ー特別編ー野獣とユニオン
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「また、金の無心かな。なあ、チヒロ、それでもやつの足を壊すのか」
チヒロは黙って数十メートル先の光景を眺めている。おれの気持ちは複雑だった。
確かに棒でなぐれば犬はいうことを聞くようになるだろう。
だが、そんなふうにしつけられた犬は、別などこかで人を噛むようになる。
おれたちの住むこの街で、そんなことが永遠に繰り返されていいのだろうか。
こいつは二百円で楽しめる爽快なシューティングゲームではない。
最初はちいさな一歩かもしれないが、それはおおげさにいえば、おれたちの未来を決める選択なのだ。
チヒロはかすれた声でいう。
「わからなくなった。でも、なにもしないわけにはいかない。理不尽なことをされて犯人さえ憎めないというなら、わたしはなにをすればいいの」
俺にだって解答などなかった。
だが、それでも音川の足を壊すというよりは、半歩前進しているのではないだろうか
「おれだってわからない。いっしょに考えてみよう。」
四人組はふざけあいながら、Pパルコのまえを離れた。
音川はしばらく腹を押さえて、階段に座り込んでいる。
尻尾を巻いた負け犬のようだった。
おれとチヒロは再開を約束して、その場を離れた。
それからの数日間、おれは音川を尾行した。
根気はいるが、 こいつは簡単な仕事。
住所もわかっている。
やつが住むこの街はおれのホームグラウンド。
てのひらのようにどんな路地だって知ってる。
しかも、やつの生活パターンがほぼ一定なのだ。
やつは無職のようだが、規則正しい毎日を送っていた。
午前十一時くらいに早めの昼飯をくって、やつは街にでる(夕食の時間に帰るまでなにもくわないのだ。)
金はないので、ずっと歩き。
池袋の街をただぶらぶらと流していくだけだ。
コンビニで就職誌を立ち読みし、ゲーセンで誰かがゲームをするのを眺め、パルコや西武のなかをあてもなくうろつく。
サンシャインシティのバルコニーで座り込み、アムラックスでトヨタの新車にさわり、東京ハンズでパーティグッズなんかをひやかす。
なんだかおれの中坊時代のようだった。
金もなく、やることもなく、ただ日々に押し流されるように生きていたころ。
バカな話だが、おれはこの哀れなケダモノに感情移入してしまったくらいである。
そのまま、なんとかその場でステイしろ。
向こう側に落ちるんじゃない。
けれど、おれにもまるでいいアイディアが浮かばなかった。
音川をなんとか野獣から人にもどし、あの四人組から切り離す。
しかも、チヒロとその兄の不公平感をただしてやる方法。
ウルトラCだ。
くそっ、おれは裁判の神様でも無かったら、四季映姫でもない。
夕方、家にもどるとベートーヴェンの四番をきく。
もちろん、こたえなどひとつも浮かばないが、その音楽が薄汚れたおれの部屋で流れている間は、不思議なことに時間がきちんと流れている感じがするのだった。
チヒロは黙って数十メートル先の光景を眺めている。おれの気持ちは複雑だった。
確かに棒でなぐれば犬はいうことを聞くようになるだろう。
だが、そんなふうにしつけられた犬は、別などこかで人を噛むようになる。
おれたちの住むこの街で、そんなことが永遠に繰り返されていいのだろうか。
こいつは二百円で楽しめる爽快なシューティングゲームではない。
最初はちいさな一歩かもしれないが、それはおおげさにいえば、おれたちの未来を決める選択なのだ。
チヒロはかすれた声でいう。
「わからなくなった。でも、なにもしないわけにはいかない。理不尽なことをされて犯人さえ憎めないというなら、わたしはなにをすればいいの」
俺にだって解答などなかった。
だが、それでも音川の足を壊すというよりは、半歩前進しているのではないだろうか
「おれだってわからない。いっしょに考えてみよう。」
四人組はふざけあいながら、Pパルコのまえを離れた。
音川はしばらく腹を押さえて、階段に座り込んでいる。
尻尾を巻いた負け犬のようだった。
おれとチヒロは再開を約束して、その場を離れた。
それからの数日間、おれは音川を尾行した。
根気はいるが、 こいつは簡単な仕事。
住所もわかっている。
やつが住むこの街はおれのホームグラウンド。
てのひらのようにどんな路地だって知ってる。
しかも、やつの生活パターンがほぼ一定なのだ。
やつは無職のようだが、規則正しい毎日を送っていた。
午前十一時くらいに早めの昼飯をくって、やつは街にでる(夕食の時間に帰るまでなにもくわないのだ。)
金はないので、ずっと歩き。
池袋の街をただぶらぶらと流していくだけだ。
コンビニで就職誌を立ち読みし、ゲーセンで誰かがゲームをするのを眺め、パルコや西武のなかをあてもなくうろつく。
サンシャインシティのバルコニーで座り込み、アムラックスでトヨタの新車にさわり、東京ハンズでパーティグッズなんかをひやかす。
なんだかおれの中坊時代のようだった。
金もなく、やることもなく、ただ日々に押し流されるように生きていたころ。
バカな話だが、おれはこの哀れなケダモノに感情移入してしまったくらいである。
そのまま、なんとかその場でステイしろ。
向こう側に落ちるんじゃない。
けれど、おれにもまるでいいアイディアが浮かばなかった。
音川をなんとか野獣から人にもどし、あの四人組から切り離す。
しかも、チヒロとその兄の不公平感をただしてやる方法。
ウルトラCだ。
くそっ、おれは裁判の神様でも無かったら、四季映姫でもない。
夕方、家にもどるとベートーヴェンの四番をきく。
もちろん、こたえなどひとつも浮かばないが、その音楽が薄汚れたおれの部屋で流れている間は、不思議なことに時間がきちんと流れている感じがするのだった。