ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
なか一日おいて、俺たちは再び六本木に集合した。
スイ、スイ、スイサイド!の心中掲示板のオフ会は、午後三時からスタートするという。
十分まえにヒデがカフェにいき、三時にコーサクがはいり、五分後に俺とミズホがカップルの振りをして続くことになった。
コーサクにはとくに盗聴機などはしかけなかった。
これはまだ最初のオフ会なのだ。
いくらでも席をはずして、携帯を使うこともできるだろう。
俺たちは全員で張っていた。そこに自然な緊張のゆるみがあったと、あとになればわかる。
だが、そのときはちょっと次のシューダンのメンバーの顔つきでも確かめておこうと軽い気持ちだったのだ。
狩る側にいる者の油断だ。
俺とミズホは時間ちょうどに明るいカフェにはいった。白いTシャツのウエイトレスがいった。
「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」
俺たちは頭の悪いカップルの振りをして、さんざんどの席にするか迷った。
広い店の中を二周する。
コーサクは店の一番奥の一番奥のソファ席を、他の自殺志願者と囲んでいた。
目の端でチェックする。
ひとりも銀色の頭をした男はいなかった。
みな黒のままか、せいぜい茶髪なのである。
男四人のなかには、太ったやつもいなかった。
ヘビメタのバンドマンと同じで若くして自殺する男には、あまり太ったやつはいないのかもしれない。
俺はミズホにいった。
「スパイダーらしき男はいないな」
ミズホも残念そうにうなずいた。
「いいよ。ソファ席が見えるテーブルに移動しよう。」
それで俺たちはソファから数メートル離れた壁際に席を取った。
レジのわきでは予定通りヒデが巨体を縮めて、スポーツ新聞を読んでいる。
ミズホはGジャンの胸ポケットに差したICレコーダーのスイッチを入れた。
ソファ席に視線を振って自分の胸につぶやく。
「男三人は全員痩せ型、身長はよくわからない。取り立てて大柄でも、小柄でもないように見える。銀のヘアカラーはなし。カラーコンタクトも私の見たところなし。悠さん、カラコンの人はいたかな」
俺は首を横に振った。
ミズホは冷静にその場をレポートする。
「男性三人は二十代後半から三十代初め。サラリーマン風がふたりに、フリーター風がひとり。紺のジャケットを着たリーマン風を紺ジャケ、ボタンダウンのブロックチェックの半そでシャツを着た男をブロック、ニルヴァーナのTシャツを着たフリーターを……」
そこでミズホは俺を見て、にやりと笑った。
「あの人のコードネームをカート・コバーンにするか、ニルヴァーナにするか、どっちがいい」
ニルヴァーナはシアトルのグランジ・ロックの雄。九十年代初頭のスターバンドだ。
ボーカルのカート・コバーンは、九十四年四月に自分の頭をショットガンで吹き飛ばしている。
俺はカートの名前を使うのは嫌だった。
「ニルヴァーナにしてくれ」
涅槃か、おかしなバンド名。
ミズホはうなずくとレポートを再開した。
「女のひとりは太った二十代初め、ファッションはちょっと無理のあるゴシック・ロリータ。もうひとりはジーンズにTシャツで、全部GAPかZARAみたい」
誰か頭の回転の速いやつが、あるシーンをものすごいスピードで言葉にしていくのを横で見ているのはなかなか楽しいものだった。
スイ、スイ、スイサイド!の心中掲示板のオフ会は、午後三時からスタートするという。
十分まえにヒデがカフェにいき、三時にコーサクがはいり、五分後に俺とミズホがカップルの振りをして続くことになった。
コーサクにはとくに盗聴機などはしかけなかった。
これはまだ最初のオフ会なのだ。
いくらでも席をはずして、携帯を使うこともできるだろう。
俺たちは全員で張っていた。そこに自然な緊張のゆるみがあったと、あとになればわかる。
だが、そのときはちょっと次のシューダンのメンバーの顔つきでも確かめておこうと軽い気持ちだったのだ。
狩る側にいる者の油断だ。
俺とミズホは時間ちょうどに明るいカフェにはいった。白いTシャツのウエイトレスがいった。
「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」
俺たちは頭の悪いカップルの振りをして、さんざんどの席にするか迷った。
広い店の中を二周する。
コーサクは店の一番奥の一番奥のソファ席を、他の自殺志願者と囲んでいた。
目の端でチェックする。
ひとりも銀色の頭をした男はいなかった。
みな黒のままか、せいぜい茶髪なのである。
男四人のなかには、太ったやつもいなかった。
ヘビメタのバンドマンと同じで若くして自殺する男には、あまり太ったやつはいないのかもしれない。
俺はミズホにいった。
「スパイダーらしき男はいないな」
ミズホも残念そうにうなずいた。
「いいよ。ソファ席が見えるテーブルに移動しよう。」
それで俺たちはソファから数メートル離れた壁際に席を取った。
レジのわきでは予定通りヒデが巨体を縮めて、スポーツ新聞を読んでいる。
ミズホはGジャンの胸ポケットに差したICレコーダーのスイッチを入れた。
ソファ席に視線を振って自分の胸につぶやく。
「男三人は全員痩せ型、身長はよくわからない。取り立てて大柄でも、小柄でもないように見える。銀のヘアカラーはなし。カラーコンタクトも私の見たところなし。悠さん、カラコンの人はいたかな」
俺は首を横に振った。
ミズホは冷静にその場をレポートする。
「男性三人は二十代後半から三十代初め。サラリーマン風がふたりに、フリーター風がひとり。紺のジャケットを着たリーマン風を紺ジャケ、ボタンダウンのブロックチェックの半そでシャツを着た男をブロック、ニルヴァーナのTシャツを着たフリーターを……」
そこでミズホは俺を見て、にやりと笑った。
「あの人のコードネームをカート・コバーンにするか、ニルヴァーナにするか、どっちがいい」
ニルヴァーナはシアトルのグランジ・ロックの雄。九十年代初頭のスターバンドだ。
ボーカルのカート・コバーンは、九十四年四月に自分の頭をショットガンで吹き飛ばしている。
俺はカートの名前を使うのは嫌だった。
「ニルヴァーナにしてくれ」
涅槃か、おかしなバンド名。
ミズホはうなずくとレポートを再開した。
「女のひとりは太った二十代初め、ファッションはちょっと無理のあるゴシック・ロリータ。もうひとりはジーンズにTシャツで、全部GAPかZARAみたい」
誰か頭の回転の速いやつが、あるシーンをものすごいスピードで言葉にしていくのを横で見ているのはなかなか楽しいものだった。