ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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「コーサク、コーサク」
俺を跳ね飛ばすように、ヒデとミズホがやってきた。ほほ笑んだままシートにもたれたやつを揺さぶっている。
俺は車内をのぞきこんだ。助手席にニルヴァーナ。二列目にコーサクと紺ジャケ、三列目にゴスロリとノーメイク女。
皆人形のように静かだった。なにかが生きている感じがそのヴァンのなかではまるでしないのだ。
だが、運転席だけが空っぽだった。
空虚であることによって、逆に強烈に誰かの生の印象が残った。
逃げたのはあのボタンダウンの男、ブロックだ。
無駄だろうとは思ったが俺はいった。
「すぐに救急車を呼んでくれ。俺たちもここを離れよう」
ミズホはボロボロ涙を落して、コーサクの頭をなでていた。
つややかな黒髪。
「もううちのクラブはおしまい…」
俺は運転席のヘッドレストを殴りつけた。
「何いってんだ!ここで終わりにしたら、スパイダーに逃げられたままになる。やつはまだ他の獲物を狙っているんだぞ。コーサクの仇をうたなくていいのか!!」
ウォーと誰かが吼えていた。
ヒデがシヴォレーのフロント部分を特殊警棒でめちゃくちゃに殴りつけていた。
ヘッドライトを割り、グリルを蹴りあげ、バックミラーをもぎ取る。
俺は悲しみに怒り狂うヒデの振り上げた腕をつかみあげた。
「証拠は残すな。お前はクモ野郎に一発お見舞したいんだろ!」
俺を殺しそうな目でにらんで、ヒデはうなずいた。ボロボロの俺たちは、クルマに戻った。
仲間の死体一つ、その場に残して。
最後に俺が見たのは、ミニヴァンの向こうに広がる六本木の夜景だった。
五十四階建ての夢の塔。
俺はあの光を今でも忘れられない。
なぜ最悪の時のイメージばかり切れるように鮮やかなのだろう。
通報から十五分後には、何台もの救急車とパトカーが立体駐車場を登ってきた。
ヘッドライトがときどき夜空をサーチライトのように刺し貫く。
集団自殺の噂はすぐに遊び人達に広まったようだった。
次々とやじ馬が詰めかけてくる。
俺たちは少し離れた所から、騒動を見ていた。
事情をいくつか知っていても、なにも協力できなかったし、コーサクにしてやれることもなかった。
まだやつに出会ってから日が浅かったが、俺は自殺で遺された関係者の気持ちが少しだけわかった気がした。
取り返しのつかない残念さと裏切られた気持ち、それで後悔でいっぱいなのだ。
西口公園であのときコーサクをぶんなぐっていたら、やつはこんなことはしなかっただろうか。
明るく笑ったやつの顔から、俺はこの結果を予測できなかったのだろうか。
あのヴェートーベンが遺品だと、わからなかったのだろうか。
俺は、バカで間抜けで、コーサクを見殺しにした。
ヒデはガードレールに腰掛け、淡々といった。
「シューダンは時間どおりに決行されたんだろうな。なぜ、コーサクは俺たちに合図をおくらなかったんだろう」
俺を跳ね飛ばすように、ヒデとミズホがやってきた。ほほ笑んだままシートにもたれたやつを揺さぶっている。
俺は車内をのぞきこんだ。助手席にニルヴァーナ。二列目にコーサクと紺ジャケ、三列目にゴスロリとノーメイク女。
皆人形のように静かだった。なにかが生きている感じがそのヴァンのなかではまるでしないのだ。
だが、運転席だけが空っぽだった。
空虚であることによって、逆に強烈に誰かの生の印象が残った。
逃げたのはあのボタンダウンの男、ブロックだ。
無駄だろうとは思ったが俺はいった。
「すぐに救急車を呼んでくれ。俺たちもここを離れよう」
ミズホはボロボロ涙を落して、コーサクの頭をなでていた。
つややかな黒髪。
「もううちのクラブはおしまい…」
俺は運転席のヘッドレストを殴りつけた。
「何いってんだ!ここで終わりにしたら、スパイダーに逃げられたままになる。やつはまだ他の獲物を狙っているんだぞ。コーサクの仇をうたなくていいのか!!」
ウォーと誰かが吼えていた。
ヒデがシヴォレーのフロント部分を特殊警棒でめちゃくちゃに殴りつけていた。
ヘッドライトを割り、グリルを蹴りあげ、バックミラーをもぎ取る。
俺は悲しみに怒り狂うヒデの振り上げた腕をつかみあげた。
「証拠は残すな。お前はクモ野郎に一発お見舞したいんだろ!」
俺を殺しそうな目でにらんで、ヒデはうなずいた。ボロボロの俺たちは、クルマに戻った。
仲間の死体一つ、その場に残して。
最後に俺が見たのは、ミニヴァンの向こうに広がる六本木の夜景だった。
五十四階建ての夢の塔。
俺はあの光を今でも忘れられない。
なぜ最悪の時のイメージばかり切れるように鮮やかなのだろう。
通報から十五分後には、何台もの救急車とパトカーが立体駐車場を登ってきた。
ヘッドライトがときどき夜空をサーチライトのように刺し貫く。
集団自殺の噂はすぐに遊び人達に広まったようだった。
次々とやじ馬が詰めかけてくる。
俺たちは少し離れた所から、騒動を見ていた。
事情をいくつか知っていても、なにも協力できなかったし、コーサクにしてやれることもなかった。
まだやつに出会ってから日が浅かったが、俺は自殺で遺された関係者の気持ちが少しだけわかった気がした。
取り返しのつかない残念さと裏切られた気持ち、それで後悔でいっぱいなのだ。
西口公園であのときコーサクをぶんなぐっていたら、やつはこんなことはしなかっただろうか。
明るく笑ったやつの顔から、俺はこの結果を予測できなかったのだろうか。
あのヴェートーベンが遺品だと、わからなかったのだろうか。
俺は、バカで間抜けで、コーサクを見殺しにした。
ヒデはガードレールに腰掛け、淡々といった。
「シューダンは時間どおりに決行されたんだろうな。なぜ、コーサクは俺たちに合図をおくらなかったんだろう」