ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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「でも、桐山さん、ジョナサン・ディヴィスは、他にもいい作品がたくさんありますから。今泉さんの物ではなく、別な新作をお探しになってはいかがでしょうか。もう一度ご案内しますよ。」
新しいカモを何とか誘い込もうと必死だった。俺は口から出まかせをいう。
こういうのが大好きなんだ。
「俺昔、暴走族をやっててさ、そのころ付き合っていた女がこの絵にそっくりなんだ。」
俺は白いビキニの女をさした。
九等身でバストとウエストの差は四十センチ近くありそう。
そんな女と付き合ったことなど、あるはずはなかった。
峰不二子が池袋のどこにいるというのだ。
エリーは感心したふうを装った。
俺は感情を抑えてボソリという。
「だけど、彼女は死んじまった。タンデムでのってるときにバイクがこけて。あいつ工事現場用のヘルメットを、首にかけてただけだったんだ……」
またもたっぷりと間を置いた。
「…脳挫傷でな」
「まあ」
隣では信じられないという顔をして、キヨヒコが俺を見ていた。
また、脛を軽く蹴ってやる。
あわててやつはいった。
「そうなんです。彼女はエリーさんみたいに美人で」
キヨヒコはらしくない勝手なアドリブを入れた。エリーに負けないほど、俺は身体をテーブルに乗り出した。
「だから、この絵じゃなきゃどうしてもだめなんだ。いったいいくらで買えばいいんだろうか。」
俺は腕組して天井をあおいだ。
感極まったふりをする。
顔を戻すと、エリーは眉のあいだにしわを寄せていた。口元だけ別人のように笑っている。
「キヨヒコに聞いたんだけど、この絵は五十万円で売ったんだろう。」
エリーはにこやかにうなずいた。
「そうでございます。」
俺は困った顔をしてやった。
「だからしいって、五十万で買う訳にはいかないよな。キヨヒコ、クレジットの返済総額はいくらくらいになるんだ」
テーブルから顔をあげずに、やつはいう。
「確か百六十万くらい」
ヴィーナスの顔から表情が消えた。
一瞬のフリーズ後、なんとか笑顔が復旧する。
「ですから、お値段に関しては、お二人の間で話し合いになられた方がいいと思うのですが。」
俺はじっとエリーの目をのぞきこんだ。
「でも、俺たちは美術の素人だ。こんな場合、どんなふうにすればいいかくらいアドバイスをもらっても、おかしくないよな。第一このリトグラフは買ってからまだ一週間だ。アフターサービスの一つとして、話くらいは聞かせてくれよ、人助けだと思ってさ」
俺はカンチレバー式の椅子の背に身体を預けた。なかなかいい弾力で背もたれがしになる。
さて、これから何時間ねばろうかな。
やつらの監禁部屋で、今度は俺たちがヴィーナスを監禁するのだ。
いくら詐欺まがいの絵画商法とはいえ、こんな事態を想定したマニュアルは無いだろう。
そこから俺とキヨヒコの無駄話が始まった。
のらりくらりと適当に話題を変えながら遠回りしたのち、何度もリトグラフの話にもどってくる。
営業妨害もいいところだろうが、こちらは客で暴力の一つもふるっていなかった。
新しいカモを何とか誘い込もうと必死だった。俺は口から出まかせをいう。
こういうのが大好きなんだ。
「俺昔、暴走族をやっててさ、そのころ付き合っていた女がこの絵にそっくりなんだ。」
俺は白いビキニの女をさした。
九等身でバストとウエストの差は四十センチ近くありそう。
そんな女と付き合ったことなど、あるはずはなかった。
峰不二子が池袋のどこにいるというのだ。
エリーは感心したふうを装った。
俺は感情を抑えてボソリという。
「だけど、彼女は死んじまった。タンデムでのってるときにバイクがこけて。あいつ工事現場用のヘルメットを、首にかけてただけだったんだ……」
またもたっぷりと間を置いた。
「…脳挫傷でな」
「まあ」
隣では信じられないという顔をして、キヨヒコが俺を見ていた。
また、脛を軽く蹴ってやる。
あわててやつはいった。
「そうなんです。彼女はエリーさんみたいに美人で」
キヨヒコはらしくない勝手なアドリブを入れた。エリーに負けないほど、俺は身体をテーブルに乗り出した。
「だから、この絵じゃなきゃどうしてもだめなんだ。いったいいくらで買えばいいんだろうか。」
俺は腕組して天井をあおいだ。
感極まったふりをする。
顔を戻すと、エリーは眉のあいだにしわを寄せていた。口元だけ別人のように笑っている。
「キヨヒコに聞いたんだけど、この絵は五十万円で売ったんだろう。」
エリーはにこやかにうなずいた。
「そうでございます。」
俺は困った顔をしてやった。
「だからしいって、五十万で買う訳にはいかないよな。キヨヒコ、クレジットの返済総額はいくらくらいになるんだ」
テーブルから顔をあげずに、やつはいう。
「確か百六十万くらい」
ヴィーナスの顔から表情が消えた。
一瞬のフリーズ後、なんとか笑顔が復旧する。
「ですから、お値段に関しては、お二人の間で話し合いになられた方がいいと思うのですが。」
俺はじっとエリーの目をのぞきこんだ。
「でも、俺たちは美術の素人だ。こんな場合、どんなふうにすればいいかくらいアドバイスをもらっても、おかしくないよな。第一このリトグラフは買ってからまだ一週間だ。アフターサービスの一つとして、話くらいは聞かせてくれよ、人助けだと思ってさ」
俺はカンチレバー式の椅子の背に身体を預けた。なかなかいい弾力で背もたれがしになる。
さて、これから何時間ねばろうかな。
やつらの監禁部屋で、今度は俺たちがヴィーナスを監禁するのだ。
いくら詐欺まがいの絵画商法とはいえ、こんな事態を想定したマニュアルは無いだろう。
そこから俺とキヨヒコの無駄話が始まった。
のらりくらりと適当に話題を変えながら遠回りしたのち、何度もリトグラフの話にもどってくる。
営業妨害もいいところだろうが、こちらは客で暴力の一つもふるっていなかった。