ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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無理もなかった。
ここでいる人間のなかで一番ハードな仕事をしているのは、実はコーサクなのかもしれない。
やつはバカみたいにでかいスポーツバックから、のろのろとノートブックパソコンを取り出した。
起動して、メールソフトを立ちあげ、通信履歴を呼び出す。
俺たちのほうにディスプレイを向けるといった。
「ハンドルネームは、ダウンダウンダウン、蓮歌、空の友達。このなかで一番、話の進展が早いのは空の友達かな。今週中に最初のオフ会を開くことになっている」
そのときメールの着信を知らせる電子音が、ちいさなスピーカーから響いた。
コーサクがいった。
「きたよ。空の友達だ。オフ会のスケジュールと場所は……」
顔色をさらに青くしたコーサクは、メールを読むのを途中でやめてしまった。
ミズホが中腰になって液晶をのぞきこんだ。
「なあに、オフ会は六本木ヒルズのカフェ・アウターだって」
俺は壁のあちこちに埋め込まれたプラズマディスプレイに目をやった。
そこに銀色のロゴマークが浮かんでいる。
OUTER。
どうやらおれたちと心中掲示板のスパイダーの趣味はよく似ているらしい。
コーサクが周囲を見回していう。
「そういえばなんだかこの店って、あの世とこの世の中間みたいだね」
天国との境界線にあるカフェ。それとも、そいつは地獄との境だろうか
手帳を開いて、ミズホはいう。
「オフ会に参加する人数は」
コーサクはパソコンの画面をスクロールさせた。
メールを呼び出し、確認する。
「男はぼくと募集者の空の友達をいれて四人、女がふたり。」
全部で六人か。
ヒデが口笛を吹いた。
「そりゃあ、これまでの最多記録だな」
ミズホはきつい視線をヒデに送った。
タンクトップの筋肉男は横をむいて笑ってみせる。
「じゃあ、その三人の男のなかにスパイダーがいるかもしれないんだ」
コーサクはまだ憂鬱そうだった。ぽつりという。
「いるかもしれないし、いないかもしれない。ぼくにはわからない」
ヒデはテーブルに上半身を乗り出した。
やつが動くと冷房の効いたカフェの温度が上昇するようだ。
筋肉の太い束から熱気が放出される。
「明後日はどっちにしても、この店に張り込んでみるか」
ミズホと俺は勢いよくうなずいた。コーサクはやれやれという顔で、肩をすくめてみせる。
遠藤がいった特徴を満たす男があらわれれば、すぐに今回のクモ男探しは終了になるだろう。
事件というのは、簡単に解決するときには、ほとんど指一本動かす必要もないものだ。
まだ、俺はなにもしていなかったが、それでもいい。
哀れなコーサク。
だがそのときにはやつの羽はクモの巣にすでにからめとられていたのかも知れない。
ここでいる人間のなかで一番ハードな仕事をしているのは、実はコーサクなのかもしれない。
やつはバカみたいにでかいスポーツバックから、のろのろとノートブックパソコンを取り出した。
起動して、メールソフトを立ちあげ、通信履歴を呼び出す。
俺たちのほうにディスプレイを向けるといった。
「ハンドルネームは、ダウンダウンダウン、蓮歌、空の友達。このなかで一番、話の進展が早いのは空の友達かな。今週中に最初のオフ会を開くことになっている」
そのときメールの着信を知らせる電子音が、ちいさなスピーカーから響いた。
コーサクがいった。
「きたよ。空の友達だ。オフ会のスケジュールと場所は……」
顔色をさらに青くしたコーサクは、メールを読むのを途中でやめてしまった。
ミズホが中腰になって液晶をのぞきこんだ。
「なあに、オフ会は六本木ヒルズのカフェ・アウターだって」
俺は壁のあちこちに埋め込まれたプラズマディスプレイに目をやった。
そこに銀色のロゴマークが浮かんでいる。
OUTER。
どうやらおれたちと心中掲示板のスパイダーの趣味はよく似ているらしい。
コーサクが周囲を見回していう。
「そういえばなんだかこの店って、あの世とこの世の中間みたいだね」
天国との境界線にあるカフェ。それとも、そいつは地獄との境だろうか
手帳を開いて、ミズホはいう。
「オフ会に参加する人数は」
コーサクはパソコンの画面をスクロールさせた。
メールを呼び出し、確認する。
「男はぼくと募集者の空の友達をいれて四人、女がふたり。」
全部で六人か。
ヒデが口笛を吹いた。
「そりゃあ、これまでの最多記録だな」
ミズホはきつい視線をヒデに送った。
タンクトップの筋肉男は横をむいて笑ってみせる。
「じゃあ、その三人の男のなかにスパイダーがいるかもしれないんだ」
コーサクはまだ憂鬱そうだった。ぽつりという。
「いるかもしれないし、いないかもしれない。ぼくにはわからない」
ヒデはテーブルに上半身を乗り出した。
やつが動くと冷房の効いたカフェの温度が上昇するようだ。
筋肉の太い束から熱気が放出される。
「明後日はどっちにしても、この店に張り込んでみるか」
ミズホと俺は勢いよくうなずいた。コーサクはやれやれという顔で、肩をすくめてみせる。
遠藤がいった特徴を満たす男があらわれれば、すぐに今回のクモ男探しは終了になるだろう。
事件というのは、簡単に解決するときには、ほとんど指一本動かす必要もないものだ。
まだ、俺はなにもしていなかったが、それでもいい。
哀れなコーサク。
だがそのときにはやつの羽はクモの巣にすでにからめとられていたのかも知れない。