ー特別編ー家なき者たちのパレード
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「すみません、ガンさん、いませんか」
返事はなかった。
通行人がダンボールハウスに話しかける俺を、不思議そうに見て通り過ぎた。
何度か同じように声をかけたが、返事はない。
留守なのだろうか。
しかたなく屋根の部分をノックした。
「すみません、絆から来ました。誰かいませんか。」
「なんだよ、やかましいな。人が寝てんのによー」
意外なほど元気な声が棺桶のなかから返ってくる。
ごそごそと音がしたと思ったら、側面のダンボールが崩れてごま塩のひげ面がのぞいた。
地面からにらみあげてくる。
俺はしゃがんで、絆の会員証を見せた。
「ちょっと聞き取り調査にきました。俺は小鳥遊悠。」
ワンテンポ遅れて、優希も自己紹介した。
「あ、俺は千歳優希です。ガンさんですよね。」
初老の男の目は優希が手に下げているコンビニの袋に集中していた。
「話すことなんて、何もねぇよ。兄ちゃん、なんだ、それさしいれか」
俺が目配りすると、優希は袋ごと渡した。
ガンさんは受け取ると、ヘビのように器用にダンボールハウスから抜け出てきた。
「すまねぇな、今日初めての米飯だ。」
すぐにおにぎりのビニールを裂いて、口に入れた。
「まったく不景気とエコの組み合わせは、ホームレスにはしんどいぞ。今じゃあ、コンビニも弁当やも仕入れをぎりぎりまで抑えて無駄が出ないようにしてるからな。どこの店のゴミ箱でもまともな飯にはありつけなくなった。」
話好きのホームレスのようだ。
ガンさんは黒いジャージの上下だった。
靴はどこで拾ったのだろうか、ほとんど新品のナイキだ。
俺はがつがつと差し入れをたいらげている男のとなりに、優希は俺のとなりに、腰を降ろした。
ホームレスといっしょに歩道橋のしたに座ってるだけで、俺たちは透明人間になったみたいだった。
通りすぎていくやつは誰ひとり、俺たちの方を見ようとしなかった。
「代表から聞いたんだけど、最近このあたりをねぐらにしている人が、怪我をしていることが多いんだって」
ガンさんは一瞬こずるい表情になった。
「ホームレスの暮らしは危険と隣り合わせだよ。高校生や中学生は何するかわからんしな。仲間内にも盗人はいくらでもいる。俺もここを離れるときには、貴重品は全部持って歩いてるよ。」
そういうとジャージの上着のポケットから、携帯電話を取りだした。
ドコモので、俺のより新型のやつ。
にやりと笑うと、ぱちりと開いてみせる。
「これでテレビも見れるし、携帯を持っていないやつに一回二百円で貸してやることもある。商売道具さ。」
どうも相手のペースにはまりすぎだった。
俺は強引に話を引き戻した。
「顔にあざをつくったり、足を引きずったりする人が多いって話なんだけど、ガンさんはなにかしらないか」
ジャージ姿のホームレスはおにぎりをくい終わると、ゆうゆうとカットしたパイナップルを楊枝でさして口に運んでいる。
返事はなかった。
通行人がダンボールハウスに話しかける俺を、不思議そうに見て通り過ぎた。
何度か同じように声をかけたが、返事はない。
留守なのだろうか。
しかたなく屋根の部分をノックした。
「すみません、絆から来ました。誰かいませんか。」
「なんだよ、やかましいな。人が寝てんのによー」
意外なほど元気な声が棺桶のなかから返ってくる。
ごそごそと音がしたと思ったら、側面のダンボールが崩れてごま塩のひげ面がのぞいた。
地面からにらみあげてくる。
俺はしゃがんで、絆の会員証を見せた。
「ちょっと聞き取り調査にきました。俺は小鳥遊悠。」
ワンテンポ遅れて、優希も自己紹介した。
「あ、俺は千歳優希です。ガンさんですよね。」
初老の男の目は優希が手に下げているコンビニの袋に集中していた。
「話すことなんて、何もねぇよ。兄ちゃん、なんだ、それさしいれか」
俺が目配りすると、優希は袋ごと渡した。
ガンさんは受け取ると、ヘビのように器用にダンボールハウスから抜け出てきた。
「すまねぇな、今日初めての米飯だ。」
すぐにおにぎりのビニールを裂いて、口に入れた。
「まったく不景気とエコの組み合わせは、ホームレスにはしんどいぞ。今じゃあ、コンビニも弁当やも仕入れをぎりぎりまで抑えて無駄が出ないようにしてるからな。どこの店のゴミ箱でもまともな飯にはありつけなくなった。」
話好きのホームレスのようだ。
ガンさんは黒いジャージの上下だった。
靴はどこで拾ったのだろうか、ほとんど新品のナイキだ。
俺はがつがつと差し入れをたいらげている男のとなりに、優希は俺のとなりに、腰を降ろした。
ホームレスといっしょに歩道橋のしたに座ってるだけで、俺たちは透明人間になったみたいだった。
通りすぎていくやつは誰ひとり、俺たちの方を見ようとしなかった。
「代表から聞いたんだけど、最近このあたりをねぐらにしている人が、怪我をしていることが多いんだって」
ガンさんは一瞬こずるい表情になった。
「ホームレスの暮らしは危険と隣り合わせだよ。高校生や中学生は何するかわからんしな。仲間内にも盗人はいくらでもいる。俺もここを離れるときには、貴重品は全部持って歩いてるよ。」
そういうとジャージの上着のポケットから、携帯電話を取りだした。
ドコモので、俺のより新型のやつ。
にやりと笑うと、ぱちりと開いてみせる。
「これでテレビも見れるし、携帯を持っていないやつに一回二百円で貸してやることもある。商売道具さ。」
どうも相手のペースにはまりすぎだった。
俺は強引に話を引き戻した。
「顔にあざをつくったり、足を引きずったりする人が多いって話なんだけど、ガンさんはなにかしらないか」
ジャージ姿のホームレスはおにぎりをくい終わると、ゆうゆうとカットしたパイナップルを楊枝でさして口に運んでいる。