ー特別編ー野獣とユニオン
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街を歩いていて、野獣と出会ったらどうする?
ケダモノはなにくわぬ顔をして、春の通りを歩いているだろう。
やつは確かにあのときの男。だが記憶のなかにあるように凶悪でも残酷そうでもない。
あたりまえの若いガキに見えるのだ。
ふたサイズはおおきなジーンズとスタジャンのBボーイファッションで、生ぬるい風を受け、やつはひとり歩いている。
春は散歩には最高の季節。スニーカーのゴム底だって、うれしげに跳ねている。池袋みたいな汚れた街のあちこちにも、気のいいソメイヨシノは花びらを散らしている。
檻をでてようやく自由になり、満ち足りたやつの目には、あんたは絶対はいらない。
足を踏んだ方は忘れるが、踏まれたほうは忘れないってことわざがあるよな。
あれと同じ状況だ。
あんたの心のなかに、復讐を求める怒りとあのときの苦痛と恐怖がわきあがる。
アドレナリンがサプリメントにして売れそうなくらい大量に放出されて、あんたはこぶしを握りしめる。
いきなりなぐりかかったら、あるいはとおりすぎざま後頭部を狙ったら、野獣はどんな顔をするだろうか。抵抗することもなく、一方的にやられているのだろうか。
あるいは、あのときのようにまたケダモノにもどり、やつは牙をむくのか。
けれどあんたな善良な一市民だから、そんなムチャをすることはない。
見ず知らずの他人の顔をして、とおりすぎるだけだ。
なんといっても、やつは罪を償って、こっちの世界に帰ってきたのである。
あんたは住み慣れたこの街で、これから先ずっと野獣とともにいきていかなきゃならないのだ。
やつとは今後何度も顔をあわせることだろう。
それでも我慢するのだ。
それが市民としての正しい生き方である。
怒りを腹の底に沈めたまま、あんたは普段の生活にもどるだろう。
だが、あんたにないしょであんたのことを愛する誰かが復讐しようとしたら、どうする?
ケダモノはどうしても許せない。
あれくらいでは、とてもつぐなったなんていえない。
もっともっと厳しい罰、棒と鞭が必要だ。
なにせやつは人間でなく、あんたから大切なものを奪ったただの野獣なのだから。
俺たちの世界では、常に罪と罰のバランスが量られている。
どんな犯罪と刑罰の関係についても、ある人間は公平だといい、別な誰かは軽すぎるという。
罪に対するただしい重さの罰なんて、法律のなか以外には、実はどこにも存在しないのだ。
今回は、池袋のいかしたカフェで起きた私的な裁判のお話。
裁判官は、なにを隠そうこの俺だ。
まあ、誰も裁くことのないダルダルの裁判官なんだけど、お願いだから責めないでくれ。
だって俺は刑法なんて興味がない。
こいつは犯罪の被害者も加害者も同じ街で生きていかなきゃならないとき、俺たちに何ができるかという切実な物語である。
これから飛躍的に増えていく事態だ。
逃げることはできない。
俺のことを甘いというやつもいるだろう。
だが、賭けてもいい。
同じ立場になったら、十中八九あんただって同じことをすると思う。
だって、俺は目撃したのだ。
被害者と加害者が握手する場面。
おたがいに目を見て笑う、取って置きの場面をね。
そして、あんたは野獣を抱き締める。
だって、やつはただのケダモノじゃなく、人間だったんだからな。
まあ、そいつに気づかないうちは、おれたち自身がまだ動物だってこと。
ー野獣とユニオンー
ケダモノはなにくわぬ顔をして、春の通りを歩いているだろう。
やつは確かにあのときの男。だが記憶のなかにあるように凶悪でも残酷そうでもない。
あたりまえの若いガキに見えるのだ。
ふたサイズはおおきなジーンズとスタジャンのBボーイファッションで、生ぬるい風を受け、やつはひとり歩いている。
春は散歩には最高の季節。スニーカーのゴム底だって、うれしげに跳ねている。池袋みたいな汚れた街のあちこちにも、気のいいソメイヨシノは花びらを散らしている。
檻をでてようやく自由になり、満ち足りたやつの目には、あんたは絶対はいらない。
足を踏んだ方は忘れるが、踏まれたほうは忘れないってことわざがあるよな。
あれと同じ状況だ。
あんたの心のなかに、復讐を求める怒りとあのときの苦痛と恐怖がわきあがる。
アドレナリンがサプリメントにして売れそうなくらい大量に放出されて、あんたはこぶしを握りしめる。
いきなりなぐりかかったら、あるいはとおりすぎざま後頭部を狙ったら、野獣はどんな顔をするだろうか。抵抗することもなく、一方的にやられているのだろうか。
あるいは、あのときのようにまたケダモノにもどり、やつは牙をむくのか。
けれどあんたな善良な一市民だから、そんなムチャをすることはない。
見ず知らずの他人の顔をして、とおりすぎるだけだ。
なんといっても、やつは罪を償って、こっちの世界に帰ってきたのである。
あんたは住み慣れたこの街で、これから先ずっと野獣とともにいきていかなきゃならないのだ。
やつとは今後何度も顔をあわせることだろう。
それでも我慢するのだ。
それが市民としての正しい生き方である。
怒りを腹の底に沈めたまま、あんたは普段の生活にもどるだろう。
だが、あんたにないしょであんたのことを愛する誰かが復讐しようとしたら、どうする?
ケダモノはどうしても許せない。
あれくらいでは、とてもつぐなったなんていえない。
もっともっと厳しい罰、棒と鞭が必要だ。
なにせやつは人間でなく、あんたから大切なものを奪ったただの野獣なのだから。
俺たちの世界では、常に罪と罰のバランスが量られている。
どんな犯罪と刑罰の関係についても、ある人間は公平だといい、別な誰かは軽すぎるという。
罪に対するただしい重さの罰なんて、法律のなか以外には、実はどこにも存在しないのだ。
今回は、池袋のいかしたカフェで起きた私的な裁判のお話。
裁判官は、なにを隠そうこの俺だ。
まあ、誰も裁くことのないダルダルの裁判官なんだけど、お願いだから責めないでくれ。
だって俺は刑法なんて興味がない。
こいつは犯罪の被害者も加害者も同じ街で生きていかなきゃならないとき、俺たちに何ができるかという切実な物語である。
これから飛躍的に増えていく事態だ。
逃げることはできない。
俺のことを甘いというやつもいるだろう。
だが、賭けてもいい。
同じ立場になったら、十中八九あんただって同じことをすると思う。
だって、俺は目撃したのだ。
被害者と加害者が握手する場面。
おたがいに目を見て笑う、取って置きの場面をね。
そして、あんたは野獣を抱き締める。
だって、やつはただのケダモノじゃなく、人間だったんだからな。
まあ、そいつに気づかないうちは、おれたち自身がまだ動物だってこと。
ー野獣とユニオンー