ー特別編ー野獣とユニオン
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チヒロの声が急に高くなった。
「お兄ちゃんは、今でも杖がなければ歩けないのに、あいつは平気な顔でここにいる。あの事件のせいで、長時間は立っていられないから、調理師を続けることができなくなった。お店だって辞めたんだよ。たった三千円のために。あのケダモノ」
痴話喧嘩でもしていると思ったのだろう。
近くに住む年寄りが、俺たちをうさんくさそうな目で見ていた。
不思議なのだが、携帯電話を片手にいくら突っ立ていても誰もおかしな顔はしないのに、誰かとふたりで話していると不審に思われるのだ。
おれたちの社会はどこか間違った道に曲がっていないだろうか。
それともすぐそばにいても、携帯で話たほうが文明的なのか。
「わかった。もうすこし話をきかせてくれ。場所を変えよう」
俺たちが徒歩で移動したのは、西口にある東部デパート。
二階のエスカレーターわきにあるタカノフルーツパーラーだ。
同じ果物屋でも、六花のとは段違い(失礼)。
プラスチックに包まれた店内は、腕のいいデザイナーがつくった冷蔵庫のなかみたい。
おれ自身がひとつ五千円の高級フルーツにでもなった気がする。
チヒロはこの店のフレッシュメロンジュースが好きなのだという。
おれもつきあった。
マスクメロンとほんのわずかにシロップの甘さ。
確かにうまいけれど、おれならただのメロンで十分。
「わからないことがある。どうして、あんたにやつが犯人だとわかったんだ。普通、少年審判は公開されてないはずだけど」
「わからないほうがよかったのかな。そっちのほうが苦しまないですんだかもしれない。審判は非公開でも、人の噂はとめられないよね。あのケダモノ、わたしの高校の卒業生だったんだ。それで、誰かが強盗でつかまって少年院にいくって友達にきいて。顔を確かめたのは卒業アルバムだった。」
地元の高校の卒業アルバムに並んだ笑顔の写真のなかから、野獣を発見する。
うんざりしたのか、それとも興奮したのか。
おれの心を読んだように、チヒロはいった。
「これで復讐してやれると思った。自分の夢を捨てなきゃならなかったお兄ちゃんの仇が討てる。」
俺は甘いメロンジュースをのんだ。
どろりと濃い繊維質がのどにねばった。
「それで、おれのところにきた」
「そう。なんでもやってくれるし、正しいことなら、法律をまげてもちゃんとけじめをつけてくれる。それに……」
二枚目で女にやさしい。
あるいは、見かけによらず、意外なインテリ。
「……あまりお金もかからないって」
やっぱりそうくるか。
低料金だけが売り物のトラブルシューター。
どこよりも安いってCF流そうかな。
「お兄ちゃんは、今でも杖がなければ歩けないのに、あいつは平気な顔でここにいる。あの事件のせいで、長時間は立っていられないから、調理師を続けることができなくなった。お店だって辞めたんだよ。たった三千円のために。あのケダモノ」
痴話喧嘩でもしていると思ったのだろう。
近くに住む年寄りが、俺たちをうさんくさそうな目で見ていた。
不思議なのだが、携帯電話を片手にいくら突っ立ていても誰もおかしな顔はしないのに、誰かとふたりで話していると不審に思われるのだ。
おれたちの社会はどこか間違った道に曲がっていないだろうか。
それともすぐそばにいても、携帯で話たほうが文明的なのか。
「わかった。もうすこし話をきかせてくれ。場所を変えよう」
俺たちが徒歩で移動したのは、西口にある東部デパート。
二階のエスカレーターわきにあるタカノフルーツパーラーだ。
同じ果物屋でも、六花のとは段違い(失礼)。
プラスチックに包まれた店内は、腕のいいデザイナーがつくった冷蔵庫のなかみたい。
おれ自身がひとつ五千円の高級フルーツにでもなった気がする。
チヒロはこの店のフレッシュメロンジュースが好きなのだという。
おれもつきあった。
マスクメロンとほんのわずかにシロップの甘さ。
確かにうまいけれど、おれならただのメロンで十分。
「わからないことがある。どうして、あんたにやつが犯人だとわかったんだ。普通、少年審判は公開されてないはずだけど」
「わからないほうがよかったのかな。そっちのほうが苦しまないですんだかもしれない。審判は非公開でも、人の噂はとめられないよね。あのケダモノ、わたしの高校の卒業生だったんだ。それで、誰かが強盗でつかまって少年院にいくって友達にきいて。顔を確かめたのは卒業アルバムだった。」
地元の高校の卒業アルバムに並んだ笑顔の写真のなかから、野獣を発見する。
うんざりしたのか、それとも興奮したのか。
おれの心を読んだように、チヒロはいった。
「これで復讐してやれると思った。自分の夢を捨てなきゃならなかったお兄ちゃんの仇が討てる。」
俺は甘いメロンジュースをのんだ。
どろりと濃い繊維質がのどにねばった。
「それで、おれのところにきた」
「そう。なんでもやってくれるし、正しいことなら、法律をまげてもちゃんとけじめをつけてくれる。それに……」
二枚目で女にやさしい。
あるいは、見かけによらず、意外なインテリ。
「……あまりお金もかからないって」
やっぱりそうくるか。
低料金だけが売り物のトラブルシューター。
どこよりも安いってCF流そうかな。