ー特別編ー野獣とユニオン
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「でも、おれのところにきてよかったな」
チヒロは不思議そうな顔をする。
割りとしもぶくれのタヌキ顔なので、その表情のほうがかわいかった。
野獣の足を壊してくれと言うときよりもね。
「最近は金さえ出せばなんでもやってくれるやつが、どこにでも転がってる。ネットで窃盗犯や暴行犯さえ雇える世の中なんだからな」
「そうなんだ。」
感心したようにチヒロはいう。
そんなことは、普通の女の子なら知る必要のないことだ。
知らないままでいたほうが、どれだけ幸福かわからない。
「だけど、その手の人間に依頼をするのは、すごく危険なことなんだ。非合法の仕事を頼んだということで、裏の世界の人間と接点ができてしまう。脅されて規定の料金外の金を要求されたり、あんたなら若くてかわいいから、知り合いの店で身体を売れといってくるかもしれない」
スプリングコートの襟元をあわせて、チヒロはおれを見た。
疑わしそうな視線。
「おいおい、おれはだいじょうぶだよ。」
目だけでなぜと問いかける。女の目はよくしゃべるよな。
「おれの身元はチヒロも知ってる。池袋に住んでるなら、街の評判だってわかってるだろ。おれはこの街が好きだし、ここに居られなくなるような悪いことはしないさ。」
ようやく安心したようだった。
おれはいった。
「チヒロの兄さんの名前は?」
「葉山裕(はやまひろ)」
「そのケダモノの名は?」
「音川栄治」
名前だけではどちらが悪役かぜんぜんわからないものだ。
おれは手帳を取り出して、メモを始めた。
「やつについてわかっていることをすべて話してくれ。」
「去年の年末に長野県にある少年院からでてきた。仕事もアルバイトもせずに、実家にすんでブラブラしてるみたい。住所は…」
チヒロは豊島清掃事務所のある池袋本町の番地をいった。
メモする。
顔をあげていった。
「そっちはどこに住んでるんだ」
今度は池袋一丁目の住所が返ってくる。
川越街道をはさんだとなり街だった。
そこに被害者と加害者が顔を付き合わせて住んでいるのだ。
この世界には檻もフェンスもない。
すべての野獣は放し飼いである。
「さっきの携帯の写真だけど、どうやって撮ったんだ。やけにきちんと写っていたけど」
「簡単だよ。休みの日に、あの男のあとをつけた。それで池袋の駅前で声をかけたの。学校の名前をいって、わたしのクラスメートで音川さんのことが好きだった子がいるって。顔写真を撮らせてください。その子に送るから。すごくかわいい子なんだからって」
チヒロは携帯を開いて読み上げた。
「これはケダモノの電話番号ね。」
チヒロは不思議そうな顔をする。
割りとしもぶくれのタヌキ顔なので、その表情のほうがかわいかった。
野獣の足を壊してくれと言うときよりもね。
「最近は金さえ出せばなんでもやってくれるやつが、どこにでも転がってる。ネットで窃盗犯や暴行犯さえ雇える世の中なんだからな」
「そうなんだ。」
感心したようにチヒロはいう。
そんなことは、普通の女の子なら知る必要のないことだ。
知らないままでいたほうが、どれだけ幸福かわからない。
「だけど、その手の人間に依頼をするのは、すごく危険なことなんだ。非合法の仕事を頼んだということで、裏の世界の人間と接点ができてしまう。脅されて規定の料金外の金を要求されたり、あんたなら若くてかわいいから、知り合いの店で身体を売れといってくるかもしれない」
スプリングコートの襟元をあわせて、チヒロはおれを見た。
疑わしそうな視線。
「おいおい、おれはだいじょうぶだよ。」
目だけでなぜと問いかける。女の目はよくしゃべるよな。
「おれの身元はチヒロも知ってる。池袋に住んでるなら、街の評判だってわかってるだろ。おれはこの街が好きだし、ここに居られなくなるような悪いことはしないさ。」
ようやく安心したようだった。
おれはいった。
「チヒロの兄さんの名前は?」
「葉山裕(はやまひろ)」
「そのケダモノの名は?」
「音川栄治」
名前だけではどちらが悪役かぜんぜんわからないものだ。
おれは手帳を取り出して、メモを始めた。
「やつについてわかっていることをすべて話してくれ。」
「去年の年末に長野県にある少年院からでてきた。仕事もアルバイトもせずに、実家にすんでブラブラしてるみたい。住所は…」
チヒロは豊島清掃事務所のある池袋本町の番地をいった。
メモする。
顔をあげていった。
「そっちはどこに住んでるんだ」
今度は池袋一丁目の住所が返ってくる。
川越街道をはさんだとなり街だった。
そこに被害者と加害者が顔を付き合わせて住んでいるのだ。
この世界には檻もフェンスもない。
すべての野獣は放し飼いである。
「さっきの携帯の写真だけど、どうやって撮ったんだ。やけにきちんと写っていたけど」
「簡単だよ。休みの日に、あの男のあとをつけた。それで池袋の駅前で声をかけたの。学校の名前をいって、わたしのクラスメートで音川さんのことが好きだった子がいるって。顔写真を撮らせてください。その子に送るから。すごくかわいい子なんだからって」
チヒロは携帯を開いて読み上げた。
「これはケダモノの電話番号ね。」