ー特別編ー家なき者たちのパレード
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『ああ、不景気もどんづまりだな。仕事をなくしたり、親と別れたりすると、若いやつでもすぐホームレスに転げ落ちる。うちの方でもあれこれと調べてはいるが、まだ何もつかめていないんだ。ただ、ホームレスのボーイズに聞くと、みんなえらくなにかを、怖がっているらしい。』
怖がっている?
誰をだろうか。
人が恐れるのは、人だ。
「相手は誰だ?」
『わからないといっただろう。だが、俺たちが普段相手にしているギャングや暴力団、野良ランカーではないようだ』
「なぜ、わかる」
タカシが鼻で笑った。
『奴らが恐れているのは外部の目ではなくて、お互いどうしの監視網のようだ。共産党独裁のソビエトみたいにな。』
恐怖による裏切りと密告が横行する。
俺はショスタコーヴィッチの評伝を読んだので、その空気の一部は想像がつく。
「そうか、わかった」
タカシの声の調子が変わった。
普段とは違う氷が溶けだすときの微妙な温度感。
『あのボランティアの代表がいっているように軽傷のけが人だけでは、実際ないようだ。ホームレスは病院にはいかないからな。半殺しの目にあって、この街を追われた奴も何人もいたらしい。お前と一緒に居た……千歳といったか巻き込むなら十分見ててやれ。』
「ああ、ヤバくなりそうなら止めさせるさ。」
『それに、悠も気をつけろよ。』
俺はびっくりしてしまった。
王様が俺の身の安全について心配しているのだ。
「わかったよ。せいぜい気をつけるようにする。」
タカシは笑っていった。
『そうしておけ。鈴猫にうるさく言われたくないし、お前みたいな道化でも、池袋から居なくなると少しさびしいからな。』
とすると俺は王様愛玩のおもちゃということか。
俺はサヨナラも言わずに、電話をがちゃ切りしてやった。
どこかにキングを密告できるようなところはないものだろうか。
次の日は朝起きてから、すぐに街に飛び出した。優希とは池袋駅で落ち合う約束をしていた。
「悠、おはよう。今日は何から始めるんです?」
俺はポンっと優希の頭をなでていった。
「や・れ・る・こ・と。」
まだ何が起きるのかわからない。
だが、それでもなにかを探して、街に出る最初の瞬間とは胸が高鳴るものだ。
秋風のなか俺たちが向かったのは、リストの一番うえにあった住所。
東口に出て、明治通りをまっすぐ新宿方面に歩いていく。
大鳥神社に曲がる路地の近くに古びた歩道橋が見えてきた。
こんな新幹線道路のわきでは、さぞやかましくて寝づらいだろう。
階段のしたには、段ボールで作られた棺桶のようなねぐらがおいてあった。
手ぶらで話を聞きに行くのも気が引けて、近くのコンビニでおにぎりとフルーツとお茶を買っていく。
怖がっている?
誰をだろうか。
人が恐れるのは、人だ。
「相手は誰だ?」
『わからないといっただろう。だが、俺たちが普段相手にしているギャングや暴力団、野良ランカーではないようだ』
「なぜ、わかる」
タカシが鼻で笑った。
『奴らが恐れているのは外部の目ではなくて、お互いどうしの監視網のようだ。共産党独裁のソビエトみたいにな。』
恐怖による裏切りと密告が横行する。
俺はショスタコーヴィッチの評伝を読んだので、その空気の一部は想像がつく。
「そうか、わかった」
タカシの声の調子が変わった。
普段とは違う氷が溶けだすときの微妙な温度感。
『あのボランティアの代表がいっているように軽傷のけが人だけでは、実際ないようだ。ホームレスは病院にはいかないからな。半殺しの目にあって、この街を追われた奴も何人もいたらしい。お前と一緒に居た……千歳といったか巻き込むなら十分見ててやれ。』
「ああ、ヤバくなりそうなら止めさせるさ。」
『それに、悠も気をつけろよ。』
俺はびっくりしてしまった。
王様が俺の身の安全について心配しているのだ。
「わかったよ。せいぜい気をつけるようにする。」
タカシは笑っていった。
『そうしておけ。鈴猫にうるさく言われたくないし、お前みたいな道化でも、池袋から居なくなると少しさびしいからな。』
とすると俺は王様愛玩のおもちゃということか。
俺はサヨナラも言わずに、電話をがちゃ切りしてやった。
どこかにキングを密告できるようなところはないものだろうか。
次の日は朝起きてから、すぐに街に飛び出した。優希とは池袋駅で落ち合う約束をしていた。
「悠、おはよう。今日は何から始めるんです?」
俺はポンっと優希の頭をなでていった。
「や・れ・る・こ・と。」
まだ何が起きるのかわからない。
だが、それでもなにかを探して、街に出る最初の瞬間とは胸が高鳴るものだ。
秋風のなか俺たちが向かったのは、リストの一番うえにあった住所。
東口に出て、明治通りをまっすぐ新宿方面に歩いていく。
大鳥神社に曲がる路地の近くに古びた歩道橋が見えてきた。
こんな新幹線道路のわきでは、さぞやかましくて寝づらいだろう。
階段のしたには、段ボールで作られた棺桶のようなねぐらがおいてあった。
手ぶらで話を聞きに行くのも気が引けて、近くのコンビニでおにぎりとフルーツとお茶を買っていく。