ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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雑司ヶ谷霊園は、都心のまんなかにある巨大な墓所だ。
広さは十一万平方メートルにもある。
なぜか作家の墓が多くて、夏目漱石、永井荷風、泉鏡花、小泉八雲なんかもあそこに眠っている。
ぶらぶらと散歩してみるとけっこう面白い所だ。宗派は無いので、十字架のついた墓石もある。
霊園を抜ける公道の端にミズホが黒いマーチを止めた。
夏の夜でもセミの鳴き声は盛大で、墓石のはるか向こうに七色のライトをてっぺんにともしたサンシャイン60が、未来の超高層ビルみたいにそびえていた。
草を分ける音がして振り向くと、迷彩服のヒデが立っていた。
「こっちだ。すぐに突入する。来てくれ」
そこで俺とミズホはヒデのあとをついて、夏草のにおいのする墓所を腰をおって歩いていった。
広大な墓地の中を突っ切って、反対側の道路に出る。
斎場に近い幅の広い道路だ。
ヒデがしゃがみこんで、墓石の陰からソメイヨシノの枝のしたにとまっているトヨタ・イブサムをのぞきこんだ。
俺たちもやつの背後に腰を落とす。
ヒデは山のような僧帽筋越しにいった。
「そろそろ決行の時間だ。もうすぐ夜中の二時になる。なんで、ネットをうろつく奴って、丑三つ時なんて言葉に弱いんだろうな。」
俺は桜の枝で半分隠れたワゴン車を見つめていた。パールホワイトの車体が、内側から白く輝くようだった。
ミズホがいう。
「今回はもっとスパイダーの情報が欲しい。ヒデ、やりすぎないでね」
「ああ、わかった。」
押し殺すようにそういった奴の背中が震えていた。ヒデは軍パンの横についたポケットからなにかをゆっくりと抜きだした。
先端には直径三センチほどの鋼鉄がついている。特殊警棒だ。
静かにのばすとカチッと精密な音がして、警棒の長さは五十センチほどになった。
この筋肉マンがこんなものを振り回したら、人の頭蓋骨などコーヒーカップの受け皿のように簡単に砕けるだろう。
「いつもそんなもんつかってるのか」
ヒデはこっちを振り向いた。
「ああ、いつもだ。なんなら、予備を一本化してやろうか。」
俺が激しく首を振ると同時に、ヒデの携帯がうなりだした。
やつは黙って立ち上がり、イプサムにむけて走りだす。背中が汗で光っていた。
ミズホも俺のうしろからかけていく。
俺はあわてて、白く輝くワゴン車に向けて三十メートルほどの距離を詰めた。
誰かの吠え声が真夜中の墓地に響いていた。
ヒデが走りながら、吼えているのだ。
やつは隠すことなく、特殊警棒を振り上げていた。
イプサムから動きは無い。
俺がミズホを追い抜き、あと数歩で車に着くところで、ヒデの特殊警棒が運転席のウインドウにぶち当たった。
鋭い破裂音のあとで、水をまくようにガラスの破片がドアから飛び散った。
グローブをしたヒデの右腕が窓枠にのびて、ドアロックを解除する。
ヒデは爆発的にドアを開くと、中に座った三十代の痩せた男を外に引きずり出した。
のろのろと反応の無い男のわき腹をジャングルブーツで蹴りあげる。
ヒデはそのまま時計回りにつぎつぎとサイドウインドウをたたき割っていった。
女の悲鳴が聞こえた。
広大な霊園の中、セミの鳴き声だけが返事する。
「やめてー、やめてー」
後頭部座席に座る自殺志願者の女を見た。
十代後半、顔色は月明かりのせいか青白いけど、案外かわいい女の子だ。
自殺の理由なんか想像もできない。
ヒデはパニックになって叫び続ける彼女の口を押さえた。
広さは十一万平方メートルにもある。
なぜか作家の墓が多くて、夏目漱石、永井荷風、泉鏡花、小泉八雲なんかもあそこに眠っている。
ぶらぶらと散歩してみるとけっこう面白い所だ。宗派は無いので、十字架のついた墓石もある。
霊園を抜ける公道の端にミズホが黒いマーチを止めた。
夏の夜でもセミの鳴き声は盛大で、墓石のはるか向こうに七色のライトをてっぺんにともしたサンシャイン60が、未来の超高層ビルみたいにそびえていた。
草を分ける音がして振り向くと、迷彩服のヒデが立っていた。
「こっちだ。すぐに突入する。来てくれ」
そこで俺とミズホはヒデのあとをついて、夏草のにおいのする墓所を腰をおって歩いていった。
広大な墓地の中を突っ切って、反対側の道路に出る。
斎場に近い幅の広い道路だ。
ヒデがしゃがみこんで、墓石の陰からソメイヨシノの枝のしたにとまっているトヨタ・イブサムをのぞきこんだ。
俺たちもやつの背後に腰を落とす。
ヒデは山のような僧帽筋越しにいった。
「そろそろ決行の時間だ。もうすぐ夜中の二時になる。なんで、ネットをうろつく奴って、丑三つ時なんて言葉に弱いんだろうな。」
俺は桜の枝で半分隠れたワゴン車を見つめていた。パールホワイトの車体が、内側から白く輝くようだった。
ミズホがいう。
「今回はもっとスパイダーの情報が欲しい。ヒデ、やりすぎないでね」
「ああ、わかった。」
押し殺すようにそういった奴の背中が震えていた。ヒデは軍パンの横についたポケットからなにかをゆっくりと抜きだした。
先端には直径三センチほどの鋼鉄がついている。特殊警棒だ。
静かにのばすとカチッと精密な音がして、警棒の長さは五十センチほどになった。
この筋肉マンがこんなものを振り回したら、人の頭蓋骨などコーヒーカップの受け皿のように簡単に砕けるだろう。
「いつもそんなもんつかってるのか」
ヒデはこっちを振り向いた。
「ああ、いつもだ。なんなら、予備を一本化してやろうか。」
俺が激しく首を振ると同時に、ヒデの携帯がうなりだした。
やつは黙って立ち上がり、イプサムにむけて走りだす。背中が汗で光っていた。
ミズホも俺のうしろからかけていく。
俺はあわてて、白く輝くワゴン車に向けて三十メートルほどの距離を詰めた。
誰かの吠え声が真夜中の墓地に響いていた。
ヒデが走りながら、吼えているのだ。
やつは隠すことなく、特殊警棒を振り上げていた。
イプサムから動きは無い。
俺がミズホを追い抜き、あと数歩で車に着くところで、ヒデの特殊警棒が運転席のウインドウにぶち当たった。
鋭い破裂音のあとで、水をまくようにガラスの破片がドアから飛び散った。
グローブをしたヒデの右腕が窓枠にのびて、ドアロックを解除する。
ヒデは爆発的にドアを開くと、中に座った三十代の痩せた男を外に引きずり出した。
のろのろと反応の無い男のわき腹をジャングルブーツで蹴りあげる。
ヒデはそのまま時計回りにつぎつぎとサイドウインドウをたたき割っていった。
女の悲鳴が聞こえた。
広大な霊園の中、セミの鳴き声だけが返事する。
「やめてー、やめてー」
後頭部座席に座る自殺志願者の女を見た。
十代後半、顔色は月明かりのせいか青白いけど、案外かわいい女の子だ。
自殺の理由なんか想像もできない。
ヒデはパニックになって叫び続ける彼女の口を押さえた。