ー特別編ー家なき者たちのパレード
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
十五分ほどであの白い柱のまえに到着した。
ガンさんがメガホンで叫んだ。
「おい、奥村出てこい!」
ブラインドのすきまから、何人かの社員がこちらを覗いていた。
俺たちの方は六十人くらいだろうか。
カラフルな古着を着たホームレスが、静かな住宅街にそれだけ出現したのだ。
近くの一軒家では玄関前で遊んでいた子供を、家のなかに入れている。
誰かが手拍子を開始した。
「返せ、返せ、手帳を返せ。」
お調子者のひとりが琉球舞踊のようにてのひらをくるくるとまわしながら、アスファルトの上で踊りだした。
おーい、酒買ってこいと誰かが叫んでいる。
タカシが俺の耳元でいた。
「さて、この騒動に何分耐えられるかな。」
俺はじっくりと周囲を観察していた。圧力がかかった人間の行動は、一瞬で暴発することがある。
注意をおこたるわけにはいかなかった。
予想外だったのはあの建設会社の方ではなく、あの三人組だった。
白い社屋はひっそりと静かなのに、二十分ほどしていきなりタクシーが目のまえに止まったのだ。
奥村から電話で呼び出されたのかもしれない。
クルマから降りると、ノボがいきなり叫んだ。
「何だ、お前たち。借金があるのを忘れたのか。」
ガンさんがメガホンで言い返した。
「俺はおまえに借金なんかねえ。ここに居る仲間も失業保険で、何倍にもして返しているはずだ。おかしいというなら、さっさと警察を呼べ。」
カラフルなホームレスの隊列に、肩幅の広い坊主頭が突撃した。
タカシが指を弾くと、S・ウルフの精鋭……というか№sの武器組である紅、炎銃、宮塚が三人がかりでやつを押えこんだ。
タカシもとびっきりを用意してくれたものだ…。
手首と足首を拘束用のプラスチックコードでパチンと止めてしまう。
陸にあがったマグロだ。
「いいか、こんなことしてただですむと思うなよ。」
ノボの脅しの言葉も、目が怯えているのでは威力半減だった。
こちらには六十人のホームレスとおまけのS・ウルフがいる。
対するやつらは残りふたりだけだ。
そのあいだにも、手拍子と歓声は続いている。
「返せ、返せ、手帳を返せ」
最後の砦も一時間は持たなかった。
奥村という社長は、どこかで見たことあるようなこぶとりの中年男。
毛糸のベストを着て、サンダル履きで階段を下りてくる姿を見て、はっと気がついた。
この男は食品偽装をする会社の社長のような印象なのだ。こずるい社長というのは、皆どこか似てくるのかもしれない。
きっと自分の会社では、ワンマンなのだろう。俺はガンさんから、メガホンを受け取った。
「あんたが奥村社長だな。あぶれ手帳の失業保険詐欺のからくりはぜんぶわかっている。だが、ここに居るみんなは心優しくてな。警察に駆けこむのは気が進まないそうだ。」
奥村の声は情けなかった。
「急に押し掛けてきて、いったいなんの騒ぎなんだ。頼むから、今日のところは帰ってくれ。手帳ならちゃんと返すから。」
とても信用できる男には見えなかった。
とりあえずこの場をしのいで、あとで作戦を練ろう。
そんな雰囲気。
俺は携帯を抜いた。
ガンさんがメガホンで叫んだ。
「おい、奥村出てこい!」
ブラインドのすきまから、何人かの社員がこちらを覗いていた。
俺たちの方は六十人くらいだろうか。
カラフルな古着を着たホームレスが、静かな住宅街にそれだけ出現したのだ。
近くの一軒家では玄関前で遊んでいた子供を、家のなかに入れている。
誰かが手拍子を開始した。
「返せ、返せ、手帳を返せ。」
お調子者のひとりが琉球舞踊のようにてのひらをくるくるとまわしながら、アスファルトの上で踊りだした。
おーい、酒買ってこいと誰かが叫んでいる。
タカシが俺の耳元でいた。
「さて、この騒動に何分耐えられるかな。」
俺はじっくりと周囲を観察していた。圧力がかかった人間の行動は、一瞬で暴発することがある。
注意をおこたるわけにはいかなかった。
予想外だったのはあの建設会社の方ではなく、あの三人組だった。
白い社屋はひっそりと静かなのに、二十分ほどしていきなりタクシーが目のまえに止まったのだ。
奥村から電話で呼び出されたのかもしれない。
クルマから降りると、ノボがいきなり叫んだ。
「何だ、お前たち。借金があるのを忘れたのか。」
ガンさんがメガホンで言い返した。
「俺はおまえに借金なんかねえ。ここに居る仲間も失業保険で、何倍にもして返しているはずだ。おかしいというなら、さっさと警察を呼べ。」
カラフルなホームレスの隊列に、肩幅の広い坊主頭が突撃した。
タカシが指を弾くと、S・ウルフの精鋭……というか№sの武器組である紅、炎銃、宮塚が三人がかりでやつを押えこんだ。
タカシもとびっきりを用意してくれたものだ…。
手首と足首を拘束用のプラスチックコードでパチンと止めてしまう。
陸にあがったマグロだ。
「いいか、こんなことしてただですむと思うなよ。」
ノボの脅しの言葉も、目が怯えているのでは威力半減だった。
こちらには六十人のホームレスとおまけのS・ウルフがいる。
対するやつらは残りふたりだけだ。
そのあいだにも、手拍子と歓声は続いている。
「返せ、返せ、手帳を返せ」
最後の砦も一時間は持たなかった。
奥村という社長は、どこかで見たことあるようなこぶとりの中年男。
毛糸のベストを着て、サンダル履きで階段を下りてくる姿を見て、はっと気がついた。
この男は食品偽装をする会社の社長のような印象なのだ。こずるい社長というのは、皆どこか似てくるのかもしれない。
きっと自分の会社では、ワンマンなのだろう。俺はガンさんから、メガホンを受け取った。
「あんたが奥村社長だな。あぶれ手帳の失業保険詐欺のからくりはぜんぶわかっている。だが、ここに居るみんなは心優しくてな。警察に駆けこむのは気が進まないそうだ。」
奥村の声は情けなかった。
「急に押し掛けてきて、いったいなんの騒ぎなんだ。頼むから、今日のところは帰ってくれ。手帳ならちゃんと返すから。」
とても信用できる男には見えなかった。
とりあえずこの場をしのいで、あとで作戦を練ろう。
そんな雰囲気。
俺は携帯を抜いた。