ー特別編ー家なき者たちのパレード
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「あれっぽっちの借金のかたに、命のつぎに大切なあぶれ手帳まで奪われて、いいように失業保険詐欺の片棒を担がされる。それでお前たちは満足なのか。ホームレスだって、人間だ。人間だ。人間の誇りはどうした。家がないくらいで、誇りまで無くすんじゃない。」
ガンさんは大した役者だった。
今度のそうだ、そうだという声には、サクラ以外の野太い声も混じっている。
「いいか、俺たちは今日の午後、有志で本町の城用建設に押し掛けるつもりだ。やつらだって詐欺を働いているから、サツには通報できねえ。いうべきことをしっかりいって、やつらからあぶれ手帳を取り返そう。おい、手帳をやつらに取り上げられたやつ、手をあげろ」
百人ほどいる行列の半分ほどがのろのろと手をあげた。
「お前たち、自分の手帳を取り返したいのか。どうなんだ。」
最初はおうという小さな声だった。
ガンさんは天性のアジエーターだった。
「きこえねえよ。腹から声出してみろ。自分のものを自分の手に取り返すだけなんだぞ。あたりまえのことじゃねえか」
何度かのコール&レスポンスが繰り返されて、家なき者たちの叫びは公園の木々を揺らすほどになった。
これでいいだろう。
あとはカレーライスを食って出発だ。
俺の横で見ていたタカシが笑っていった。
「いや、おもしろい。千歳、お前はどうだ?」
優希は王に名を呼ばれたことに一瞬肩をビクッとさせた。
「あ…なんていうか、新鮮ですね。こういうのが悠の本当の顔で日常なんだなぁって。」
「たしかに、悠といっしょだと、人生飽きないな」
俺はしっかりと髪をかきあげて、胸に手を当てて、臣下の礼をとった。
「あたりまえだろ。おれはこの街一番のピエロだからな」
公園を出るまえにハプニングがひとつ。
なんでもホームレスのなかには古着専門家がいるのだという。
あちこちに落ちている服を拾っては、問屋のように仲間に売りさばくのだ。
ガンさんがホームレスの古着屋に声をかけて、集まった服は台車に二台分。
どれも派手な色の秋ものである。
赤、青、白、黄、緑に橙。
昼飯を終えたホームレスたちは、思いおもいの服を選んで、派手に着飾った。
日に焼けた顔に無精ひげ、なかにはスキンヘッドや肩まで届く長髪もいる。
見事にふぞろいのパレードだった。
最後に俺がメガホンをつかった。
「さあて、みんな出発しよう。目的地は、池袋本町の城用建設。ただし、くれぐれも手は出さないこと。でも、目立つ分にはいくら目立ってもいいから……。」
俺はうしろでいる優希にメガホンを押し付けた。
あぶれ手帳のキーワードを導いたのはコイツだ。うしろに引っ込んでる場合じゃないだろ?
優希は俺とホームレスの集団を交互に見て、がむしゃらに叫んだ。
「みんな好きなように派手にやってくれ!!」
おおっー!!と野太い声が上がる。
俺たちはとんでもなく貧しい国のオリンピックのように、都心の公園を胸を張って出ていった。
秋の空は快晴。
日差しはすべての色をいきいきと輝かせる透明さ。
足りないものは何もない、そんなふうに感じとることって、ごくたまにだけどあるよな。
その時の俺はグリーン大通りの注目を集めながら、そんなふうに感じていた。
世はすべて完ぺきだ。
ガンさんは大した役者だった。
今度のそうだ、そうだという声には、サクラ以外の野太い声も混じっている。
「いいか、俺たちは今日の午後、有志で本町の城用建設に押し掛けるつもりだ。やつらだって詐欺を働いているから、サツには通報できねえ。いうべきことをしっかりいって、やつらからあぶれ手帳を取り返そう。おい、手帳をやつらに取り上げられたやつ、手をあげろ」
百人ほどいる行列の半分ほどがのろのろと手をあげた。
「お前たち、自分の手帳を取り返したいのか。どうなんだ。」
最初はおうという小さな声だった。
ガンさんは天性のアジエーターだった。
「きこえねえよ。腹から声出してみろ。自分のものを自分の手に取り返すだけなんだぞ。あたりまえのことじゃねえか」
何度かのコール&レスポンスが繰り返されて、家なき者たちの叫びは公園の木々を揺らすほどになった。
これでいいだろう。
あとはカレーライスを食って出発だ。
俺の横で見ていたタカシが笑っていった。
「いや、おもしろい。千歳、お前はどうだ?」
優希は王に名を呼ばれたことに一瞬肩をビクッとさせた。
「あ…なんていうか、新鮮ですね。こういうのが悠の本当の顔で日常なんだなぁって。」
「たしかに、悠といっしょだと、人生飽きないな」
俺はしっかりと髪をかきあげて、胸に手を当てて、臣下の礼をとった。
「あたりまえだろ。おれはこの街一番のピエロだからな」
公園を出るまえにハプニングがひとつ。
なんでもホームレスのなかには古着専門家がいるのだという。
あちこちに落ちている服を拾っては、問屋のように仲間に売りさばくのだ。
ガンさんがホームレスの古着屋に声をかけて、集まった服は台車に二台分。
どれも派手な色の秋ものである。
赤、青、白、黄、緑に橙。
昼飯を終えたホームレスたちは、思いおもいの服を選んで、派手に着飾った。
日に焼けた顔に無精ひげ、なかにはスキンヘッドや肩まで届く長髪もいる。
見事にふぞろいのパレードだった。
最後に俺がメガホンをつかった。
「さあて、みんな出発しよう。目的地は、池袋本町の城用建設。ただし、くれぐれも手は出さないこと。でも、目立つ分にはいくら目立ってもいいから……。」
俺はうしろでいる優希にメガホンを押し付けた。
あぶれ手帳のキーワードを導いたのはコイツだ。うしろに引っ込んでる場合じゃないだろ?
優希は俺とホームレスの集団を交互に見て、がむしゃらに叫んだ。
「みんな好きなように派手にやってくれ!!」
おおっー!!と野太い声が上がる。
俺たちはとんでもなく貧しい国のオリンピックのように、都心の公園を胸を張って出ていった。
秋の空は快晴。
日差しはすべての色をいきいきと輝かせる透明さ。
足りないものは何もない、そんなふうに感じとることって、ごくたまにだけどあるよな。
その時の俺はグリーン大通りの注目を集めながら、そんなふうに感じていた。
世はすべて完ぺきだ。