ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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梅雨が終わる前から気温が三十五度なんて、東京の夏はいよいよ壊れていくようだ。
俺は西一番街の果物屋の奥に座り、扇風機の熱風に吹かれていた。
俺はただの暇潰しで遊びに来ているだけなんだが、ここでバイトしている梓はカラータイルの歩道に水をまいていた。
だが、はやまわしのフィルムのように見る間に乾いていく。
残るのは摂氏五十度、湿度百パーセントの不快な空気の固まりだけだ。
スポーツ新聞を読めば、また東京のどこかで集団自殺のニュース。
記事はシンプルで、面積もわずか。
このところ毎週のように集団自殺があるので、ニュースバリューがだんだん低下しているのだろう。
江東区の埋立地で早朝に発見されたワゴン車のなかから、三人の遺体を発見。
通報者は近所に住む住民で、犬の散歩中だったという。
助手席の足元には練炭の入った七輪。
自殺はいまやレトロな手法がブームなのだろう。
みんなが昔なつかしの練炭をつかいたがる。
俺は新聞から目をあげて、熱気に揺らめく池袋の駅前を眺めた。
この蜃気楼のむこうから絶世の美女でも現れてくれないものだろうか。
ふたり空飛ぶじゅうたんにでものって、どこかの高原にいくのだ。
そこでアダムとイブになり、禁断の木の実を食いまくる。
なんか「禁断」という言葉ひとつだけでもいい気分だな。
「この店に小鳥遊悠というやつはいるか」
真昼の夢から目覚めて、顔をあげた。
今度は現実の悪夢が目の前に立っている。
そいつは小山のようにでかい軍服男だった。
したは米軍放出品のカーキのパンツに、黒い編み上げジャングルブーツ。
汗の滴をびっしりと浮かべた上半身は、同じカーキのタンクトップ一枚。
身長は百九十センチくらいあるだろうか。
縦も横も金剛に似た規格外の男。
長い金髪をたてがみのように垂らして、はるか上空から俺を見下ろしてくる。
装身具は左の耳にとよのかイチゴほどある大粒の銀のピアス(確かシルヴァークロスとかいうブランド)が下がっているだけ。
「小鳥遊悠はいないのか」
おれがぼんやりしているとやつはもう一度そういった。
ここはやっぱり他人の振りをしておくべきだな。
六花と梓にアイコンタクトしようとすると巨体のわきから、リスのように顔をのぞかせた女がいる。
全盛期の小泉今日子みたいなとがったあごと明るい瞳。彼女も醒めた声でいう。
「小鳥遊悠さんが、この店によくいるってきいたんだけど、知りませんか。」
俺は暑さでぼけたアホ面に、精いっぱいの笑顔を浮かべ女にいった。
「ユウは俺だけど、なんの用」
女と男は高低差のある顔を見合わせた。(だいじょうぶなの、この人)。
悲しいが、俺にも他人の表情くらい読む力はある。
それは俺に会ったやつが、いつも最初に浮かべる表情なのだ。
繊細である俺は、心の奥で深く傷ついた。
俺は西一番街の果物屋の奥に座り、扇風機の熱風に吹かれていた。
俺はただの暇潰しで遊びに来ているだけなんだが、ここでバイトしている梓はカラータイルの歩道に水をまいていた。
だが、はやまわしのフィルムのように見る間に乾いていく。
残るのは摂氏五十度、湿度百パーセントの不快な空気の固まりだけだ。
スポーツ新聞を読めば、また東京のどこかで集団自殺のニュース。
記事はシンプルで、面積もわずか。
このところ毎週のように集団自殺があるので、ニュースバリューがだんだん低下しているのだろう。
江東区の埋立地で早朝に発見されたワゴン車のなかから、三人の遺体を発見。
通報者は近所に住む住民で、犬の散歩中だったという。
助手席の足元には練炭の入った七輪。
自殺はいまやレトロな手法がブームなのだろう。
みんなが昔なつかしの練炭をつかいたがる。
俺は新聞から目をあげて、熱気に揺らめく池袋の駅前を眺めた。
この蜃気楼のむこうから絶世の美女でも現れてくれないものだろうか。
ふたり空飛ぶじゅうたんにでものって、どこかの高原にいくのだ。
そこでアダムとイブになり、禁断の木の実を食いまくる。
なんか「禁断」という言葉ひとつだけでもいい気分だな。
「この店に小鳥遊悠というやつはいるか」
真昼の夢から目覚めて、顔をあげた。
今度は現実の悪夢が目の前に立っている。
そいつは小山のようにでかい軍服男だった。
したは米軍放出品のカーキのパンツに、黒い編み上げジャングルブーツ。
汗の滴をびっしりと浮かべた上半身は、同じカーキのタンクトップ一枚。
身長は百九十センチくらいあるだろうか。
縦も横も金剛に似た規格外の男。
長い金髪をたてがみのように垂らして、はるか上空から俺を見下ろしてくる。
装身具は左の耳にとよのかイチゴほどある大粒の銀のピアス(確かシルヴァークロスとかいうブランド)が下がっているだけ。
「小鳥遊悠はいないのか」
おれがぼんやりしているとやつはもう一度そういった。
ここはやっぱり他人の振りをしておくべきだな。
六花と梓にアイコンタクトしようとすると巨体のわきから、リスのように顔をのぞかせた女がいる。
全盛期の小泉今日子みたいなとがったあごと明るい瞳。彼女も醒めた声でいう。
「小鳥遊悠さんが、この店によくいるってきいたんだけど、知りませんか。」
俺は暑さでぼけたアホ面に、精いっぱいの笑顔を浮かべ女にいった。
「ユウは俺だけど、なんの用」
女と男は高低差のある顔を見合わせた。(だいじょうぶなの、この人)。
悲しいが、俺にも他人の表情くらい読む力はある。
それは俺に会ったやつが、いつも最初に浮かべる表情なのだ。
繊細である俺は、心の奥で深く傷ついた。