璧なはずのビジネスにも金のにおいをかぎつけたいかれたサメが、いつのまにか集まってしまうのだ。
カリブの海賊だって、ちゃんといる。
ディズニーランドのやつみたいにかわいくはないけどね。
おれや俺の友人の話をずっときいてる物好きなあんたなら、おれが子どもや年寄りに弱いのはわかってるだろ。
そんなときには少々無理をしても、手と口を出さずにはいられなくなる。
今回はちょっとおせっかいの度が過ぎたかもしれないが……悠の病気が移ったと笑って見逃してくれ。
あんただって、あんなふうに切れるように純粋で、世の中をはずれ、ひとりで生きていくんだと決心していた時期があったはずだ。
やせがまんで、胸を張ったりしてさ。
そのくせ心の底では、無条件で誰かに愛してもらったり、抱き締めてもらいたい。
そんなすねた子供の心。
昔だけでなく、今だって変わらないって?
わかるよ、ブラザー&シスター。
おれたちの卵のかけらは、すり減りはするが、一生青い尻にくっついたままなのだ。
ーグレーゾーンボーイー
星を浮かべた瞳のおおきさは、畳二畳分くらい。
まあ、とんでもなくでかい顔の表面積の三分の一を占めるんだから、当然だよな。
笑顔のまま開いた口のなかには、赤く丸まった舌先と小型冷蔵庫くらいある白い歯。
うわ目づかいの恥ずかしそうな表情のまま、その女はサンシャインシティまえの広場を見下ろしている。
着ているのはショッピングピンクのメイド服だ。
ヴィクトリア朝のイギリスで生まれ、二十一世紀の日本で最盛期をむかえた様式である。
肌の露出をおさえ、あごのしたまで布地で隠してるくせに、ぎりぎりに絞られたウエストのせいで、豊かな胸が強調されている。
ひざ丈のスカートのした、どっさりたたまれたフリルのあいだで、ガキがかくれんぼできそうだ。
ストッキングは白い格子模様。紫の髪は風になびき、幅一メートルのメビウスの輪を無数につくる。
日本が世界に誇る二次元の美少女は、サンシャインのむかいにある十二階建てのビルの壁面いっぱいに描かれている。
夕日を浴びてるときなんか、あまり感受性の鋭くないおれでさえ、きっと未来のアートはこんなふうに、軽やかで巨大で、ものすごく薄っぺらになるんだろうなと感心するくらいだ。
なあ、あんただって、アニメやコミックスは好きだよな。
だって、おれたちのささやかな教養の主要部分は、あのカット割とストーリーとキャラの魔法によってできているのだ。
意味がわからないって?
俺が言いたいのは簡単。
東京じゃあ秋葉原だけがオタクの街で有名だけど、池袋にもちゃんとアニメやエロゲーのソフトショップが山のようにあるってこと。
サンシャインシティまえの一角は、乙女ロードと呼ばれて、どっさりその手のショップがある。
新刊古本マンガの店、フィギュアやアニメグッズの専門店、合法非合法のロリコン屋。
かつてのアニメ少年少女が年をくって小金をもち、街や風俗の様子を変えたのだ。
この世に同じままのものはない。
今回はそのオタクの街にまぎれこんだ灰色の少年のお話。
やつはガキだが、ビジネスの腕は上々。
たったひとりでバカでスケベな大人たちを手玉に取って、鮮やかに金儲けをしていた。
ただ池袋は安全で清潔なネバーランドじゃない。
完璧なはずのビジネスにも金のにおいをかぎつけたいかれたサメが、いつのまにか集まってしまうのだ。
カリブの海賊だって、ちゃんといる。
ディズニーランドのやつみたいにかわいくはないけどね。
おれや俺の友人の話をずっときいてる物好きなあんたなら、おれが子どもや年寄りに弱いのはわかってるだろ。
そんなときには少々無理をしても、手と口を出さずにはいられなくなる。
今回はちょっとおせっかいの度が過ぎたかもしれないが……悠の病気が移ったと笑って見逃してくれ。
あんただって、あんなふうに切れるように純粋で、世の中をはずれ、ひとりで生きていくんだと決心していた時期があったはずだ。
やせがまんで、胸を張ったりしてさ。
そのくせ心の底では、無条件で誰かに愛してもらったり、抱き締めてもらいたい。
そんなすねた子供の心。
昔だけでなく、今だって変わらないって?
わかるよ、ブラザー&シスター。
おれたちの卵のかけらは、すり減りはするが、一生青い尻にくっついたままなのだ。
ーグレーゾーンボーイー