ー特別編ー家なき者たちのパレード
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街を吹く風が冷たくなったように感じるのは、俺だけだろうか。
いくら秋になったとはいえ、そいつは冷たいなんてもんじゃなく、氷水を浴びせられるような冷酷さ。
単に季節のせいではなくて、俺たちが生きてる時代の冷たさなのかもしれない。
社会に口を開けた格差の谷はどんどん広く深くなり、谷の両岸ではおたがいの姿がまったく見えなくなってきた。
そうなると格差なんて初めからないのと同じなのだ。
なにせむこう岸の相手が存在しなくなり、自分の住む世界だけがすべてになるのだから。
それぞれの谷の両側で、人々は分断されたちいさな世界を生きることになる。
うえのほうのやつは港区と渋谷区(あとはせいぜい成田空港と海外)だけで暮らし、したのほうのやつは俺みたいに中から下流の世界でなんとか生き延びるのだ。
この秋、俺が目撃したのは、その最下流の世界で起きている弱肉強食の構図。
ちいさな魚がよりちいさな魚をくらい尽くす場面の数々だ。
やつらはたたかれ、仕事を奪われ、住む場所を追われ、命綱の手帳まで盗まれても、声ひとつあげることはできなかった。
深海の底から声をあげたって、光さす海面までは届かないし。
しかも相手は同じようにどん底に住む自分達の仲間で、すこしだけ獰猛だったり図体がでかかったりするやつなのだ。
小が小をくい、下流は下流から奪う。
それが新しい二十一世紀の図式ってやつ。
アンタもなんだか不思議に思わないか。
海の底では小魚が音もなく補食され、その数百メートルうえの海面を光輝く豪華客船がすすんでいく。
船のうえでは毎夜のパーティ。
エコに関心の深い洗練された趣味のいい男女の数々。
女たちのドレス一枚の代金で、海底の魚たちは楽に半年は生活できるのだ。
俺は思うんだけど、今必要なのは見えないものを見る能力で、想像できないものを想像する馬鹿力なんじゃないだろうか。
そうした無茶な力を育てなければ、俺たちはめのまえて起きてることさえいつか見えなくなる。
すべてが切り離され、センスよく隠され、なにもなかったことにされるじだいなのだ。
寝不足の目を見開いて、今起きていることを見届けなくちゃいけない。
そうでもしなけりゃ、海の底の闘いには誰も絶対に気づかないからな。
ー家なき者たちのパレードー
いくら秋になったとはいえ、そいつは冷たいなんてもんじゃなく、氷水を浴びせられるような冷酷さ。
単に季節のせいではなくて、俺たちが生きてる時代の冷たさなのかもしれない。
社会に口を開けた格差の谷はどんどん広く深くなり、谷の両岸ではおたがいの姿がまったく見えなくなってきた。
そうなると格差なんて初めからないのと同じなのだ。
なにせむこう岸の相手が存在しなくなり、自分の住む世界だけがすべてになるのだから。
それぞれの谷の両側で、人々は分断されたちいさな世界を生きることになる。
うえのほうのやつは港区と渋谷区(あとはせいぜい成田空港と海外)だけで暮らし、したのほうのやつは俺みたいに中から下流の世界でなんとか生き延びるのだ。
この秋、俺が目撃したのは、その最下流の世界で起きている弱肉強食の構図。
ちいさな魚がよりちいさな魚をくらい尽くす場面の数々だ。
やつらはたたかれ、仕事を奪われ、住む場所を追われ、命綱の手帳まで盗まれても、声ひとつあげることはできなかった。
深海の底から声をあげたって、光さす海面までは届かないし。
しかも相手は同じようにどん底に住む自分達の仲間で、すこしだけ獰猛だったり図体がでかかったりするやつなのだ。
小が小をくい、下流は下流から奪う。
それが新しい二十一世紀の図式ってやつ。
アンタもなんだか不思議に思わないか。
海の底では小魚が音もなく補食され、その数百メートルうえの海面を光輝く豪華客船がすすんでいく。
船のうえでは毎夜のパーティ。
エコに関心の深い洗練された趣味のいい男女の数々。
女たちのドレス一枚の代金で、海底の魚たちは楽に半年は生活できるのだ。
俺は思うんだけど、今必要なのは見えないものを見る能力で、想像できないものを想像する馬鹿力なんじゃないだろうか。
そうした無茶な力を育てなければ、俺たちはめのまえて起きてることさえいつか見えなくなる。
すべてが切り離され、センスよく隠され、なにもなかったことにされるじだいなのだ。
寝不足の目を見開いて、今起きていることを見届けなくちゃいけない。
そうでもしなけりゃ、海の底の闘いには誰も絶対に気づかないからな。
ー家なき者たちのパレードー