ー特別編ー家なき者たちのパレード
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「地域生活移行支援事業っていうんだけど、やっぱりそううまくはいかなかった。最近になって、アパートを追い出されてまたストリートに戻ってくる人が、続々とあらわれたんだよ。」
「昔みたいに公園にはすめないのか。」
ヨウスケは皮肉そうに唇の片端をつりあげた。
やつの背後でサンシャイン60の窓が点々と光っていた。
「無理なんだ。公園はどこも正常化されてしまっているから。人が住むことはできない。」
俺は心のなかでため息をついた。
やれやれ、なんだか救われない話だぜ。
優希がいった。
「じゃあ、さっきの連中は、いったいどこで暮らしてるんだ?」
「ぼくたちの目につかない場所に、ばらばらに散らばって暮らしている。地下街の通路や高速道路のガードしたや河川敷なんかに。なんだかこういうのって、サブプライムローンに似てないかな」
ボランティアの学生はいきなりむずかしい経済用語をつかった。
おれも最近は新聞を読んでいるから、その単語の意味くらいわかる。
だが、アメリカの不動産と日本のホームレスの関係がわからなかった。
「どういうつながり?」
「だからさ、社会にとっては、サブプライムローンもホームレスの人たちも、一ヶ所に集めておくと人目につくし危険なんだよ。それでばらばらにして、薄く広くばらまく。そういう方法で、問題を全部なかったことにしてしまうんだ。」
なるほど、頭のいいやつは面白いことを考えるものだ。
社会にとってリスクになる存在は、つながりをほどいて細分化し、世の中全体にばらまいてしまえばいい。
確かにカリフォルニアで不動産のローンを証券化するのはいいだろう。
だが、池袋のホームレスは人間なのだ。
人間を証券化して、ばらまけるものだろうか。
俺はいきなりいってやった。
「ヨウスケは今、なんで困ってるんだ。」
絆というボランティアの中心人物は、秋の初めの空をあおいだ。
「それがなんで困ってるのか、ぜんぜんわからないんだ」
証券化とか、不可視の問題とか、いやにこの街のトラブルもこむずかしくなってきた。
トラブルシューターもそろそろただの不良学生ではなく、数学者や物理学者の出番なのかもしれない。
どんとこーいってな。
俺はヨウスケの顔をしげしげと見た。
「なあ、なんであんたはそれほどホームレスにいれこんでいるんだ。あんたの着てるそのベスト、じゃなくてジレだっけ、そいつだってペラペラだけどすごい高級品だろ。あんたの住んでる街にはホームレスなんていないはずだ」
ヨウスケはベストの襟元にふれていった。
「ああ、これね。ニール・バレットだよ。悠さんにも似合うと思うけど……ぼくは実は大学のゼミでリサーチをしていたんだ。ホームレスの人たちの生活スタイルや住環境の調査だよ。たくさんの人に会い、そのうちの何人かに死なれてしまった。路上の生活は危険が多いんだ。それである日目が覚めた。これはリサーチなんかしてる場合じゃない。今目の前にいる人を助けなくちゃって。それで、絆を始めたんだ。こんなので説明になるかな。」
俺は育ちのいい男の肩をポンとたたいてやった。
「昔みたいに公園にはすめないのか。」
ヨウスケは皮肉そうに唇の片端をつりあげた。
やつの背後でサンシャイン60の窓が点々と光っていた。
「無理なんだ。公園はどこも正常化されてしまっているから。人が住むことはできない。」
俺は心のなかでため息をついた。
やれやれ、なんだか救われない話だぜ。
優希がいった。
「じゃあ、さっきの連中は、いったいどこで暮らしてるんだ?」
「ぼくたちの目につかない場所に、ばらばらに散らばって暮らしている。地下街の通路や高速道路のガードしたや河川敷なんかに。なんだかこういうのって、サブプライムローンに似てないかな」
ボランティアの学生はいきなりむずかしい経済用語をつかった。
おれも最近は新聞を読んでいるから、その単語の意味くらいわかる。
だが、アメリカの不動産と日本のホームレスの関係がわからなかった。
「どういうつながり?」
「だからさ、社会にとっては、サブプライムローンもホームレスの人たちも、一ヶ所に集めておくと人目につくし危険なんだよ。それでばらばらにして、薄く広くばらまく。そういう方法で、問題を全部なかったことにしてしまうんだ。」
なるほど、頭のいいやつは面白いことを考えるものだ。
社会にとってリスクになる存在は、つながりをほどいて細分化し、世の中全体にばらまいてしまえばいい。
確かにカリフォルニアで不動産のローンを証券化するのはいいだろう。
だが、池袋のホームレスは人間なのだ。
人間を証券化して、ばらまけるものだろうか。
俺はいきなりいってやった。
「ヨウスケは今、なんで困ってるんだ。」
絆というボランティアの中心人物は、秋の初めの空をあおいだ。
「それがなんで困ってるのか、ぜんぜんわからないんだ」
証券化とか、不可視の問題とか、いやにこの街のトラブルもこむずかしくなってきた。
トラブルシューターもそろそろただの不良学生ではなく、数学者や物理学者の出番なのかもしれない。
どんとこーいってな。
俺はヨウスケの顔をしげしげと見た。
「なあ、なんであんたはそれほどホームレスにいれこんでいるんだ。あんたの着てるそのベスト、じゃなくてジレだっけ、そいつだってペラペラだけどすごい高級品だろ。あんたの住んでる街にはホームレスなんていないはずだ」
ヨウスケはベストの襟元にふれていった。
「ああ、これね。ニール・バレットだよ。悠さんにも似合うと思うけど……ぼくは実は大学のゼミでリサーチをしていたんだ。ホームレスの人たちの生活スタイルや住環境の調査だよ。たくさんの人に会い、そのうちの何人かに死なれてしまった。路上の生活は危険が多いんだ。それである日目が覚めた。これはリサーチなんかしてる場合じゃない。今目の前にいる人を助けなくちゃって。それで、絆を始めたんだ。こんなので説明になるかな。」
俺は育ちのいい男の肩をポンとたたいてやった。