ー特別編ー野獣とユニオン
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それは対戦型のシューティングゲームだった。
超高層ビルを占拠したテロリストにふたりで挑むのだ。
武器はシグ・ザウエルP220で、九発撃ち尽くすとカートリッジを替えなければならなかった。
よくできてる。
マスクで顔を隠した迷彩服のテロリストは、着弾するとやけに派手に血を飛び散らせて消えていく。
おれたちの神経は半分以上、音川のほうにむいているので、テロリストにやられ放題だった。
「こんなんじゃあ、日本の治安は守れないな」
チヒロはスクリーンにむかって、でたらめに銃を撃ちながら叫んだ。
「動いたよ。」
一枚のコインも張ることなく、青い顔でミニチュアの競馬場を見おろしていた音川が立ち上がった。
ふらりと揺れて、出口のほうにむかう。
おれたちはケーブルにつながれたシグ・ザウエルを放りだして、やつのあとを追った。
音川は背を丸め、ポケットに手をいれて、西一番街を歩いていく。
少年院送りなった悪ガキの面影はなかった。
ウイロードをくぐり、東口にでる。
Pパルコのまえの植え込みには、四人の男が座っていた。
ファッションは池袋では見慣れたBボーイスタイル。
首に巻いた銀の鎖はタンカーでも曳航できそうな太さ。
四人はにやにや笑いで音川を迎えた。
あきらかにやつが怯えているのがわかる。
俺は誰にともなくいう。
「少年ABCD」
チヒロがおかしな顔をした。
「なに、それ」
事件の背後については、何も知らないらしい。
「おまえの兄さんを襲った事件の陰の主役」
「だって、お兄ちゃんを襲ったのは、あのケダモノひとりでしょう」
「見ろ」
俺は短く叫んだ。
ひとりが音川の肩を抱いた。
笑いながら奇声をあげて、ふざけている振りをした。
腹への短いフックが三発。
音川は腰を折って、タイル張りの階段に座り込む。
「どういうことなの」
チヒロは混乱した顔で俺を見た。
おれは柏から得たばかりの情報を流してやる。
「音川はやつらに強請られていた。やつはずっといじめられっ子だったんだ。少年院をでた今も、まだああしていいようにやられている」
「じゃあ、うちのお兄ちゃんは……」
目をいっぱいに開いて、チヒロは雑踏のなかの五人を見た。
でかい魚がちいさな魚をのむ。それは永遠に繰り返されるこの世界の掟なのかもしれない。
「そうだ。音川はやつらにわたす金が必要になって、あんたの兄さんを襲った。捕まったやつは少年院に送られ、残りの四人はちょいと説教をくらって終わりだ。さあ、どうする」
四人のうちのひとりがしゃがみこんだ音川の耳元に顔を寄せた。
なにかささやいている。
音川の顔色がさらに青くなった。ほとんど血の気がなくなっている。
超高層ビルを占拠したテロリストにふたりで挑むのだ。
武器はシグ・ザウエルP220で、九発撃ち尽くすとカートリッジを替えなければならなかった。
よくできてる。
マスクで顔を隠した迷彩服のテロリストは、着弾するとやけに派手に血を飛び散らせて消えていく。
おれたちの神経は半分以上、音川のほうにむいているので、テロリストにやられ放題だった。
「こんなんじゃあ、日本の治安は守れないな」
チヒロはスクリーンにむかって、でたらめに銃を撃ちながら叫んだ。
「動いたよ。」
一枚のコインも張ることなく、青い顔でミニチュアの競馬場を見おろしていた音川が立ち上がった。
ふらりと揺れて、出口のほうにむかう。
おれたちはケーブルにつながれたシグ・ザウエルを放りだして、やつのあとを追った。
音川は背を丸め、ポケットに手をいれて、西一番街を歩いていく。
少年院送りなった悪ガキの面影はなかった。
ウイロードをくぐり、東口にでる。
Pパルコのまえの植え込みには、四人の男が座っていた。
ファッションは池袋では見慣れたBボーイスタイル。
首に巻いた銀の鎖はタンカーでも曳航できそうな太さ。
四人はにやにや笑いで音川を迎えた。
あきらかにやつが怯えているのがわかる。
俺は誰にともなくいう。
「少年ABCD」
チヒロがおかしな顔をした。
「なに、それ」
事件の背後については、何も知らないらしい。
「おまえの兄さんを襲った事件の陰の主役」
「だって、お兄ちゃんを襲ったのは、あのケダモノひとりでしょう」
「見ろ」
俺は短く叫んだ。
ひとりが音川の肩を抱いた。
笑いながら奇声をあげて、ふざけている振りをした。
腹への短いフックが三発。
音川は腰を折って、タイル張りの階段に座り込む。
「どういうことなの」
チヒロは混乱した顔で俺を見た。
おれは柏から得たばかりの情報を流してやる。
「音川はやつらに強請られていた。やつはずっといじめられっ子だったんだ。少年院をでた今も、まだああしていいようにやられている」
「じゃあ、うちのお兄ちゃんは……」
目をいっぱいに開いて、チヒロは雑踏のなかの五人を見た。
でかい魚がちいさな魚をのむ。それは永遠に繰り返されるこの世界の掟なのかもしれない。
「そうだ。音川はやつらにわたす金が必要になって、あんたの兄さんを襲った。捕まったやつは少年院に送られ、残りの四人はちょいと説教をくらって終わりだ。さあ、どうする」
四人のうちのひとりがしゃがみこんだ音川の耳元に顔を寄せた。
なにかささやいている。
音川の顔色がさらに青くなった。ほとんど血の気がなくなっている。