ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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「コーサクくんのこと、聞きました。残念だったね。でも、ミズホさん自分を責めてはダメ。誰にも予想できなかったことだし、悲しいけれど決めたのはコーサクくん自身だから」
ミズホは院長の最後の言葉で泣き出してしまった。
「コーサクが自殺するなんて思わなかった。私たちが潜入なんて、難しくて、つらい役をやらせたからかな。コーサクはもともと強い方じゃなかったのに」
ぽろぽろと涙を落したが、ミズホはしっかりと顔をあげている。
「もう動かしようのないことを考えるのは止めましょう。辛いけど、この状況を受け入れるしかない。自分を責めたり、なにかに怒りをぶつけないでね。」
院長の顔にはまたあの微笑が浮かんでいた。この世から遠く離れた微笑だ。
「最後にあった時、コーサクはひどく明るかった。俺達三人にもプレゼントをくれたりするし、俺には全くやつが自殺するなんて想像できなかった。」
やわらかなソファに座っていても白木院長の背筋は伸びていた。
微笑をたやさずにいう。
「コーサクくん」はどちらかというと、いつも抑鬱けいこうだった。それが急に明るくなったとすると、それがサインだったのかもしれない。自殺をする人は直前に生活が規則正しくなったり、身の回りを整頓したりするから。でも、それだって誰にも予測できることじゃない。わたしたちはいつも終わってから、それがどういう意味なのか考えるけど」
俺にはそれでも納得のいかないことがあった。
「最初に今回の集団自殺のオフ会があった。そのときスパイダーと話してから、コーサクは変ったんだ。やつがなにか催眠術といふか、抑鬱を悪化させるような逆カウンセリングみたいなことをした可能性はないのかな。」
美人の女医の顔で、微笑がほんの少しふくらんだ。俺には心の扉がドアチェーン分くらい開いたようにしか見えなかった。
ガードの固い意志。
「そうするとその人は悠くんに似てるのかもしれない。初対面のコーサクくんから、心の奥にあることをたくさん聞きだし、彼のなかに眠っていた衝動を現実にさせた。でもね、やっぱり最終的には、決定したのはコーサクくん自身なの。催眠術の話は面白いけどれど、そういう暗示では誰かを自殺させることなんて不可能です。私たちの生の本能は、催眠術くらいでは曲げられない」
ミズホはつぶやいた。
「生きる本能……じゃあ、コーサクは昔から心のどこかでは死にたかったのかな」
俺はミズホの右手首を見た。ビニールのように光る白いリストカットのあとがたくさん。
そのあとで院長の手首を見る。
こちらには傷ひとつ付いていなかった。
「自殺をする人の決心が固いなんていうのも俗説のひとつ。自殺を試みる人でも、いきたい気持ちと、もう苦しくて終わりにしたい気持ちが、せめぎ合っているものなの。また別の気持ちの時なら、コーサクくんはまだ生きてかもしれない。だってただヒデくんを携帯で呼び出すだけでよかったんだもね。」
ガラスの向こうには、照明を浴びたヤシの木が浮き立つように夜空に映えていた。この明るい木を見るか、暗い夜空を見るか。
俺たちが見ているものは、結局みな同じなのだ。
ただ注意を集める場所が違うだけなのだろう。
俺にはその時あることがわかった。
心理学的にはでたらめかもしれないが、スパイダーがコーサクにしたことがわかった気がしたのだ。
「じゃあ、スパイダーはコーサクを自由にしたんだな、きっと、それでやつはあんなに明るくなったんじゃないか」
ミズホは不思議そうな顔で見た。
怒りがわきあがってくる。
「スパイダーのやつは、自殺への罪悪感を消してやったんだ。大好きな親父を受け入れてあげよう。自殺はただの出口だ。いいも悪いもない。だって君のお父さんのようにすれば、これ以上苦しまなくて済む。ゆっくりと眠りたくないか。」
やさしく微笑んでコーサクに悪魔の言葉をささやくスパイダーが見えるような気がした。
白木院長は俺の方に顔を向けて、真剣な目つきをした。
「やっぱり、悠くんには適性があると思う。ちゃんと心理学の勉強をしてみる気はない。」
俺は首を横に振った。
とてもじゃないが、そんな責任の重い仕事は務まらない。
せいぜいガキのトラブルを裁くくらいが、俺にはいいところ。
ミズホは院長の最後の言葉で泣き出してしまった。
「コーサクが自殺するなんて思わなかった。私たちが潜入なんて、難しくて、つらい役をやらせたからかな。コーサクはもともと強い方じゃなかったのに」
ぽろぽろと涙を落したが、ミズホはしっかりと顔をあげている。
「もう動かしようのないことを考えるのは止めましょう。辛いけど、この状況を受け入れるしかない。自分を責めたり、なにかに怒りをぶつけないでね。」
院長の顔にはまたあの微笑が浮かんでいた。この世から遠く離れた微笑だ。
「最後にあった時、コーサクはひどく明るかった。俺達三人にもプレゼントをくれたりするし、俺には全くやつが自殺するなんて想像できなかった。」
やわらかなソファに座っていても白木院長の背筋は伸びていた。
微笑をたやさずにいう。
「コーサクくん」はどちらかというと、いつも抑鬱けいこうだった。それが急に明るくなったとすると、それがサインだったのかもしれない。自殺をする人は直前に生活が規則正しくなったり、身の回りを整頓したりするから。でも、それだって誰にも予測できることじゃない。わたしたちはいつも終わってから、それがどういう意味なのか考えるけど」
俺にはそれでも納得のいかないことがあった。
「最初に今回の集団自殺のオフ会があった。そのときスパイダーと話してから、コーサクは変ったんだ。やつがなにか催眠術といふか、抑鬱を悪化させるような逆カウンセリングみたいなことをした可能性はないのかな。」
美人の女医の顔で、微笑がほんの少しふくらんだ。俺には心の扉がドアチェーン分くらい開いたようにしか見えなかった。
ガードの固い意志。
「そうするとその人は悠くんに似てるのかもしれない。初対面のコーサクくんから、心の奥にあることをたくさん聞きだし、彼のなかに眠っていた衝動を現実にさせた。でもね、やっぱり最終的には、決定したのはコーサクくん自身なの。催眠術の話は面白いけどれど、そういう暗示では誰かを自殺させることなんて不可能です。私たちの生の本能は、催眠術くらいでは曲げられない」
ミズホはつぶやいた。
「生きる本能……じゃあ、コーサクは昔から心のどこかでは死にたかったのかな」
俺はミズホの右手首を見た。ビニールのように光る白いリストカットのあとがたくさん。
そのあとで院長の手首を見る。
こちらには傷ひとつ付いていなかった。
「自殺をする人の決心が固いなんていうのも俗説のひとつ。自殺を試みる人でも、いきたい気持ちと、もう苦しくて終わりにしたい気持ちが、せめぎ合っているものなの。また別の気持ちの時なら、コーサクくんはまだ生きてかもしれない。だってただヒデくんを携帯で呼び出すだけでよかったんだもね。」
ガラスの向こうには、照明を浴びたヤシの木が浮き立つように夜空に映えていた。この明るい木を見るか、暗い夜空を見るか。
俺たちが見ているものは、結局みな同じなのだ。
ただ注意を集める場所が違うだけなのだろう。
俺にはその時あることがわかった。
心理学的にはでたらめかもしれないが、スパイダーがコーサクにしたことがわかった気がしたのだ。
「じゃあ、スパイダーはコーサクを自由にしたんだな、きっと、それでやつはあんなに明るくなったんじゃないか」
ミズホは不思議そうな顔で見た。
怒りがわきあがってくる。
「スパイダーのやつは、自殺への罪悪感を消してやったんだ。大好きな親父を受け入れてあげよう。自殺はただの出口だ。いいも悪いもない。だって君のお父さんのようにすれば、これ以上苦しまなくて済む。ゆっくりと眠りたくないか。」
やさしく微笑んでコーサクに悪魔の言葉をささやくスパイダーが見えるような気がした。
白木院長は俺の方に顔を向けて、真剣な目つきをした。
「やっぱり、悠くんには適性があると思う。ちゃんと心理学の勉強をしてみる気はない。」
俺は首を横に振った。
とてもじゃないが、そんな責任の重い仕事は務まらない。
せいぜいガキのトラブルを裁くくらいが、俺にはいいところ。