ー特別編ー野獣とユニオン
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『音川はな、高校時代の友人からゆすられていて、翌日いくらでもいいから金を持っていかなければならなかったと供述している。そうしなければ、たたかれるのは自分の番だ』
いじめ。
年を取るごとに、いじめは通常金銭の強要に変化する。
「そいつらはあの事件で、裁かれているのか」
『ああ、少年A、少年B、少年C、少年D。全員初犯で、少年院送りはまぬかれている。強請なんて、今じゃあどの高校のどのクラスでもありふれてるんだ』
「じゃあ、いじめられっ子だけ、どんな悪ガキでもぺちゃんこになるという少年院に送られたのか」
『そういうことになるな』
不公平な話だった。
ひざを割られたチヒロの兄と強盗犯の音川、それに直接の原因をつくったABCDの四人。
罪と罰の関係において、もっとも公平だったのは誰なのだろうか。
兄の復讐を誓うチヒロがいう世界のただしさはどこにあるのか。
「わかった。さんきゅ」
『なんだ、やけに素直だな、悠。おまえ、これからその音川ってやつをどうするんだ』
わからないといった。
どうすればいいのかまるでわからない。
でも、わからないことは考えてもダメなのだ。
頭が痛くなる。
無限のシミュレーションをするよりも、実際にひと目でも実物を見たほうがいい。
音川栄治はリッカの店から、ほんの五十メートルばかり離れたゲーセンにいるはずだった。
やれやれ、また池袋にとんぼ返りだ。
俺は通話を切り、広間のまおに叫んだ。
「もうドラマの時間は終わったろ。ちょっとでてくるから、夕飯は適当に頼む。」
返事の雷が落ちてくるまえに、俺はバスケットシューズの底をならして、路上に走り出ていた。
なんといっても、走れるうちが花なのだ。
こんなとき刑事ドラマみたいなかっこいいBGMがつかないかな。
ロサ会館は映画館やカフェやマンガ喫茶やレンタルビデオ屋なんかが、どっさりとはいった雑居ビルだ。
築年数が古いので妙に暗くて、なんだかいけないかんじの風俗ビルに見えるが、実際は健全なもの。
俺は、一階のゲーセンに到着した。
深呼吸してから、あちこちで電子の炸裂音が響く薄暗いフロアをゆっくりと流していく。
おおきなダービーゲームのまわりには、スツールがあわせて十ばかり並んでいた。
年寄りと会社員が数人、あいだをおいて座っている。
そのなかに俺はやつの顔を見つけた。
血の気のない青い野獣の顔だ。
とても路上強盗などする人間には見えなかった。
小柄で痩せている。
灰色のニットキャップに、28とばかでかい数字が胸にはいったスタジャン、ジーンズはきっと何ヵ月も洗っていないのだろう。
ひざのところが油でも塗ったように光っていた。
やつを見ていると、肩をたたかれた。
「あいつがケダモノだよ」
サングラスをかけたチヒロだった。
うわ目づかいで俺を見上げる。
「ずいぶん気が弱そうな野獣だな。ここは目立つから、むこうのゲームのところにいこう。」
いじめ。
年を取るごとに、いじめは通常金銭の強要に変化する。
「そいつらはあの事件で、裁かれているのか」
『ああ、少年A、少年B、少年C、少年D。全員初犯で、少年院送りはまぬかれている。強請なんて、今じゃあどの高校のどのクラスでもありふれてるんだ』
「じゃあ、いじめられっ子だけ、どんな悪ガキでもぺちゃんこになるという少年院に送られたのか」
『そういうことになるな』
不公平な話だった。
ひざを割られたチヒロの兄と強盗犯の音川、それに直接の原因をつくったABCDの四人。
罪と罰の関係において、もっとも公平だったのは誰なのだろうか。
兄の復讐を誓うチヒロがいう世界のただしさはどこにあるのか。
「わかった。さんきゅ」
『なんだ、やけに素直だな、悠。おまえ、これからその音川ってやつをどうするんだ』
わからないといった。
どうすればいいのかまるでわからない。
でも、わからないことは考えてもダメなのだ。
頭が痛くなる。
無限のシミュレーションをするよりも、実際にひと目でも実物を見たほうがいい。
音川栄治はリッカの店から、ほんの五十メートルばかり離れたゲーセンにいるはずだった。
やれやれ、また池袋にとんぼ返りだ。
俺は通話を切り、広間のまおに叫んだ。
「もうドラマの時間は終わったろ。ちょっとでてくるから、夕飯は適当に頼む。」
返事の雷が落ちてくるまえに、俺はバスケットシューズの底をならして、路上に走り出ていた。
なんといっても、走れるうちが花なのだ。
こんなとき刑事ドラマみたいなかっこいいBGMがつかないかな。
ロサ会館は映画館やカフェやマンガ喫茶やレンタルビデオ屋なんかが、どっさりとはいった雑居ビルだ。
築年数が古いので妙に暗くて、なんだかいけないかんじの風俗ビルに見えるが、実際は健全なもの。
俺は、一階のゲーセンに到着した。
深呼吸してから、あちこちで電子の炸裂音が響く薄暗いフロアをゆっくりと流していく。
おおきなダービーゲームのまわりには、スツールがあわせて十ばかり並んでいた。
年寄りと会社員が数人、あいだをおいて座っている。
そのなかに俺はやつの顔を見つけた。
血の気のない青い野獣の顔だ。
とても路上強盗などする人間には見えなかった。
小柄で痩せている。
灰色のニットキャップに、28とばかでかい数字が胸にはいったスタジャン、ジーンズはきっと何ヵ月も洗っていないのだろう。
ひざのところが油でも塗ったように光っていた。
やつを見ていると、肩をたたかれた。
「あいつがケダモノだよ」
サングラスをかけたチヒロだった。
うわ目づかいで俺を見上げる。
「ずいぶん気が弱そうな野獣だな。ここは目立つから、むこうのゲームのところにいこう。」