ー特別編ー野獣とユニオン
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メモを開いて待っていた20分後、おれの携帯が鳴った。
「どうだった?」
俺は柏の不機嫌声を予想して、携帯を耳から離していたのだが、耳元であふれたのは花の香りのようなかぐわしい声。
『どうだったって、何で知っているの、悠さん』
チヒロだ。
おれは二枚目の声をつくった。
「人違いだ。それより、どうした」
『今、ロサ会館の一階にあるゲームセンターにいるの。悠さんと話したあとで、あいつのうちを見張りにいったら、たまたまでてきたんだ。あとをつけてる最中なんだけど』
なんとも自由気ままな依頼人だった。
このあたりが池袋地元っ子の恐ろしさ。
「わかった。今大切な電話をまってるから、それがすんだらすぐそっちにむかう。無理はするなよ。むこうはチヒロの顔を覚えてるかもしれない。」
『だいじょうぶ。サングラスかけてるから』
やめてくれといいそうになった。
薄暗いゲーセンでサングラスなんかかけていたら、逆に目立ってしかたない。
「とりあえず、なんかゲームでもやりながら監視するんだぞ」
通話を切った。
足が自然に貧乏揺すりをしてしまう。
なんだか展開が全く読めなくなっていた。
まあ、おれの場合は、いつだっていきあたりばったりなんだけど。
柏からの電話に出たときには、おれの焦りは最高潮だった。
いきなり叫んでしまう。
「遅い!」
刑事はむっとしていう。
『あ゛?なんだ…おまえ、大切な勤務時間を割いて、別のフロアにある資料保管室までいってきたんだぞ。すこしは感謝の気持ちを見せてみろ』
それはそうだ。
いつも一錢にもならない頼みごとばかりである。
「すまない。だが、今若い女がひとりで音川をはってるんだ」
今度あわてるのは、柏のほうだった。
『悠、また探偵ごっこか。その女はだいじょうぶなのか』
「わからない。情報をくれ。このあと、すぐむかう」
ハァっとうなって、柏がメモを読み上げ始めた。
『去年の三月十七日、二十三時十分、池袋一丁目の路上で無職・音川栄治・十八歳が、棒状の凶器で飲食店店員・葉山裕・二十一歳の肩を殴打した。その後、転倒した葉山の右足を踏みつけている』
棒状の凶器?
チヒロは確か警棒といっていた。
「ちょっと待ってくれ。その凶器って、特殊警棒みたいなやつか」
『いや、違う。家庭用ファックスの用紙には芯があるよな』
「あの茶色の厚紙のやつか」
紙をめくる音がした。
戦闘用の警棒と厚紙の芯では、だいぶ印象が変わってくる。
柏の声は冷静だ。
『そうだ。せっぱつまって、自分の家にあったものを持っていったらしい』
俺は走り書きしながら、質問した。
「なぜ、焦る必要がある?」
「どうだった?」
俺は柏の不機嫌声を予想して、携帯を耳から離していたのだが、耳元であふれたのは花の香りのようなかぐわしい声。
『どうだったって、何で知っているの、悠さん』
チヒロだ。
おれは二枚目の声をつくった。
「人違いだ。それより、どうした」
『今、ロサ会館の一階にあるゲームセンターにいるの。悠さんと話したあとで、あいつのうちを見張りにいったら、たまたまでてきたんだ。あとをつけてる最中なんだけど』
なんとも自由気ままな依頼人だった。
このあたりが池袋地元っ子の恐ろしさ。
「わかった。今大切な電話をまってるから、それがすんだらすぐそっちにむかう。無理はするなよ。むこうはチヒロの顔を覚えてるかもしれない。」
『だいじょうぶ。サングラスかけてるから』
やめてくれといいそうになった。
薄暗いゲーセンでサングラスなんかかけていたら、逆に目立ってしかたない。
「とりあえず、なんかゲームでもやりながら監視するんだぞ」
通話を切った。
足が自然に貧乏揺すりをしてしまう。
なんだか展開が全く読めなくなっていた。
まあ、おれの場合は、いつだっていきあたりばったりなんだけど。
柏からの電話に出たときには、おれの焦りは最高潮だった。
いきなり叫んでしまう。
「遅い!」
刑事はむっとしていう。
『あ゛?なんだ…おまえ、大切な勤務時間を割いて、別のフロアにある資料保管室までいってきたんだぞ。すこしは感謝の気持ちを見せてみろ』
それはそうだ。
いつも一錢にもならない頼みごとばかりである。
「すまない。だが、今若い女がひとりで音川をはってるんだ」
今度あわてるのは、柏のほうだった。
『悠、また探偵ごっこか。その女はだいじょうぶなのか』
「わからない。情報をくれ。このあと、すぐむかう」
ハァっとうなって、柏がメモを読み上げ始めた。
『去年の三月十七日、二十三時十分、池袋一丁目の路上で無職・音川栄治・十八歳が、棒状の凶器で飲食店店員・葉山裕・二十一歳の肩を殴打した。その後、転倒した葉山の右足を踏みつけている』
棒状の凶器?
チヒロは確か警棒といっていた。
「ちょっと待ってくれ。その凶器って、特殊警棒みたいなやつか」
『いや、違う。家庭用ファックスの用紙には芯があるよな』
「あの茶色の厚紙のやつか」
紙をめくる音がした。
戦闘用の警棒と厚紙の芯では、だいぶ印象が変わってくる。
柏の声は冷静だ。
『そうだ。せっぱつまって、自分の家にあったものを持っていったらしい』
俺は走り書きしながら、質問した。
「なぜ、焦る必要がある?」