ー特別編ー家なき者たちのパレード
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すべてのリスクが証券化される世界である。
俺たちの善と悪もうんと薄められて、細かに切り刻まれ、混ざりあっていることだろう。
悪人を倒すとき、善人も共倒れになる。
よくある話だ。なにせ俺の実体験だからな。
そのときヨウスケが顔をあげた。
西の雨雲が切れて、夕焼けの光がまぶしく空を駆けていく。
「生きることにつらさを抱えている人が、すこしでも生きやすくなる。なにをするにしても、この件がそういう方向に流れるのなら、ぼくたちは文句はいわないよ。よろしくお願いします、悠さん、優希くん」
なあ、単純でも胸に響く言葉ってあるよな。
人をやる気にさせるのは、そういう言葉なんだ。
ことにおれのように金で動かない中世の騎士のような人間は。
なにせ、もちなれない金をもつと、肩がこるからな。貧しくても、自由になる時間と鋭敏な心をもって生きるのはとてもいいものだ。
サンシャインシティのテラスで、さらに打ち合わせを重ねた。
俺としては、すぐにでもホームレスの負傷者から直接話を聞きたかったが、ヨウスケはそれは難しいといった。
「うちのスタッフが話を聞けないのは、おたがいにあの人たちが監視しあってる雰囲気があるからなんだ。炊き出しみたいな大勢のまえでは、誰も口を開かないと思う。」
「じゃあ、俺はどうすればいい」
やつはジーンズのポケットから、クレジットカードのようなものを取り出した。
表にはデザイン化された絆の文字。
受けとると、ちゃんと俺の名前が入っていた。
「うちのメンバー会員証。悠さんの分しか用意していなくて、悪いけど。あとはこれをわたしておくよ。極秘情報だから取り扱いには注意して。」
今度は手帳をちぎったような黄色い紙切れが一枚。
「そこには何人か協力してくれそうな人のストリートネームと住所が書いてある。うちの団体の緊急用連絡網から抜き出したものだから、気を付けて。」
俺は紙切れに目をやった。
ガンさん、スンさん、イーさん、ジャモさん。
誰も本名は教えてくれないようだった。
住所はこんな感じ。
南池袋二丁目歩道橋した、雑司が谷鬼子母神参道、池袋大橋した、びっくりガード。
住所というよりこの街のあちこちにあるブラックホールのような人目につかない場所ばかりだ。
「わかった。こいつは大事にするよ。役所なんかには見せたくない情報なんだろ。」
ヨウスケはつまならそうにいった。
「そう。どれもうちのメンバーが足で探したものなんだ。きっと公園のつぎは街全体が正常化されることになるだろう。そのときその紙一枚がどんなに危険なものになるか、悠さんも想像がつくでしょう。」
俺は重々しくうなずいた。アイアイサーの代わりだ。そこでおれたちは携帯電話の番号とアドレスを交換して、その場で別れた。
話を聞いていたのは、ほぼ一時間くらい。
俺は池袋の街のした半分についてはかなりの情報通だと思っていた。
だが、その勘違いを突き崩すには十分な時間だ。
まあ、ホームレスのあいだで起きている事件なんて、めったに世の中に浮かび上がってこないから、そいつも当然なんだがな。
俺たちの善と悪もうんと薄められて、細かに切り刻まれ、混ざりあっていることだろう。
悪人を倒すとき、善人も共倒れになる。
よくある話だ。なにせ俺の実体験だからな。
そのときヨウスケが顔をあげた。
西の雨雲が切れて、夕焼けの光がまぶしく空を駆けていく。
「生きることにつらさを抱えている人が、すこしでも生きやすくなる。なにをするにしても、この件がそういう方向に流れるのなら、ぼくたちは文句はいわないよ。よろしくお願いします、悠さん、優希くん」
なあ、単純でも胸に響く言葉ってあるよな。
人をやる気にさせるのは、そういう言葉なんだ。
ことにおれのように金で動かない中世の騎士のような人間は。
なにせ、もちなれない金をもつと、肩がこるからな。貧しくても、自由になる時間と鋭敏な心をもって生きるのはとてもいいものだ。
サンシャインシティのテラスで、さらに打ち合わせを重ねた。
俺としては、すぐにでもホームレスの負傷者から直接話を聞きたかったが、ヨウスケはそれは難しいといった。
「うちのスタッフが話を聞けないのは、おたがいにあの人たちが監視しあってる雰囲気があるからなんだ。炊き出しみたいな大勢のまえでは、誰も口を開かないと思う。」
「じゃあ、俺はどうすればいい」
やつはジーンズのポケットから、クレジットカードのようなものを取り出した。
表にはデザイン化された絆の文字。
受けとると、ちゃんと俺の名前が入っていた。
「うちのメンバー会員証。悠さんの分しか用意していなくて、悪いけど。あとはこれをわたしておくよ。極秘情報だから取り扱いには注意して。」
今度は手帳をちぎったような黄色い紙切れが一枚。
「そこには何人か協力してくれそうな人のストリートネームと住所が書いてある。うちの団体の緊急用連絡網から抜き出したものだから、気を付けて。」
俺は紙切れに目をやった。
ガンさん、スンさん、イーさん、ジャモさん。
誰も本名は教えてくれないようだった。
住所はこんな感じ。
南池袋二丁目歩道橋した、雑司が谷鬼子母神参道、池袋大橋した、びっくりガード。
住所というよりこの街のあちこちにあるブラックホールのような人目につかない場所ばかりだ。
「わかった。こいつは大事にするよ。役所なんかには見せたくない情報なんだろ。」
ヨウスケはつまならそうにいった。
「そう。どれもうちのメンバーが足で探したものなんだ。きっと公園のつぎは街全体が正常化されることになるだろう。そのときその紙一枚がどんなに危険なものになるか、悠さんも想像がつくでしょう。」
俺は重々しくうなずいた。アイアイサーの代わりだ。そこでおれたちは携帯電話の番号とアドレスを交換して、その場で別れた。
話を聞いていたのは、ほぼ一時間くらい。
俺は池袋の街のした半分についてはかなりの情報通だと思っていた。
だが、その勘違いを突き崩すには十分な時間だ。
まあ、ホームレスのあいだで起きている事件なんて、めったに世の中に浮かび上がってこないから、そいつも当然なんだがな。