ー特別編ー野獣とユニオン
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どうぞどうぞといって、俺を部屋にあげてくれる。
廊下を奥にむかう途中で、すでに、いいにおいがしていた。
ヒロは確かに足を引きずっていた。
右足のつま先が外側に開くようになるのだ。
チヒロがおれのうしろで陽気にいった。
「悠さんがくるっていったら、お兄ちゃんたら、もう三時間もキッチンにこもってるんだよ」
ニンニクとオリーブオイルのにおい。
昼飯はくわずにこいといわれたおれの胃が鳴った。
「さあ、どうぞ」
カントリー調のダイニングセットに席を取った。
室内は落ち着いているが、妙に淋しい。
ヒロは料理の準備をしに、キッチンに消えた。
おれはちいさな声でいった。
「ほかにご両親とかはいないの?」
チヒロはあたりまえのように返事をした。
「うちの親は、私が十一歳のときに交通事故でなくなったんだ。ふたりでちゃんと暮らせるようになったのは、この三年くらいかな」
「そうか。変なこときいて、ごめんな」
「うちのお兄ちゃんが料理好きになったのは、わたしにおいしい食事をさせたかったからなんだ。わたし、料理がぜんぜんダメだったから」
そのとき白いエプロンをしたヒロが、大皿をもってやってきた。
「なにひそひそ話してるのかな。さあ、悠くんも食べて」
両親の居ない兄妹と母親のいないおれ。
三人の豪華な昼食が始まった。
ヒロがつくった前菜の盛り合わせは、ほぼプロ級。
白ワインを開けるやつの白いシャツの短い襟はきざに立っていた。
「これはそんなに高いワインじゃないけど、フルーティでなかなかいいんだ。ランゲ・アルネイスの九九年。」
おれのワイングラスに注ぎ、テイスティングを待つ。
冷や汗をかいてしまった。
おれはわずかな知識を総動員してこたえた。
「ほんとだ。果物の香りがして、野草みたいな苦味がすこし、梅干しににた僅かな酸味。」
ヒロは合格だという笑顔を見せた。
「そう、それがこのワインの特徴なんだよ。すごくナチュラルなんだ。さあ、食べよう」
ひと抱えもある皿には、四種のアンティパストが大盛りになってる。
「イタリアンなんて上品な料理じゃないんだ。悠くんは若いんだから、どんどんかきこんでくれ。」
それからヒロが解説してくれた。
ズッキーニのオーブン焼きに、アーティチョークとプチトマトのチーズ和え、生ハムと干し柿のサラダ、スズキのカルパッチョにつけるのはアンチョビとルッコラソースだという。
チヒロの兄の言葉が終わるころには、おれはひとりで大皿の大半を征服していた。
「こんな食欲を見せられると腕が鳴るなあ。いつもチヒロだけだから。ちょっとパスタを用意してくる」
ヒロは足をひきずって、キッチンに向かった。
おれはやつに聞こえるようにチヒロにいった。
「お兄さんて、ほんとうに料理がうまいなあ」
チヒロの顔が曇った。
廊下を奥にむかう途中で、すでに、いいにおいがしていた。
ヒロは確かに足を引きずっていた。
右足のつま先が外側に開くようになるのだ。
チヒロがおれのうしろで陽気にいった。
「悠さんがくるっていったら、お兄ちゃんたら、もう三時間もキッチンにこもってるんだよ」
ニンニクとオリーブオイルのにおい。
昼飯はくわずにこいといわれたおれの胃が鳴った。
「さあ、どうぞ」
カントリー調のダイニングセットに席を取った。
室内は落ち着いているが、妙に淋しい。
ヒロは料理の準備をしに、キッチンに消えた。
おれはちいさな声でいった。
「ほかにご両親とかはいないの?」
チヒロはあたりまえのように返事をした。
「うちの親は、私が十一歳のときに交通事故でなくなったんだ。ふたりでちゃんと暮らせるようになったのは、この三年くらいかな」
「そうか。変なこときいて、ごめんな」
「うちのお兄ちゃんが料理好きになったのは、わたしにおいしい食事をさせたかったからなんだ。わたし、料理がぜんぜんダメだったから」
そのとき白いエプロンをしたヒロが、大皿をもってやってきた。
「なにひそひそ話してるのかな。さあ、悠くんも食べて」
両親の居ない兄妹と母親のいないおれ。
三人の豪華な昼食が始まった。
ヒロがつくった前菜の盛り合わせは、ほぼプロ級。
白ワインを開けるやつの白いシャツの短い襟はきざに立っていた。
「これはそんなに高いワインじゃないけど、フルーティでなかなかいいんだ。ランゲ・アルネイスの九九年。」
おれのワイングラスに注ぎ、テイスティングを待つ。
冷や汗をかいてしまった。
おれはわずかな知識を総動員してこたえた。
「ほんとだ。果物の香りがして、野草みたいな苦味がすこし、梅干しににた僅かな酸味。」
ヒロは合格だという笑顔を見せた。
「そう、それがこのワインの特徴なんだよ。すごくナチュラルなんだ。さあ、食べよう」
ひと抱えもある皿には、四種のアンティパストが大盛りになってる。
「イタリアンなんて上品な料理じゃないんだ。悠くんは若いんだから、どんどんかきこんでくれ。」
それからヒロが解説してくれた。
ズッキーニのオーブン焼きに、アーティチョークとプチトマトのチーズ和え、生ハムと干し柿のサラダ、スズキのカルパッチョにつけるのはアンチョビとルッコラソースだという。
チヒロの兄の言葉が終わるころには、おれはひとりで大皿の大半を征服していた。
「こんな食欲を見せられると腕が鳴るなあ。いつもチヒロだけだから。ちょっとパスタを用意してくる」
ヒロは足をひきずって、キッチンに向かった。
おれはやつに聞こえるようにチヒロにいった。
「お兄さんて、ほんとうに料理がうまいなあ」
チヒロの顔が曇った。