ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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真夜中の十二時、十二時半、一時。
いくら待っても、なかなかコーサクからの呼び出しはなかった。
俺たちはくだらない深夜放送をきいて待った。最初に動いたのはヒデで、マーチのデジタル時計は、一時半になろうとしていた。
「おかしくないか。コーサクは決行は日付の変わるときだといっていた。なぜ九十分も遅れているんだ。」
俺も同じ気分だった。エアコンの効いた車のなかにいても、嫌な感じの汗が止まらないのだ。俺はミズホにいった。
「俺たちもこのパーキングに車を入れて、中を偵察してみよう。遅すぎるし、ものすごく嫌な感じがする。」
俺の言葉が終わらないうちに、ミズホがおもい切りアクセルを踏んだ。タイヤを鳴らして発券所にマーチのはなを突っ込んだ。
BMWのオープンカーに乗ったどこかの金持ちのガキが大声をあげたが、ヒデが睨みつけると黙ってしまった。
マーチはゆっくりと立体駐車場を流していった。二階三階はほとんど空車スペースはなかった。
四階にあがるとき、うえからおりてくるフォルクスワーゲンとすれ違った。
違法の遮光フィルムをすべての窓に貼ってある。バンパーをこすりそうになり、ひやりとした。運転手は何も言わず、スピードを緩めもせずに坂道を降りていく。
マーチは苦しい息で急勾配を登った。四階五階。この辺りまで来ると金曜日の夜でもかなりの空きが目立つようになった。
だが、コーサク達が乗った銀色のシヴォレーはまだ見当たらなかった。ミズホに叫んだ。
「ここは何階まであるんだ」
「七階」
「じゃあ屋上に行こう」
人間はおかしな生き物だ。これから死のうというときでさえ、ラッキーナンバーに弱かったりする。
最上階に到着した。さすがにここにはクルマはほんの数台しか止められていなかった。
むき出しのコンクリートの柱が無数に並んでいるだけ。
マーチはゆっくりと広いフロアを一周した。
東の角、ちょうど遠くに六本木ヒルズの光の塔を望む場所に銀のミニヴァンがひっそりととまっていた。
俺にはその映像が酷くシュールに歪んで見えた。なぜかはわからない。それは誰かが生きている世界ではなく、恐ろしいほどのテクニックで描かれたエアブラシの絵のように見えたのだ。
銀のボディには街の灯が、これ以上なく豪勢に映り込んでいる。
ヒデが叫んだ。
「まずい。すぐとめろ」
まだ走っているうちに、俺はドアを開けて、外に転げ出た。
真夜中過ぎでも熱気は昼のようだ。
夏の海を泳ぐように、なかなかミニヴァンまでの距離が縮まらなかった。
すべての動きがスローモーションに見える。
なにかわからないことを叫びながら、俺たちはシヴォレーに駆け寄った。
迷っている暇などない。
先に到着したおれは、特殊警棒で運転席の窓をたたき割った。
前のときよりも練炭のにおいはずっと強烈だった。俺は鼻をおさえて、次の窓を割った。
そこに見つけた顔を見て叫ぶ。
ピンクに澄んで、ほほ笑む友人の顔。
「コーサク!」
俺はまだ練炭の熱で温かな首筋に手を当てた。頸動脈が見つからなかった。
無理もない。もうコーサクの心臓は動いてなかったのだ。
だが、やつは生きている時とまるで変わらないように見えた。
いくら待っても、なかなかコーサクからの呼び出しはなかった。
俺たちはくだらない深夜放送をきいて待った。最初に動いたのはヒデで、マーチのデジタル時計は、一時半になろうとしていた。
「おかしくないか。コーサクは決行は日付の変わるときだといっていた。なぜ九十分も遅れているんだ。」
俺も同じ気分だった。エアコンの効いた車のなかにいても、嫌な感じの汗が止まらないのだ。俺はミズホにいった。
「俺たちもこのパーキングに車を入れて、中を偵察してみよう。遅すぎるし、ものすごく嫌な感じがする。」
俺の言葉が終わらないうちに、ミズホがおもい切りアクセルを踏んだ。タイヤを鳴らして発券所にマーチのはなを突っ込んだ。
BMWのオープンカーに乗ったどこかの金持ちのガキが大声をあげたが、ヒデが睨みつけると黙ってしまった。
マーチはゆっくりと立体駐車場を流していった。二階三階はほとんど空車スペースはなかった。
四階にあがるとき、うえからおりてくるフォルクスワーゲンとすれ違った。
違法の遮光フィルムをすべての窓に貼ってある。バンパーをこすりそうになり、ひやりとした。運転手は何も言わず、スピードを緩めもせずに坂道を降りていく。
マーチは苦しい息で急勾配を登った。四階五階。この辺りまで来ると金曜日の夜でもかなりの空きが目立つようになった。
だが、コーサク達が乗った銀色のシヴォレーはまだ見当たらなかった。ミズホに叫んだ。
「ここは何階まであるんだ」
「七階」
「じゃあ屋上に行こう」
人間はおかしな生き物だ。これから死のうというときでさえ、ラッキーナンバーに弱かったりする。
最上階に到着した。さすがにここにはクルマはほんの数台しか止められていなかった。
むき出しのコンクリートの柱が無数に並んでいるだけ。
マーチはゆっくりと広いフロアを一周した。
東の角、ちょうど遠くに六本木ヒルズの光の塔を望む場所に銀のミニヴァンがひっそりととまっていた。
俺にはその映像が酷くシュールに歪んで見えた。なぜかはわからない。それは誰かが生きている世界ではなく、恐ろしいほどのテクニックで描かれたエアブラシの絵のように見えたのだ。
銀のボディには街の灯が、これ以上なく豪勢に映り込んでいる。
ヒデが叫んだ。
「まずい。すぐとめろ」
まだ走っているうちに、俺はドアを開けて、外に転げ出た。
真夜中過ぎでも熱気は昼のようだ。
夏の海を泳ぐように、なかなかミニヴァンまでの距離が縮まらなかった。
すべての動きがスローモーションに見える。
なにかわからないことを叫びながら、俺たちはシヴォレーに駆け寄った。
迷っている暇などない。
先に到着したおれは、特殊警棒で運転席の窓をたたき割った。
前のときよりも練炭のにおいはずっと強烈だった。俺は鼻をおさえて、次の窓を割った。
そこに見つけた顔を見て叫ぶ。
ピンクに澄んで、ほほ笑む友人の顔。
「コーサク!」
俺はまだ練炭の熱で温かな首筋に手を当てた。頸動脈が見つからなかった。
無理もない。もうコーサクの心臓は動いてなかったのだ。
だが、やつは生きている時とまるで変わらないように見えた。