ー特別編ー野獣とユニオン
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水曜日の十一時、おれは音川の住むアパートのまえに立った。(学校の事は知らん)
やつはいつもの汚れたジーンズ。
気の早いソメイヨシノが咲き始めたこの街を、背を丸めて歩いていく。
平和通りを常盤通りに右折して、劇場通りに出る。
そこからは西口五差路の交差点を過ぎ、新緑の西口公園にむかった。
奴は肩を落として、円形広場のベンチに腰掛けた。
冬のあいだに縮こまっていたハトがえさを求めて足元にやってくる。
おれは近くの自動販売機であたたかな缶コーヒーを買って、やつの座るベンチにむかった。
おれがまえに立ってもやつは顔をあげなかった。
となりに腰を降ろし、缶コーヒーを置いてやる。
おれは正面を向いたまま言った。
「あんた、音川栄治だよな。おれは小鳥遊悠」
おれの名前を聞いて、顔色をわずかに変えた。
こんなガキにまで、知られていのだろうか。
おれは池袋の地域限定アイドルなのかもしれない。
音川はおれとコーヒーを交互に見た。
「のんでくれよ。ひとりで二本はのめないからな。」
やつは汚れた爪でプルトップをあげ、ひと口すすった。
日本の缶コーヒーの甘さは格別だよな。
確か角砂糖六個分。
「おれはある人に頼まれて、あんたのことをずっと張っていた。あんたが高校時代の悪友に脅されてるのもみたよ。Pパルコのまえだ。」
音川は身体を硬くしていた。
「やつらはまえみたいに金を持ってこいと言ってるのか」
びくりと全身を震わせて、はじめて音川は口を開いた。
「そうだけど、もうどうしょうもない。約束は今日だから。」
細くかすれた声。
生きてる感じのしないただの音だった。
おれは力づけるように言った。
「やつらとの腐れ縁を、今日で終わりにしないか。どうせ、金なんてないんだろ。」
やつの黒ずんだ顔が輝いた。
「だけど、どうやって……」
おれはパーカのポケットからシルバーのバンダナをさしだした。
音川のジーンズのひざに放ってやる。
「おれが電話一本かければ、おまえはSウルフのメンバーになる。この街に住んでるガキなら、誰だってSウルフを脅そうとは思わないだろ。」
おれはあの少年ABCDについても、調べを進めていた。
ただのチンピラ。
裏に組織は無いし、さして強力な絆があるとも思えなかった。
音川は自由へのパスポートでも見つけたように、両手にシルバーのバンダナを乗せている。
「だが、そいつをやるまえに、あんたにおれの依頼人とあってもらいたい。それが嫌なら、Sウルフの話も無しだ。どうだ、やる気はあるか。いっておくが、こいつは決して簡単なことじゃないぞ」
やつは目のなかで、波のように感情が揺れていた。
突然現れた救世主への疑問。
だが、あの四人に今日会うなら、選択肢は残されていないはずだった。
やつは弱弱しくうなずいた。
おれは携帯を抜きながらいう。
「はっきりと返事をしてくれ。」
「誰だかわからないけど、その人に会ってみる。おれを助けてくれ。」
やつはいつもの汚れたジーンズ。
気の早いソメイヨシノが咲き始めたこの街を、背を丸めて歩いていく。
平和通りを常盤通りに右折して、劇場通りに出る。
そこからは西口五差路の交差点を過ぎ、新緑の西口公園にむかった。
奴は肩を落として、円形広場のベンチに腰掛けた。
冬のあいだに縮こまっていたハトがえさを求めて足元にやってくる。
おれは近くの自動販売機であたたかな缶コーヒーを買って、やつの座るベンチにむかった。
おれがまえに立ってもやつは顔をあげなかった。
となりに腰を降ろし、缶コーヒーを置いてやる。
おれは正面を向いたまま言った。
「あんた、音川栄治だよな。おれは小鳥遊悠」
おれの名前を聞いて、顔色をわずかに変えた。
こんなガキにまで、知られていのだろうか。
おれは池袋の地域限定アイドルなのかもしれない。
音川はおれとコーヒーを交互に見た。
「のんでくれよ。ひとりで二本はのめないからな。」
やつは汚れた爪でプルトップをあげ、ひと口すすった。
日本の缶コーヒーの甘さは格別だよな。
確か角砂糖六個分。
「おれはある人に頼まれて、あんたのことをずっと張っていた。あんたが高校時代の悪友に脅されてるのもみたよ。Pパルコのまえだ。」
音川は身体を硬くしていた。
「やつらはまえみたいに金を持ってこいと言ってるのか」
びくりと全身を震わせて、はじめて音川は口を開いた。
「そうだけど、もうどうしょうもない。約束は今日だから。」
細くかすれた声。
生きてる感じのしないただの音だった。
おれは力づけるように言った。
「やつらとの腐れ縁を、今日で終わりにしないか。どうせ、金なんてないんだろ。」
やつの黒ずんだ顔が輝いた。
「だけど、どうやって……」
おれはパーカのポケットからシルバーのバンダナをさしだした。
音川のジーンズのひざに放ってやる。
「おれが電話一本かければ、おまえはSウルフのメンバーになる。この街に住んでるガキなら、誰だってSウルフを脅そうとは思わないだろ。」
おれはあの少年ABCDについても、調べを進めていた。
ただのチンピラ。
裏に組織は無いし、さして強力な絆があるとも思えなかった。
音川は自由へのパスポートでも見つけたように、両手にシルバーのバンダナを乗せている。
「だが、そいつをやるまえに、あんたにおれの依頼人とあってもらいたい。それが嫌なら、Sウルフの話も無しだ。どうだ、やる気はあるか。いっておくが、こいつは決して簡単なことじゃないぞ」
やつは目のなかで、波のように感情が揺れていた。
突然現れた救世主への疑問。
だが、あの四人に今日会うなら、選択肢は残されていないはずだった。
やつは弱弱しくうなずいた。
おれは携帯を抜きながらいう。
「はっきりと返事をしてくれ。」
「誰だかわからないけど、その人に会ってみる。おれを助けてくれ。」