ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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またも途中のコンビニでミネラルウォーターを買ってしまう。
冷房のきいた室内でひと休み。
冷えてさえいれば水道の水で本来十分なのだ。
毎回地球の裏側から運んできた水を高いかねを出して買うなんて、まったくバカな話。
グリーン大通りでは、ティッシュとビラ配りをさけながら、木陰を縫って歩いた。
夏の池袋はキャッチの天国だ。東口の五差路まで駅からほんの五分ほど。
エウレーカのヴィーナスたちは、今日も額に汗をかきながら、カモ探しに余念がなかった。
ひときわスタイルのいいエリーに、俺たちはロックオンした。キヨヒコとまっすぐ女にむかう。
俺に気づいたエリーの表情が一瞬明るくなった。
一日購入を考えたカモが戻ってきたように見えたのだろう。
だが、次の瞬間、ヴィーナスの顔つきは一変する。
俺のうしろにダンボールのケースをもったキヨヒコを発見したのだ。
クーリングオフまえのリトグラフは、ピンを抜いた手榴弾と同じだった。
九日目にもっている人間がすべての損をかぶることになる。
俺は、凍りついたセールスレディにいった。
「ちょっとおたくの絵のことで相談があるんだ。昨日の部屋を貸してもらっていいかな。」
エリーは迷っているようだった。
おれはキヨヒコに目配せした。
「アズサさんは、ぼくの友人なんです。ジョナサン・デイヴィスのファンでもあるんですよ」
棒読みだが、やつにとっては上出来だった。
エリーの顔に商売笑いが戻ってくる。
「そうなんですか。では、ぜひうちのギャラリーにどうぞ」
ヴィーナスは現金だった。三枚のリトグラフのローンを組んで、もう購入余力のないキヨヒコをあっさりと無視したのだ。
店までの短い道のり、俺の右ひじには女の手がずっとそえられていた。
なんだかリハビリの最中みたい。
とおされたのは、前日と同じ商談室。
二回目には室内がよく観察できた。
テーブルには朱肉やペンの跡がのこっているし、よく見れば椅子の座面にタバコの焦げ目がある。
モダンなインテリアも、かなりしょぼくなっていた。冷たいジャスミン茶をまえに、エリーは満面の笑みを見せる。
「今泉さんが、桐山さんをご紹介くださったのですね。どうもありがとうございました。」
おれはとなりの契約社員を見た。真夏の雪ダルマのように溶けそうになっている。
俺はテーブルのしたで、やつのすねを軽く蹴った。
思い出したようにやつは薄手のダンボールをテーブルにのせた。
二重になった箱を開く。
なかには生成(きな)りの布に包まれたジョナサン・デイヴィスの額。
この男の絵と立派な額縁、どちらのほうがコストが高いのだろうか。
俺はじっとビキニ女のリトグラフを眺めた。
感動した振りを十五秒。
うんとためをつくってから、セールスレディに負けないほどおおげさにいった。
冷房のきいた室内でひと休み。
冷えてさえいれば水道の水で本来十分なのだ。
毎回地球の裏側から運んできた水を高いかねを出して買うなんて、まったくバカな話。
グリーン大通りでは、ティッシュとビラ配りをさけながら、木陰を縫って歩いた。
夏の池袋はキャッチの天国だ。東口の五差路まで駅からほんの五分ほど。
エウレーカのヴィーナスたちは、今日も額に汗をかきながら、カモ探しに余念がなかった。
ひときわスタイルのいいエリーに、俺たちはロックオンした。キヨヒコとまっすぐ女にむかう。
俺に気づいたエリーの表情が一瞬明るくなった。
一日購入を考えたカモが戻ってきたように見えたのだろう。
だが、次の瞬間、ヴィーナスの顔つきは一変する。
俺のうしろにダンボールのケースをもったキヨヒコを発見したのだ。
クーリングオフまえのリトグラフは、ピンを抜いた手榴弾と同じだった。
九日目にもっている人間がすべての損をかぶることになる。
俺は、凍りついたセールスレディにいった。
「ちょっとおたくの絵のことで相談があるんだ。昨日の部屋を貸してもらっていいかな。」
エリーは迷っているようだった。
おれはキヨヒコに目配せした。
「アズサさんは、ぼくの友人なんです。ジョナサン・デイヴィスのファンでもあるんですよ」
棒読みだが、やつにとっては上出来だった。
エリーの顔に商売笑いが戻ってくる。
「そうなんですか。では、ぜひうちのギャラリーにどうぞ」
ヴィーナスは現金だった。三枚のリトグラフのローンを組んで、もう購入余力のないキヨヒコをあっさりと無視したのだ。
店までの短い道のり、俺の右ひじには女の手がずっとそえられていた。
なんだかリハビリの最中みたい。
とおされたのは、前日と同じ商談室。
二回目には室内がよく観察できた。
テーブルには朱肉やペンの跡がのこっているし、よく見れば椅子の座面にタバコの焦げ目がある。
モダンなインテリアも、かなりしょぼくなっていた。冷たいジャスミン茶をまえに、エリーは満面の笑みを見せる。
「今泉さんが、桐山さんをご紹介くださったのですね。どうもありがとうございました。」
おれはとなりの契約社員を見た。真夏の雪ダルマのように溶けそうになっている。
俺はテーブルのしたで、やつのすねを軽く蹴った。
思い出したようにやつは薄手のダンボールをテーブルにのせた。
二重になった箱を開く。
なかには生成(きな)りの布に包まれたジョナサン・デイヴィスの額。
この男の絵と立派な額縁、どちらのほうがコストが高いのだろうか。
俺はじっとビキニ女のリトグラフを眺めた。
感動した振りを十五秒。
うんとためをつくってから、セールスレディに負けないほどおおげさにいった。