ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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俺もミズホの胸のICレコーダーに向かっていった。
「集団見合いみたいな雰囲気だ。誰かが先頭を切ってしゃべっているという感じじゃない。ニルヴァーナは店の人間や客が気になるようで、キョロキョロト見回している。」
やつと目があった。
俺はあわてて視線をそらしたりしない。
じっとやつの目を見つめてやった。
先に視線をそらしせたのは、やつの方だった。人を尾行する時の初歩的な手口である。
まだ全員が集合してから十分足らずなのに、六人はソファから立ち上がった。
飲み物はほとんと歩手つかずで残っている。
コーサクはちょっとといってソファから離れると、すぐにミズホの携帯がうなりだす。
耳元に当てるといった。
「はい、ミズホ。そっちはどんな様子」
俺は彼女の右耳に顔を寄せた。
携帯の音量は結構でかくて、静かな場所ならほとんど会話が聞き取れるのだ。
コーサクがのんびりした口調でいった。
『この前の雑司ケ谷で襲撃されたのが、自殺系サイトで話題になってるみたい。みんな、けっこう警戒しているよ。ここは明るすぎるから、次の場所に移動するんだ。きっと懺悔大会になるよ。』
ミズホは感心なさそうにいった。
「そう。それじゃあ時間かかるね」
『うん、今日はみんなはもう帰ってもいいんじゃないかな。終わったら、あとで電話する。』
「わかった。」
通話を切ろうとしたミズホにいった。
「誰が、空の友達か聞いてくれ。」
ミズホが繰り返すまえに、コーサクが答えた。
『青と白のチェックのシャツを着た人』
ブロックだ。
俺から数メートル離れたところで、テーブルからやつが伝票を取っていた。
確かにひどく痩せている。髪は黒でパーマがかかっていた。
やつは振り向いて、俺たちのテーブルのわきを通った。
俺はミズホの携帯のメールを読むふりをして、彼女に身体を寄せた。
なぜかはわからない。
だが、ニルヴァーナのときとは違って、顔をちゃんと見られなかったのだ。
こういうときには、いくら理由がなくても自分の勘を信じるしかない。
集団自殺の志願者六人がカフェを出ていくと、手はず通りヒデがのんびりと距離を置いてあとを追った。
俺たちも少し時間を置いて店を出た。
ミズホは携帯を取り出して、液晶画面をGPSモードに変える。
画面には六本木周辺の詳細な地図が映し出された。そこを赤い三角の矢印がゆっくりと動いている。コーサクの携帯がある場所だった。
俺たちは矢印をおって、六本木交差点を渡り、裏通りにはいった。
スクエアビルの近くのカラオケボックスの前で、ヒデを見つけた。
「このなかにはいったよ」
俺はいった。
「懺悔大会って、なんなんだ」
ミズホは肩をすくめ、ヒデが代わりに返事をした。
「集団自殺の志願者が最初に顔を合わせると、お互いの自己紹介と一緒に、自殺への動機を披露しあうんだと、コーサクがいっていた。俺たちはそいつを懺悔大会と呼んでいる。いかに自分が恵まれていないか、どれほど生きていることが苦痛か、この世界が繊細な自分にいかに粗暴で冷酷か。くだらない自己披露が三十分、長いとひとり一時間以上も続くんだ。ああ、今すぐ警棒を持って殴りこみたいな」
ひとり一時間なら、六時間だった。」
コーサクがメンバーを先に帰したがるわけだ。俺たちはその場で解散した。
俺たちはつくづくスパイダーを甘く見ていたのだ。
誰か優秀な導き手があるとき、六時間というのは一つの集団に決定的な変化を生むことが可能な時間だ。
俺たちはつねに他人の危険については、これ以上ないほど鈍感である。
ニューヨークでもホワイトハウスでも、イラクでも六本木でも、人間の鈍さに変わりはない。
「集団見合いみたいな雰囲気だ。誰かが先頭を切ってしゃべっているという感じじゃない。ニルヴァーナは店の人間や客が気になるようで、キョロキョロト見回している。」
やつと目があった。
俺はあわてて視線をそらしたりしない。
じっとやつの目を見つめてやった。
先に視線をそらしせたのは、やつの方だった。人を尾行する時の初歩的な手口である。
まだ全員が集合してから十分足らずなのに、六人はソファから立ち上がった。
飲み物はほとんと歩手つかずで残っている。
コーサクはちょっとといってソファから離れると、すぐにミズホの携帯がうなりだす。
耳元に当てるといった。
「はい、ミズホ。そっちはどんな様子」
俺は彼女の右耳に顔を寄せた。
携帯の音量は結構でかくて、静かな場所ならほとんど会話が聞き取れるのだ。
コーサクがのんびりした口調でいった。
『この前の雑司ケ谷で襲撃されたのが、自殺系サイトで話題になってるみたい。みんな、けっこう警戒しているよ。ここは明るすぎるから、次の場所に移動するんだ。きっと懺悔大会になるよ。』
ミズホは感心なさそうにいった。
「そう。それじゃあ時間かかるね」
『うん、今日はみんなはもう帰ってもいいんじゃないかな。終わったら、あとで電話する。』
「わかった。」
通話を切ろうとしたミズホにいった。
「誰が、空の友達か聞いてくれ。」
ミズホが繰り返すまえに、コーサクが答えた。
『青と白のチェックのシャツを着た人』
ブロックだ。
俺から数メートル離れたところで、テーブルからやつが伝票を取っていた。
確かにひどく痩せている。髪は黒でパーマがかかっていた。
やつは振り向いて、俺たちのテーブルのわきを通った。
俺はミズホの携帯のメールを読むふりをして、彼女に身体を寄せた。
なぜかはわからない。
だが、ニルヴァーナのときとは違って、顔をちゃんと見られなかったのだ。
こういうときには、いくら理由がなくても自分の勘を信じるしかない。
集団自殺の志願者六人がカフェを出ていくと、手はず通りヒデがのんびりと距離を置いてあとを追った。
俺たちも少し時間を置いて店を出た。
ミズホは携帯を取り出して、液晶画面をGPSモードに変える。
画面には六本木周辺の詳細な地図が映し出された。そこを赤い三角の矢印がゆっくりと動いている。コーサクの携帯がある場所だった。
俺たちは矢印をおって、六本木交差点を渡り、裏通りにはいった。
スクエアビルの近くのカラオケボックスの前で、ヒデを見つけた。
「このなかにはいったよ」
俺はいった。
「懺悔大会って、なんなんだ」
ミズホは肩をすくめ、ヒデが代わりに返事をした。
「集団自殺の志願者が最初に顔を合わせると、お互いの自己紹介と一緒に、自殺への動機を披露しあうんだと、コーサクがいっていた。俺たちはそいつを懺悔大会と呼んでいる。いかに自分が恵まれていないか、どれほど生きていることが苦痛か、この世界が繊細な自分にいかに粗暴で冷酷か。くだらない自己披露が三十分、長いとひとり一時間以上も続くんだ。ああ、今すぐ警棒を持って殴りこみたいな」
ひとり一時間なら、六時間だった。」
コーサクがメンバーを先に帰したがるわけだ。俺たちはその場で解散した。
俺たちはつくづくスパイダーを甘く見ていたのだ。
誰か優秀な導き手があるとき、六時間というのは一つの集団に決定的な変化を生むことが可能な時間だ。
俺たちはつねに他人の危険については、これ以上ないほど鈍感である。
ニューヨークでもホワイトハウスでも、イラクでも六本木でも、人間の鈍さに変わりはない。