ー特別編ー野獣とユニオン
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長い冬がようやく終わった。
それだけで、おれは西一番街のすすけたカラータイルの舗道にひざまずき、全世界に感謝をささげたくなる。
地球よ、公転してくれて、ありがとう。
おれはほんと寒いのと、暗いのが嫌いなのだ。
春の風がまたすごいよな。肌のきれいな女の子の二の腕の内側のつるつるやわらかな感触。
あいつが指先だけでなく、全身をなでてすぎるのだ。
おれにとって、春一番の楽しみは、夜の散歩である。あのエロティックな風のなか、ゆくあてのない散歩をする。
なんでもない住宅街の角を曲がると、いきなり貧弱なサクラの木が目に飛び込んでくる。
子供の腕ほどしかない幹から精いっぱい枝を伸ばして、やせた木は夜空に白い花を浮き上がらせる。
もちろん、おれは立ち止まって花をみたりはしない。歩く速度を変えずに、心のなかに一瞬の美しさを収めるだけだ。
出会っては別れ、また出会う。
人だって花だって、立ち止まるよりある速度のなかでふれあうほうが、きっといいのだ。
春の池袋は雰囲気がゆるんで、どこか田舎町のようだ。
この街にはひどく先端的な都会の部分と、土と草のにおいがする田舎が同居していて、春にはカントリー派が全面に出てくる。
まあ、おれみたいな都心の土着民には、東京のなかの田舎ってポジションはなかなか悪くないものだ。
代官山アドレスや六本木ヒルズなんかじゃ、くつろげないからな。
おれは最近、代官山を歩いたけれど、あそこにはカレースタンドやラーメン屋が全然なかった。
ショックだ。
あの街の住人はなにをくって生きているんだろうか。
学校のテストの追試から解放されて家で庭いじりをするおれは、頭も身体もたるみ切っていた。
新しい音楽を聞く気にもなれず、春の定番をアイポットにのせておく。
この時期は毎年のようにベートーヴェンの四番をBGMにしている。
全九曲のシンフォニーのなかで、一番偉大ではないけれど、一番可憐な曲。
それにおれが一番好きな曲でもある。
第一楽章冒頭のアダージョをきくと、いつもゆったりとうねる春の海を思い出す。
俺は庭の花壇にイチゴの苗を植えていた。
とよのか、あきひめ、女峰にアイベリー。
毎年のように銘柄は増えて、セミプロの俺でも覚えきれないくらい。
ちなみに三月くらいまでの低温期は、酸味が押さえられて甘味が強く、イチゴのうまい季節である。
家で待つ子供のおみやげに、宗方フルーツのイチゴを是非どうぞ。
真夜中までキャバクラで遊んだいい罪滅ぼしになるだろう。
しゃがみこみ、苗を植え付けている俺の視界に、白いブーツが映った。
くるぶしのところに同色の革のリボンがついたかわいいデザイン。
まあ、おれも男だから、ひざから太ももへと自然に視線はあがっていく。
ちょっと太目の足はぜんぜん俺の許容範囲内。
タータンチェックのミニスカートはスクールガール風。
白いスプリングコートのしたには、ミントグリーンのぴちぴちカーディガン。
今年の春のコーディネートとしては、おれ的には百点満点で百二十点だった。
それだけで、おれは西一番街のすすけたカラータイルの舗道にひざまずき、全世界に感謝をささげたくなる。
地球よ、公転してくれて、ありがとう。
おれはほんと寒いのと、暗いのが嫌いなのだ。
春の風がまたすごいよな。肌のきれいな女の子の二の腕の内側のつるつるやわらかな感触。
あいつが指先だけでなく、全身をなでてすぎるのだ。
おれにとって、春一番の楽しみは、夜の散歩である。あのエロティックな風のなか、ゆくあてのない散歩をする。
なんでもない住宅街の角を曲がると、いきなり貧弱なサクラの木が目に飛び込んでくる。
子供の腕ほどしかない幹から精いっぱい枝を伸ばして、やせた木は夜空に白い花を浮き上がらせる。
もちろん、おれは立ち止まって花をみたりはしない。歩く速度を変えずに、心のなかに一瞬の美しさを収めるだけだ。
出会っては別れ、また出会う。
人だって花だって、立ち止まるよりある速度のなかでふれあうほうが、きっといいのだ。
春の池袋は雰囲気がゆるんで、どこか田舎町のようだ。
この街にはひどく先端的な都会の部分と、土と草のにおいがする田舎が同居していて、春にはカントリー派が全面に出てくる。
まあ、おれみたいな都心の土着民には、東京のなかの田舎ってポジションはなかなか悪くないものだ。
代官山アドレスや六本木ヒルズなんかじゃ、くつろげないからな。
おれは最近、代官山を歩いたけれど、あそこにはカレースタンドやラーメン屋が全然なかった。
ショックだ。
あの街の住人はなにをくって生きているんだろうか。
学校のテストの追試から解放されて家で庭いじりをするおれは、頭も身体もたるみ切っていた。
新しい音楽を聞く気にもなれず、春の定番をアイポットにのせておく。
この時期は毎年のようにベートーヴェンの四番をBGMにしている。
全九曲のシンフォニーのなかで、一番偉大ではないけれど、一番可憐な曲。
それにおれが一番好きな曲でもある。
第一楽章冒頭のアダージョをきくと、いつもゆったりとうねる春の海を思い出す。
俺は庭の花壇にイチゴの苗を植えていた。
とよのか、あきひめ、女峰にアイベリー。
毎年のように銘柄は増えて、セミプロの俺でも覚えきれないくらい。
ちなみに三月くらいまでの低温期は、酸味が押さえられて甘味が強く、イチゴのうまい季節である。
家で待つ子供のおみやげに、宗方フルーツのイチゴを是非どうぞ。
真夜中までキャバクラで遊んだいい罪滅ぼしになるだろう。
しゃがみこみ、苗を植え付けている俺の視界に、白いブーツが映った。
くるぶしのところに同色の革のリボンがついたかわいいデザイン。
まあ、おれも男だから、ひざから太ももへと自然に視線はあがっていく。
ちょっと太目の足はぜんぜん俺の許容範囲内。
タータンチェックのミニスカートはスクールガール風。
白いスプリングコートのしたには、ミントグリーンのぴちぴちカーディガン。
今年の春のコーディネートとしては、おれ的には百点満点で百二十点だった。