ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
下落合から、六本木に移動した。
元エリートがスパイダーと会ったという六本木ヒルズで、反自殺クラブの打ち合わせがあるのだ。
地下の駐車場から長いエスカレーターをあがり、足元から五十四階建ての森タワーを見上げる。
近すぎてぜんぜん最上階が見えなかった。
フロアガイドを見ても、カフェやレストランだけで数十もある巨大な複合施設だ。
ヒデ、コーサクのふたりと一階のロビーで合流して、地下にある蛍光灯売り場のように明るいカフェにはいった。
天井と壁全体が面発光して、光の繭に包まれた気分。平日の午後なので、主婦ばかりの店のなか、俺たちは壁沿いのテーブルを取った。
真横から青い光を浴びて、宇宙船のカフェテリアのようだ。
ミズホがいった。
「さっき、悠さんを白木先生に紹介してきた。先生はスパイダーには個人的に達成したい自殺者数の目標があるかもしれないって。それを達成したら、きっとスパイダーも自殺しちゃうじゃないかってさ」
ふーっと肩で息を吐いて、ヒデがいった。
「もうさっさとシューダンをやらせて、やつが自殺するのを待つほうが早いな。なんであんなやつが自殺するのを、俺たちがとめなきゃならないんだ」
ミズホはアイスチャイを飲んでいった。
「クラブの会則1を思い出して」
「そいつはなんだ」
コーサクがちいさな声でいう
「その人を自殺者であるまえに、誇りある人だと考えよう」
俺は驚いていった。
「そんな会則をつくっているのか」
ミズホは静かにうなずいた。
「そう、全部で十則あるの。ほかにもあるよ。どんな方法で自殺を図っても、それはその人のせいではなく、自殺という病のためだと考えよう。」
俺の裏探偵家業なんかよりも、このクラブはずっと真剣だった。
「アンタたち、すごいな。」
なんでもないという様子でミズホは首を振った。
「スパイダーがやっていることも、ものすごくスローなスイサイドなのかもしれない。あいつだってできたら助けてあげなくちゃいない迷子にひとりだよ。ねえ、コーサク、次の募集者でんな調子。」
やつはまたひどく気分が悪そうだった。
ぐったりと光る壁に持たれている。
「今も三件同時にメールのやり取りをしてるよ。まだ、そのなかにスパイダーがいるのかどうかはわからない」
俺はやつの顔色をのぞきこんだ。蛍光灯のせいばかりではなく、ひどく青い。
「アンタまだ酒が残ってるのか。だいじょぶか」
コーサクは壁に頭をおしあて、よどんだ視線だけこちらにむけた。
「集団自殺に潜入すると、いつもこんな調子になるんだ。やっぱり志願者たちのネガティブな考え方やムードにすごくひきずられてしまう。立ち直るには時間がかかるよ。もうすぐ死ぬんだって決心した人といっしょに何時間も過ごすんだからさ」
元エリートがスパイダーと会ったという六本木ヒルズで、反自殺クラブの打ち合わせがあるのだ。
地下の駐車場から長いエスカレーターをあがり、足元から五十四階建ての森タワーを見上げる。
近すぎてぜんぜん最上階が見えなかった。
フロアガイドを見ても、カフェやレストランだけで数十もある巨大な複合施設だ。
ヒデ、コーサクのふたりと一階のロビーで合流して、地下にある蛍光灯売り場のように明るいカフェにはいった。
天井と壁全体が面発光して、光の繭に包まれた気分。平日の午後なので、主婦ばかりの店のなか、俺たちは壁沿いのテーブルを取った。
真横から青い光を浴びて、宇宙船のカフェテリアのようだ。
ミズホがいった。
「さっき、悠さんを白木先生に紹介してきた。先生はスパイダーには個人的に達成したい自殺者数の目標があるかもしれないって。それを達成したら、きっとスパイダーも自殺しちゃうじゃないかってさ」
ふーっと肩で息を吐いて、ヒデがいった。
「もうさっさとシューダンをやらせて、やつが自殺するのを待つほうが早いな。なんであんなやつが自殺するのを、俺たちがとめなきゃならないんだ」
ミズホはアイスチャイを飲んでいった。
「クラブの会則1を思い出して」
「そいつはなんだ」
コーサクがちいさな声でいう
「その人を自殺者であるまえに、誇りある人だと考えよう」
俺は驚いていった。
「そんな会則をつくっているのか」
ミズホは静かにうなずいた。
「そう、全部で十則あるの。ほかにもあるよ。どんな方法で自殺を図っても、それはその人のせいではなく、自殺という病のためだと考えよう。」
俺の裏探偵家業なんかよりも、このクラブはずっと真剣だった。
「アンタたち、すごいな。」
なんでもないという様子でミズホは首を振った。
「スパイダーがやっていることも、ものすごくスローなスイサイドなのかもしれない。あいつだってできたら助けてあげなくちゃいない迷子にひとりだよ。ねえ、コーサク、次の募集者でんな調子。」
やつはまたひどく気分が悪そうだった。
ぐったりと光る壁に持たれている。
「今も三件同時にメールのやり取りをしてるよ。まだ、そのなかにスパイダーがいるのかどうかはわからない」
俺はやつの顔色をのぞきこんだ。蛍光灯のせいばかりではなく、ひどく青い。
「アンタまだ酒が残ってるのか。だいじょぶか」
コーサクは壁に頭をおしあて、よどんだ視線だけこちらにむけた。
「集団自殺に潜入すると、いつもこんな調子になるんだ。やっぱり志願者たちのネガティブな考え方やムードにすごくひきずられてしまう。立ち直るには時間がかかるよ。もうすぐ死ぬんだって決心した人といっしょに何時間も過ごすんだからさ」