ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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雑司ヶ谷の自殺未遂事件は、朝一のニュースから盛んに流れていた。
扱いは集団自殺の成功事例よりはずっとちいさかった。
マスコミではいつも悪いニュースが売れるニュースなのだ。白木院長は同じ微笑のままうなずいた。
「おめでとう。また、ボーナスをあげなくちゃね。ヒデくんとコーサクくんは元気」
うなずくとミズホは昨夜墓地でしいれた心中掲示板のクモ男について話し始めた。とくに最後に遠藤がいっていたネタを丁寧に説明する。
自分自身もいつか自殺する、それまでのボランティアってやつだ。
黙って聞いていた院長はいう。
「それでは確かに愉快犯やいわゆる快楽殺人とは違うようね。私たちの相手はもしかすると善意の人なのかもしれない。スイサイドを耐えがたい心の痛みを終わらせるための手段と考えている。ならば、この人は取り乱して証拠を残したり、自分のよろこびに酔って失策する可能性は少なくなる。理性的に行動できて、自分がやっていることをよくわかっているから」
美人の院長のいうとおりだった。
クモの目に怒りや憎しみ、最低でも酩酊があるなら相手としてはまだ簡単なのだ。
だが、そこにある種の善意があったとするととたんに人物像は複雑になる。
理性的で善意の第三者には、プロファイリングなんてきかないのだ。
普通の人間の統計など、CIAだってもっているはずがない。
俺は気になっていたことを質問した。
「このクリニックは大成功しているみたいだし、お世辞ではなく院長は魅力的だと思います。どうして反自殺クラブに協力なんかするんですか。リスクがありすぎると思うけど」
また仮面のような微笑で、白木院長はいった。
「経済的な成功はすぐに慣れてしまうものよ。私がいなくなっても、このクリニックはちゃんと運営されていくでしょうしね。心療内科の医師にとって最悪の事態は、自分の患者にスイサイドされることなの。私も若いころから、何人ものクライアントにスイサイドされた。それは今でも心の傷になって残っている。いつか自分が成功して、人を助けられるくらいの余裕ができたら、希死念慮をめつ人のために自分にできることをしよう。そう思っていたときに、ミズホさんと会った。私たちがひとつのチームになるまで、そう時間はかからなかった」
俺は医師の仕事の大変さを思った。
俺がもしリッカの店でまずいスイカを売っても、せいぜい客が金返せと怒鳴り込んでくるくらいのものだ。
だが、心療内科ではそうはいかないのだろう。
「知らなかった。俺、医者って若いのにポルシェにのって、看護師と遊んでばかりいるボンボンの仕事だと思っていた。知り合いの医者は採血ばかりするし…」
白木院長の微笑が少しだけ大きくなった。
扱いは集団自殺の成功事例よりはずっとちいさかった。
マスコミではいつも悪いニュースが売れるニュースなのだ。白木院長は同じ微笑のままうなずいた。
「おめでとう。また、ボーナスをあげなくちゃね。ヒデくんとコーサクくんは元気」
うなずくとミズホは昨夜墓地でしいれた心中掲示板のクモ男について話し始めた。とくに最後に遠藤がいっていたネタを丁寧に説明する。
自分自身もいつか自殺する、それまでのボランティアってやつだ。
黙って聞いていた院長はいう。
「それでは確かに愉快犯やいわゆる快楽殺人とは違うようね。私たちの相手はもしかすると善意の人なのかもしれない。スイサイドを耐えがたい心の痛みを終わらせるための手段と考えている。ならば、この人は取り乱して証拠を残したり、自分のよろこびに酔って失策する可能性は少なくなる。理性的に行動できて、自分がやっていることをよくわかっているから」
美人の院長のいうとおりだった。
クモの目に怒りや憎しみ、最低でも酩酊があるなら相手としてはまだ簡単なのだ。
だが、そこにある種の善意があったとするととたんに人物像は複雑になる。
理性的で善意の第三者には、プロファイリングなんてきかないのだ。
普通の人間の統計など、CIAだってもっているはずがない。
俺は気になっていたことを質問した。
「このクリニックは大成功しているみたいだし、お世辞ではなく院長は魅力的だと思います。どうして反自殺クラブに協力なんかするんですか。リスクがありすぎると思うけど」
また仮面のような微笑で、白木院長はいった。
「経済的な成功はすぐに慣れてしまうものよ。私がいなくなっても、このクリニックはちゃんと運営されていくでしょうしね。心療内科の医師にとって最悪の事態は、自分の患者にスイサイドされることなの。私も若いころから、何人ものクライアントにスイサイドされた。それは今でも心の傷になって残っている。いつか自分が成功して、人を助けられるくらいの余裕ができたら、希死念慮をめつ人のために自分にできることをしよう。そう思っていたときに、ミズホさんと会った。私たちがひとつのチームになるまで、そう時間はかからなかった」
俺は医師の仕事の大変さを思った。
俺がもしリッカの店でまずいスイカを売っても、せいぜい客が金返せと怒鳴り込んでくるくらいのものだ。
だが、心療内科ではそうはいかないのだろう。
「知らなかった。俺、医者って若いのにポルシェにのって、看護師と遊んでばかりいるボンボンの仕事だと思っていた。知り合いの医者は採血ばかりするし…」
白木院長の微笑が少しだけ大きくなった。