ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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「うちのとうさんは、僕に似て気が弱くて、やさしい人だった。自殺したのは、ぼくが小学五年生の時だけど、あの日まではいいことばっかりだったよ。あんまりお金はなくて、狭い社宅住まいだったけど。休みの日はいつも家にいて、遊んでくれるようなひとだった。ほんとうは人付き合いが苦手で、会社にいくのも苦しいみたいだったけど。日曜の夜にはため息をつきながら、最後のハ短調のソナタを音を小さくして、よくきいていた」
俺はようやく届くくらいの声でいった。
「理由はなんだったのかな」
コーサクは微笑んでいう。
「わからない。ぼくと同じで暗い性格だったから、職場でいじめにあってはいたみたい。やっぱりそういうことをする多くの人と同じで、急性の鬱病になっちゃったんじゃないかな。方法が激しかったから」
俺はもうなにもいわなかった。その方法をききたくなかったのだ。
遠くで誰かがギターのチューニングをしていた。
コーサクはなにか楽しいことを思い付いたようにいう。
「関西のある街で、いきなり電車に飛び込んだんだ。遺体には対面できなかった。霊安室には白い布をかぶせられた山のような固まりがあったよ。バラバラだったんだ。それが最後の思い出なんだ。でも、今はよかったと思う」
俺はコーサクがなにをいっているのかわからなかった。
「きっととうさんもさんざん苦しんだんだと思うんだ。生きていられないくらいの苦痛だって、この世界にはある。あのクラブの二人には話せないけど、ぼくは自殺が絶対の悪だなんて思ってはいないんだ。シューダンで集まる人たちは、みんな問題は抱えているけど、普通の人ばかりだよ。知ってる、悠さん」
俺は白木院長にいわれたカウンセリングマインドを思い出した。
相手に対する共感、受容、自己一致。
黙ってうなずいてやる。
「キリスト教が入るまえの古代ローマでは、ある特殊な条件下では自殺が公認されていたんだよ。ある都市国家では申請者に無料で毒薬を与えていたところもある」
歴史というのは、どうせ奇想天外の連続なのだ。
俺はコーサクに反対などしなかった。
きっと毎日自殺志願者に会っているうちに、胸のなかにたまったものがたくさんあるのだろうと思った。
「俺は自殺の歴史についてなんか詳しくない。でも、あまり自分を追い詰めるなよ。肩の力を抜いた方がいいんじゃないか」
コーサクは軽くうなずいていった。
「ぼくはときどき、スパイダーもうちの反自殺クラブも同じだなって思うことがある。どっちも自殺しようとする人を通じてじゃなくちゃ、世の中と関われない関係不全の困ったちゃんなんだ。一方はむこうにわたしてやろうとして、残りはこちらに引き留めようとしている。方向性が変わるだけで、実際に扱うものはヽなんだよ。ぼくのやってることなんて最低だ。文字どおり命がけの真剣な志願者を、みんなだましているんだから……。」
俺はようやく届くくらいの声でいった。
「理由はなんだったのかな」
コーサクは微笑んでいう。
「わからない。ぼくと同じで暗い性格だったから、職場でいじめにあってはいたみたい。やっぱりそういうことをする多くの人と同じで、急性の鬱病になっちゃったんじゃないかな。方法が激しかったから」
俺はもうなにもいわなかった。その方法をききたくなかったのだ。
遠くで誰かがギターのチューニングをしていた。
コーサクはなにか楽しいことを思い付いたようにいう。
「関西のある街で、いきなり電車に飛び込んだんだ。遺体には対面できなかった。霊安室には白い布をかぶせられた山のような固まりがあったよ。バラバラだったんだ。それが最後の思い出なんだ。でも、今はよかったと思う」
俺はコーサクがなにをいっているのかわからなかった。
「きっととうさんもさんざん苦しんだんだと思うんだ。生きていられないくらいの苦痛だって、この世界にはある。あのクラブの二人には話せないけど、ぼくは自殺が絶対の悪だなんて思ってはいないんだ。シューダンで集まる人たちは、みんな問題は抱えているけど、普通の人ばかりだよ。知ってる、悠さん」
俺は白木院長にいわれたカウンセリングマインドを思い出した。
相手に対する共感、受容、自己一致。
黙ってうなずいてやる。
「キリスト教が入るまえの古代ローマでは、ある特殊な条件下では自殺が公認されていたんだよ。ある都市国家では申請者に無料で毒薬を与えていたところもある」
歴史というのは、どうせ奇想天外の連続なのだ。
俺はコーサクに反対などしなかった。
きっと毎日自殺志願者に会っているうちに、胸のなかにたまったものがたくさんあるのだろうと思った。
「俺は自殺の歴史についてなんか詳しくない。でも、あまり自分を追い詰めるなよ。肩の力を抜いた方がいいんじゃないか」
コーサクは軽くうなずいていった。
「ぼくはときどき、スパイダーもうちの反自殺クラブも同じだなって思うことがある。どっちも自殺しようとする人を通じてじゃなくちゃ、世の中と関われない関係不全の困ったちゃんなんだ。一方はむこうにわたしてやろうとして、残りはこちらに引き留めようとしている。方向性が変わるだけで、実際に扱うものはヽなんだよ。ぼくのやってることなんて最低だ。文字どおり命がけの真剣な志願者を、みんなだましているんだから……。」