ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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夏草とセミの鳴き声をかき分けて、マーチに戻った。
帰る途中で、コーサクが救急に電話を入れる。
集団自殺の車両を発見した。
場所は雑司ヶ谷霊園といって、自分の名前も告げずに切ってしまう。
照れたようにいった。
「なんだかうちのクラブ活動って、すごく原始的でしょ。あと十五分もすれば、救急車がレンタカーを見つけるから。」
俺はうしろに振り向いた。
明治通りの後方をヒデのハーレーがV型エンジン特有の心臓のような排気音をあげてついてくる。
俺が手振るとやつも左手の親指を立てた。
俺はコーサクにいった。
「悪くなかったよ。アンタ達三人のチームワークは抜群だ。今夜だって死にかけたふたりの人間を救った。」
ミズホは運転席で前方を見つめたままいった。
「でも、自殺する人間は毎日百人もいる。私たちはなにやってるのかな。砂漠で砂をすくうよな仕事だって、ときどき思うよ。」
俺は窓の外を見た。
二十四時間営業の肉のハナマサの店内がまぶしかった。
「なんでも数にするなよ」
そうなのだ。すべてを統計に還元するのは、俺たち現代人の悪い癖だ。
「今夜は確かにふたりだけかもしれない。だけど、あいつらの親や友人の悲しみをなくしたのはアンタたちだし、あの二人がいつかつくるかもしれない家族のことを考えたら、新しい命を何人も助けてるかもしれない。命ってひとつじゃないだろ」
それは無限に広がって、すべての命とつながる可能性だってある。
だから命は尊いのだ。
それはひとつで、すべてなのだ。
ミズホが静かにいった。
「ありがと、悠さん。なんだか話をするたびにちょっと元気になるよ。悠さんはカウンセラーなんかにもむいていたかもしれないね。」
コーサクはサイドウインドウに額を押しあてて、流れる街の灯を見ていた。
しばらく無言になる。
びっくりガードを左折して、ミズホが思い出したようにいった。
「そうだ。明日、時間あるかな。ちょっとあわせたい人がいるんだけど」
俺はシートを深く倒して、夜の積乱雲を眺めていた。灰色に沸き上がる豪勢な夏の雲だ。
「誰」
「昼に話した私たちの協力者」
わかったといって、俺は目を閉じた。
真桜はこの数ヵ月俺が退屈そうにしていたのを知っているから、翌日の午後はあっさりと自由にしてくれた。
どうも健康な青少年がくすぶっているのは、まずいと考えているようだ。
昼すぎマーチが家の前にとまると、ノースリーブの城シャツ姿のミズホが顔をだした。
歩道に立つ俺にではなく、打ち水をしている真桜にいう。
「こんにちは。昨日は遅くにごめんね。また、悠さん借りてくね。」
そのとき俺は恐ろしいものを見た。
真桜がほっこりと微笑んでるのだ。
「こいつは奥手で、鈍感だけど、よろしく頼むなの」
俺は黙って助手席に乗り込んだ。
恐怖でまだ全身が硬直している。
「良くできた妹さんだね」
「妹じゃないよ。いいからすぐに車を出してくれ。」
ミズホは華やかに笑って、マーチを転がした。
帰る途中で、コーサクが救急に電話を入れる。
集団自殺の車両を発見した。
場所は雑司ヶ谷霊園といって、自分の名前も告げずに切ってしまう。
照れたようにいった。
「なんだかうちのクラブ活動って、すごく原始的でしょ。あと十五分もすれば、救急車がレンタカーを見つけるから。」
俺はうしろに振り向いた。
明治通りの後方をヒデのハーレーがV型エンジン特有の心臓のような排気音をあげてついてくる。
俺が手振るとやつも左手の親指を立てた。
俺はコーサクにいった。
「悪くなかったよ。アンタ達三人のチームワークは抜群だ。今夜だって死にかけたふたりの人間を救った。」
ミズホは運転席で前方を見つめたままいった。
「でも、自殺する人間は毎日百人もいる。私たちはなにやってるのかな。砂漠で砂をすくうよな仕事だって、ときどき思うよ。」
俺は窓の外を見た。
二十四時間営業の肉のハナマサの店内がまぶしかった。
「なんでも数にするなよ」
そうなのだ。すべてを統計に還元するのは、俺たち現代人の悪い癖だ。
「今夜は確かにふたりだけかもしれない。だけど、あいつらの親や友人の悲しみをなくしたのはアンタたちだし、あの二人がいつかつくるかもしれない家族のことを考えたら、新しい命を何人も助けてるかもしれない。命ってひとつじゃないだろ」
それは無限に広がって、すべての命とつながる可能性だってある。
だから命は尊いのだ。
それはひとつで、すべてなのだ。
ミズホが静かにいった。
「ありがと、悠さん。なんだか話をするたびにちょっと元気になるよ。悠さんはカウンセラーなんかにもむいていたかもしれないね。」
コーサクはサイドウインドウに額を押しあてて、流れる街の灯を見ていた。
しばらく無言になる。
びっくりガードを左折して、ミズホが思い出したようにいった。
「そうだ。明日、時間あるかな。ちょっとあわせたい人がいるんだけど」
俺はシートを深く倒して、夜の積乱雲を眺めていた。灰色に沸き上がる豪勢な夏の雲だ。
「誰」
「昼に話した私たちの協力者」
わかったといって、俺は目を閉じた。
真桜はこの数ヵ月俺が退屈そうにしていたのを知っているから、翌日の午後はあっさりと自由にしてくれた。
どうも健康な青少年がくすぶっているのは、まずいと考えているようだ。
昼すぎマーチが家の前にとまると、ノースリーブの城シャツ姿のミズホが顔をだした。
歩道に立つ俺にではなく、打ち水をしている真桜にいう。
「こんにちは。昨日は遅くにごめんね。また、悠さん借りてくね。」
そのとき俺は恐ろしいものを見た。
真桜がほっこりと微笑んでるのだ。
「こいつは奥手で、鈍感だけど、よろしく頼むなの」
俺は黙って助手席に乗り込んだ。
恐怖でまだ全身が硬直している。
「良くできた妹さんだね」
「妹じゃないよ。いいからすぐに車を出してくれ。」
ミズホは華やかに笑って、マーチを転がした。