ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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「あの、そっちも、どうせこれ目当てでしょ」
形の悪い小指を立ててみせる。
うわ目づかいで俺に笑いかけてきた。
「今日はかわいい子だけ選んでふたり呼んであるから、共同戦線を張ろうよ。どうせ死んじゃうならHくらいしてもいいよね。」
気の弱そうなガキだった。自殺サイトの心中掲示板を出会い系の代わりに使う。
アイディアはいいかもしれないが、俺にはお呼びではなかった。
「ひとりでがんばれ。どんな子がくるのか知らないが、生きてる方がずっと楽しいって目にあわせてやれ。」
俺はショルダーバックを肩にななめがけした小柄なダークプリンスをその場において、カラオケボックスを出た。
大井町の駅に向かう途中で、ヒデとミズホが合流した。出会い系の話をする。
ミズホがうっとうしそうにいった。
「今じゃどんな趣味のホームページにいっても、出会い系の男がうじゃうじゃしてる。あいつらもっと他にやることないのかな」
俺が苦笑いしていった。
「筋トレとか」
ヒデはおおまじめにうなずいた。
「ほんとだな。みんなトレーニングすればいいんだ。そうすれば自殺系も出会い系ももっとひまになる。」
ヒデのいうとおりかもしれなかった。
俺も明日から筋トレの量をヒデ並みに増やそうかな。
ついていない日には、埋め合わせがあるものだ。その日自宅に戻ると夏の朝からオフ会の誘いが来ていた。
次の土曜日の夜、場所は新宿三丁目にある個室バーだという。
集まるメンバーは俺と主催者を入れて、全部で五人。
俺はすぐにミズホに電話を入れた。
今度こそ、スパイダーでありますように。俺は自殺サイトのパトロールにほとほとうんざりしていた。
あれこれとオフ会用のキャラクターを考えたのだが、結局俺は当日も地のままでいくことにした。
ひねくれと皮肉と間の抜けたギャグを連発する迷惑キャラである。
それならおれの場合、普段のテンションをちょっと上げるくらいなので気が楽。
最近東京では個室系が流行だという(なんにでも系をつけるのもそうだ)。
中にはソファベッドやシャワーのついた個室レストランもあるという。
江戸時代の茶屋が現代に復活したのかもしれない。
一軒で全部済むなんて、便利なものだ。しかし、土曜日に俺がいった個室バーは、それほど怪しくなかった。
白木の間仕切りで小分けされたテーブル席が、ずらりと壁沿いに並んでいるだけ。
薄もののカーテンはしっかり透けているので、何でもありという訳でもない。
のみ屋ばかりはいった小さな雑居ビルの八階にある店だった。ウエイターに予約のブースに案内されて、俺はカーテンを抜けた。
「やあ、君がケンプくんか。やっぱり、あれはピアニストのケンプなのかな。それだとウィルヘムとフレディのふたりがいるけど、どっち」
ウイスキーのソーダ割りを前にして、ひどく痩せた男がにこやかに話しかけてくる。
ベージュの麻ブルゾンに黒いシャツ。キザな男だ。
髪は明るい茶髪だが、それくらいではごまかせなかった。
ボタンダウンのシャツを着て六本木のカフェにいた男。
死のガスが充満したミニヴァンからひとりだけ抜け出した男。
そいつはネットの心中掲示板に巣を張るスパイダーだった。
形の悪い小指を立ててみせる。
うわ目づかいで俺に笑いかけてきた。
「今日はかわいい子だけ選んでふたり呼んであるから、共同戦線を張ろうよ。どうせ死んじゃうならHくらいしてもいいよね。」
気の弱そうなガキだった。自殺サイトの心中掲示板を出会い系の代わりに使う。
アイディアはいいかもしれないが、俺にはお呼びではなかった。
「ひとりでがんばれ。どんな子がくるのか知らないが、生きてる方がずっと楽しいって目にあわせてやれ。」
俺はショルダーバックを肩にななめがけした小柄なダークプリンスをその場において、カラオケボックスを出た。
大井町の駅に向かう途中で、ヒデとミズホが合流した。出会い系の話をする。
ミズホがうっとうしそうにいった。
「今じゃどんな趣味のホームページにいっても、出会い系の男がうじゃうじゃしてる。あいつらもっと他にやることないのかな」
俺が苦笑いしていった。
「筋トレとか」
ヒデはおおまじめにうなずいた。
「ほんとだな。みんなトレーニングすればいいんだ。そうすれば自殺系も出会い系ももっとひまになる。」
ヒデのいうとおりかもしれなかった。
俺も明日から筋トレの量をヒデ並みに増やそうかな。
ついていない日には、埋め合わせがあるものだ。その日自宅に戻ると夏の朝からオフ会の誘いが来ていた。
次の土曜日の夜、場所は新宿三丁目にある個室バーだという。
集まるメンバーは俺と主催者を入れて、全部で五人。
俺はすぐにミズホに電話を入れた。
今度こそ、スパイダーでありますように。俺は自殺サイトのパトロールにほとほとうんざりしていた。
あれこれとオフ会用のキャラクターを考えたのだが、結局俺は当日も地のままでいくことにした。
ひねくれと皮肉と間の抜けたギャグを連発する迷惑キャラである。
それならおれの場合、普段のテンションをちょっと上げるくらいなので気が楽。
最近東京では個室系が流行だという(なんにでも系をつけるのもそうだ)。
中にはソファベッドやシャワーのついた個室レストランもあるという。
江戸時代の茶屋が現代に復活したのかもしれない。
一軒で全部済むなんて、便利なものだ。しかし、土曜日に俺がいった個室バーは、それほど怪しくなかった。
白木の間仕切りで小分けされたテーブル席が、ずらりと壁沿いに並んでいるだけ。
薄もののカーテンはしっかり透けているので、何でもありという訳でもない。
のみ屋ばかりはいった小さな雑居ビルの八階にある店だった。ウエイターに予約のブースに案内されて、俺はカーテンを抜けた。
「やあ、君がケンプくんか。やっぱり、あれはピアニストのケンプなのかな。それだとウィルヘムとフレディのふたりがいるけど、どっち」
ウイスキーのソーダ割りを前にして、ひどく痩せた男がにこやかに話しかけてくる。
ベージュの麻ブルゾンに黒いシャツ。キザな男だ。
髪は明るい茶髪だが、それくらいではごまかせなかった。
ボタンダウンのシャツを着て六本木のカフェにいた男。
死のガスが充満したミニヴァンからひとりだけ抜け出した男。
そいつはネットの心中掲示板に巣を張るスパイダーだった。