ー特別編ー家なき者たちのパレード
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「そいつはいったいなんなんだ」
さすがにホームレス支援団体の代表だった。
ヨウスケは教科書でも音読するようにいった。
『建設現場なんかで働くホームレスの人の多くはその手帳をもっているんだ。正式な名称だと長いから、みんな白手帳とかあぶれ手帳とか呼んでる』
「なんで、あぶれ手帳なんてあだ名がつくんだよ」
『ああ、それは失業保険をもらうときに必要な手帳だから』
それからヨウスケに説明してもらったんだが、システムは要約するとこんな感じ。
一日働いたホームレスは作業が終わると、雇用保険料として印紙をあぶれ手帳に貼ってもらえる。
稼ぎによって額は違うが、一枚七千円くらいのものだという。
それが二ヶ月で二十六枚以上たまると、つぎの月にたとえ身体を壊したり、仕事が見つからなくてあぶれてしまっても、失業手当をもらえるのだ。
一日最高で七千五百円を十三日分以上である。
俺はたまにリッカの店で店番をしているくらいだから、簡単な計算は速い。
「そうか、だったらその手帳があれば、四千五百円くらいの印紙が十万近くの失業保険に化けるんだな。」
『うん、そういうことになる』
俺は冷たいお茶をのんでいった。
「だったら、どこかの悪知恵の働くやつには、いいめしの種になるんじゃないか」
ヨウスケはいった。
『そうかもしれないけど、実際にはちょっと難しいよ。あぶれ手帳をもっている人は、やっぱり大切にしているから。失業保険はあの人たちにとって生命線なんだ、そうかんたんに人に預けるようなことはしない』
だが、ガンさんは「あぶれ手帳をもっていかれたやつがいる」といっていた。
ホームレスのあいだの暴力事件と失業保険給付の手帳の謎。
ようやく今回のトラブルが事件らしくなってきた。
「わかったよ。こっちでももうすこし調査してみる。ヨウスケのほうでも、あぶれ手帳関連でどんな事件が起きてるのか、調べておいてくれないか」
『了解。やっぱりタカシさんのいうとおりだったな』
あの冷たい王様の顔を思い出した。
道化としては、どんな挨拶をつぎにするべきなのだろうか。
「やつはなんていった」
『この街にいるガキのなかでは、悠さんが飛び切り優秀だって。トラブルの種をかぎだす勘がものすごい。あいつにまかせておけば、だいじょうぶだって』
そのとき俺の鼻の穴がどのくらい広がったか、アンタにも見せてやりたい。
めったに臣下をほめることをしないアイスクールな王様が、手放しで俺をほめたのだ。
今度、勲章でもくれるのかもしれない。
俺はガードレールから立ち上がり、秋の空にまっすぐ背を伸ばす。
「優希ちゃん、行くぞ。」
「え、あ、はい!」
清掃工場の煙突を見上げてから、びっくりガードへ元気よく行進を始めた。
さすがにホームレス支援団体の代表だった。
ヨウスケは教科書でも音読するようにいった。
『建設現場なんかで働くホームレスの人の多くはその手帳をもっているんだ。正式な名称だと長いから、みんな白手帳とかあぶれ手帳とか呼んでる』
「なんで、あぶれ手帳なんてあだ名がつくんだよ」
『ああ、それは失業保険をもらうときに必要な手帳だから』
それからヨウスケに説明してもらったんだが、システムは要約するとこんな感じ。
一日働いたホームレスは作業が終わると、雇用保険料として印紙をあぶれ手帳に貼ってもらえる。
稼ぎによって額は違うが、一枚七千円くらいのものだという。
それが二ヶ月で二十六枚以上たまると、つぎの月にたとえ身体を壊したり、仕事が見つからなくてあぶれてしまっても、失業手当をもらえるのだ。
一日最高で七千五百円を十三日分以上である。
俺はたまにリッカの店で店番をしているくらいだから、簡単な計算は速い。
「そうか、だったらその手帳があれば、四千五百円くらいの印紙が十万近くの失業保険に化けるんだな。」
『うん、そういうことになる』
俺は冷たいお茶をのんでいった。
「だったら、どこかの悪知恵の働くやつには、いいめしの種になるんじゃないか」
ヨウスケはいった。
『そうかもしれないけど、実際にはちょっと難しいよ。あぶれ手帳をもっている人は、やっぱり大切にしているから。失業保険はあの人たちにとって生命線なんだ、そうかんたんに人に預けるようなことはしない』
だが、ガンさんは「あぶれ手帳をもっていかれたやつがいる」といっていた。
ホームレスのあいだの暴力事件と失業保険給付の手帳の謎。
ようやく今回のトラブルが事件らしくなってきた。
「わかったよ。こっちでももうすこし調査してみる。ヨウスケのほうでも、あぶれ手帳関連でどんな事件が起きてるのか、調べておいてくれないか」
『了解。やっぱりタカシさんのいうとおりだったな』
あの冷たい王様の顔を思い出した。
道化としては、どんな挨拶をつぎにするべきなのだろうか。
「やつはなんていった」
『この街にいるガキのなかでは、悠さんが飛び切り優秀だって。トラブルの種をかぎだす勘がものすごい。あいつにまかせておけば、だいじょうぶだって』
そのとき俺の鼻の穴がどのくらい広がったか、アンタにも見せてやりたい。
めったに臣下をほめることをしないアイスクールな王様が、手放しで俺をほめたのだ。
今度、勲章でもくれるのかもしれない。
俺はガードレールから立ち上がり、秋の空にまっすぐ背を伸ばす。
「優希ちゃん、行くぞ。」
「え、あ、はい!」
清掃工場の煙突を見上げてから、びっくりガードへ元気よく行進を始めた。