ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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俺も元暴走族で美術愛好家の役は止めた。
「やっと普通に話せるようになったみたいだな。」
エリーは俺のほうにまともに紫煙を吐き出した。お行儀の悪いヴィーナス。
悠なら切れてるぞ。
「なに、それ。もうどうでもいいよ。今クーリングオフの書類持ってくるから。」
再びタバコをもみ消した女に俺はいった。
「まだクーリングオフするなんていってないだろ。ここにいるキヨヒコは、アンタがどういうつもりでこんな絵を売っているのか、そいつが知りたいんだそうだ。」
中腰になったエリーはまた席にもどった。
きつく眉をひそめ、口をとがらせた。
「あんたたちのいってること、意味がぜんぜんわからないよ。」
俺の仕事はそこまでだった。
徹底的に揺さぶりをかけて、女が地のキャンバスをさらすまで。
あとはキヨヒコが話せばいい。
だが、やつは目を伏せて黙っているだけだった。
しかたなく俺はいった。
「アンダがガキのころ貧しくて、美大の受験をあきらめたのは、ほんとうなのか」
ふてくされて横を向いたままエリーはいう。
「そうだけど、それがどうしたの」
俺はキヨヒコの耳元でささやいた。
「ここからはよく見ておけ。敵はまた演技をするかもしれない。」
尋問官にでもなったようだった。俺はまったく感情を交えずにいう。
「じゃあ、弟の学費を出しているというのは、どうなんだ。」
エリーは三本目に火をつけた。いまいましげにいう。
「だしてるよ。あの子は学校にもいかずに、遊んでるみたいだけど。でも、そんなのはめずらしい話じゃないだろ」
ぎらぎらした目で俺たちを見ると、煙とともに言葉を吐いた。
「アンタたち、そんなに貧乏がおもしろいの。なら、きかせてあげるよ。」
エリーはチェーンスモーキングしながら話し続けた。
「タクシーの運転手をしていたうちのオヤジがガンになったのは、私が中二のときだった。肝臓ガンの末期だよ。もともと女好きで、ろくでもない男だったけど、母親はそれよりもっとひどかった。よくテレビなんかで、ガンの闘病記をやるだろ。家族が力をあわせて、病気と闘うなんてやつ。あれはみんな幸せな家の話なんだ。うちの場合は小学生の弟と私を残して、母親はどこかにバックレた。あんな男の看病する気もないし、助からないようなやつの側にいてもしかたない。そう思ったんじゃないかな、あの女。末期のオヤジも子供二人も平気で捨てていったんだ。それでわが家に病気と貧しさが津波みたいに襲ってきた。高校の昼食は豪勢なときで、牛乳と菓子パンひとつ。金がないときは学校の水道飲み放題。好きな絵はあきらめた。高校をでて普通の会社で働いたけど、自分の暮らしを立てて、弟の学費を稼げるような給料なんて、もらえるはずもなかった。でも、私は身体を売るのも、水商売も嫌だった。母親が水商売あがりだっていうのもあってさ。そんなときに声をかけられたんだよ。アンタの容姿なら、月に五十は固いって」
「やっと普通に話せるようになったみたいだな。」
エリーは俺のほうにまともに紫煙を吐き出した。お行儀の悪いヴィーナス。
悠なら切れてるぞ。
「なに、それ。もうどうでもいいよ。今クーリングオフの書類持ってくるから。」
再びタバコをもみ消した女に俺はいった。
「まだクーリングオフするなんていってないだろ。ここにいるキヨヒコは、アンタがどういうつもりでこんな絵を売っているのか、そいつが知りたいんだそうだ。」
中腰になったエリーはまた席にもどった。
きつく眉をひそめ、口をとがらせた。
「あんたたちのいってること、意味がぜんぜんわからないよ。」
俺の仕事はそこまでだった。
徹底的に揺さぶりをかけて、女が地のキャンバスをさらすまで。
あとはキヨヒコが話せばいい。
だが、やつは目を伏せて黙っているだけだった。
しかたなく俺はいった。
「アンダがガキのころ貧しくて、美大の受験をあきらめたのは、ほんとうなのか」
ふてくされて横を向いたままエリーはいう。
「そうだけど、それがどうしたの」
俺はキヨヒコの耳元でささやいた。
「ここからはよく見ておけ。敵はまた演技をするかもしれない。」
尋問官にでもなったようだった。俺はまったく感情を交えずにいう。
「じゃあ、弟の学費を出しているというのは、どうなんだ。」
エリーは三本目に火をつけた。いまいましげにいう。
「だしてるよ。あの子は学校にもいかずに、遊んでるみたいだけど。でも、そんなのはめずらしい話じゃないだろ」
ぎらぎらした目で俺たちを見ると、煙とともに言葉を吐いた。
「アンタたち、そんなに貧乏がおもしろいの。なら、きかせてあげるよ。」
エリーはチェーンスモーキングしながら話し続けた。
「タクシーの運転手をしていたうちのオヤジがガンになったのは、私が中二のときだった。肝臓ガンの末期だよ。もともと女好きで、ろくでもない男だったけど、母親はそれよりもっとひどかった。よくテレビなんかで、ガンの闘病記をやるだろ。家族が力をあわせて、病気と闘うなんてやつ。あれはみんな幸せな家の話なんだ。うちの場合は小学生の弟と私を残して、母親はどこかにバックレた。あんな男の看病する気もないし、助からないようなやつの側にいてもしかたない。そう思ったんじゃないかな、あの女。末期のオヤジも子供二人も平気で捨てていったんだ。それでわが家に病気と貧しさが津波みたいに襲ってきた。高校の昼食は豪勢なときで、牛乳と菓子パンひとつ。金がないときは学校の水道飲み放題。好きな絵はあきらめた。高校をでて普通の会社で働いたけど、自分の暮らしを立てて、弟の学費を稼げるような給料なんて、もらえるはずもなかった。でも、私は身体を売るのも、水商売も嫌だった。母親が水商売あがりだっていうのもあってさ。そんなときに声をかけられたんだよ。アンタの容姿なら、月に五十は固いって」