ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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「黙れ、俺は女を殴りたくないが、黙らないならいつでもやるぞ」
ミズホがやってきて、もう片方の後部座席のドアを開けた。
「お疲れ、コーサク」
コーサクは震えながらうなずき、シートを降りてきた。
近くの草むらまでふらふらと歩き、吐いている。口を拭きながら戻ってくるといった。
「イソミタールとブロバリンを、ウオッカで流し込んでる。話を聞く時間はちょっとしかないよ」
俺はその時なつかしいにおいをかいだ。
枯葉の燃えるような匂いだ。イプサムをのぞきこむ。助手席の足元には、真っ赤に炎をあげる練炭の入った七輪が見えた。
車内はかなりの熱気だった。
黒い炭から透明な赤の火が噴き出している。地獄の業火のひとすくいだ。
俺がぼんやりしていると、ヒデが俺の肩をたたいた。
振り向くと汗だくの顔が笑っていた。
「今回はうまくいった。まあ、いつもこんなに快調なんてことは無いんだけどな」
やつは軍パンの尻ポケットから携帯を抜いた。そこでようやく呼び出しのバイブを停止する。
俺には一時間にも感じられたが、ヒデが走りだしてまだほんの二十秒足らずの時間しかたっていなかった。
ミズホは女を、ヒデは男を引き立てて、イプサムを離れた。
霊園の中に連れ込む。
睡眠導入剤とウオッカの最悪のコンビネーションは、こんなにも危機的な状況の中でも強力だった。
夏草にころがすころには、ふたりとも足元がふらついていた。
男の頬を音を立てて平手打ちして、ヒデがいった。
「黒いシェルパってハンドルネームのやつに、お前はあっているのか」
返事をする前に、逆の頬を打った。
「黒いシェルパ、やつはどんな人間だった。」
また返事をする前に打つ。
コーサクが小さな声で俺にいった。
「眠らせないためだよ。待っているより、こっちの方が口を割るのが早いんだ。」
幽霊みたいな顔色のコーサクに聞いた。
「黒いなんとかって、今回のクモ男のハンドルネームなのか。」
コーサクがうなずくときれいな坊っちゃん刈りが揺れた。
顔色がさらにひどくなる。
「どうしたんだ。おまえも眠剤とアルコールのカクテルをやったのか」
あわてて首を横に振り、やつはいった。
「薬は飲むふりをして捨てた。でもウォッカはそういう訳にもいかなくて、ひとくち飲んだんだ。僕はお酒がぜんぜんだめなんだけど。クモは今回自分が募集者にならなかったんだ。そこにいる会社員のひと、遠藤さんっていうんだけど、その人が募集をかけていて、その人に集団自殺の方法を教えて、眠剤なんかをわたしてやったらしい。ぼくは最後までスパイダーに会えなかった。」
ヒデはその間にも、一定の強さで遠藤を殴り続けていた。
合いの手のように黒いシェルパについて質問している。六発目か七発目で、生まじめそうなサラリーマンがいった。
「もう目は覚めた。お願いだから、たたかないでくれ。」
ヒデは手を振り上げたままいった。
「黒いシェルパに会ったのか」
ノーネクタイでペンシルストライプのスーツを着た男が、うなずいて口を開いた。
一度話しはじめると、遠藤の言葉は止まらなくなった。
眠剤には自己抑制を吹き飛ばす力があるのだろうか。
それともこの異常な状況とヒデの暴力のせいか。どちらにしろ心中掲示板の呼び掛け人は、夏の夜のセミに負けないくらいのハイテンションだった。
口からよだれを垂らしながら、喋りつづける。
ミズホがやってきて、もう片方の後部座席のドアを開けた。
「お疲れ、コーサク」
コーサクは震えながらうなずき、シートを降りてきた。
近くの草むらまでふらふらと歩き、吐いている。口を拭きながら戻ってくるといった。
「イソミタールとブロバリンを、ウオッカで流し込んでる。話を聞く時間はちょっとしかないよ」
俺はその時なつかしいにおいをかいだ。
枯葉の燃えるような匂いだ。イプサムをのぞきこむ。助手席の足元には、真っ赤に炎をあげる練炭の入った七輪が見えた。
車内はかなりの熱気だった。
黒い炭から透明な赤の火が噴き出している。地獄の業火のひとすくいだ。
俺がぼんやりしていると、ヒデが俺の肩をたたいた。
振り向くと汗だくの顔が笑っていた。
「今回はうまくいった。まあ、いつもこんなに快調なんてことは無いんだけどな」
やつは軍パンの尻ポケットから携帯を抜いた。そこでようやく呼び出しのバイブを停止する。
俺には一時間にも感じられたが、ヒデが走りだしてまだほんの二十秒足らずの時間しかたっていなかった。
ミズホは女を、ヒデは男を引き立てて、イプサムを離れた。
霊園の中に連れ込む。
睡眠導入剤とウオッカの最悪のコンビネーションは、こんなにも危機的な状況の中でも強力だった。
夏草にころがすころには、ふたりとも足元がふらついていた。
男の頬を音を立てて平手打ちして、ヒデがいった。
「黒いシェルパってハンドルネームのやつに、お前はあっているのか」
返事をする前に、逆の頬を打った。
「黒いシェルパ、やつはどんな人間だった。」
また返事をする前に打つ。
コーサクが小さな声で俺にいった。
「眠らせないためだよ。待っているより、こっちの方が口を割るのが早いんだ。」
幽霊みたいな顔色のコーサクに聞いた。
「黒いなんとかって、今回のクモ男のハンドルネームなのか。」
コーサクがうなずくときれいな坊っちゃん刈りが揺れた。
顔色がさらにひどくなる。
「どうしたんだ。おまえも眠剤とアルコールのカクテルをやったのか」
あわてて首を横に振り、やつはいった。
「薬は飲むふりをして捨てた。でもウォッカはそういう訳にもいかなくて、ひとくち飲んだんだ。僕はお酒がぜんぜんだめなんだけど。クモは今回自分が募集者にならなかったんだ。そこにいる会社員のひと、遠藤さんっていうんだけど、その人が募集をかけていて、その人に集団自殺の方法を教えて、眠剤なんかをわたしてやったらしい。ぼくは最後までスパイダーに会えなかった。」
ヒデはその間にも、一定の強さで遠藤を殴り続けていた。
合いの手のように黒いシェルパについて質問している。六発目か七発目で、生まじめそうなサラリーマンがいった。
「もう目は覚めた。お願いだから、たたかないでくれ。」
ヒデは手を振り上げたままいった。
「黒いシェルパに会ったのか」
ノーネクタイでペンシルストライプのスーツを着た男が、うなずいて口を開いた。
一度話しはじめると、遠藤の言葉は止まらなくなった。
眠剤には自己抑制を吹き飛ばす力があるのだろうか。
それともこの異常な状況とヒデの暴力のせいか。どちらにしろ心中掲示板の呼び掛け人は、夏の夜のセミに負けないくらいのハイテンションだった。
口からよだれを垂らしながら、喋りつづける。