ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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バイトから帰って、夕方から真夜中にかけて、ずっと考えていた。
音を消した深夜のテレビを見ながら、リッカから借りてきた『展覧会の絵』を十何度か聞いていた。
俺はなんとなく悠に電話を掛けた。
真夜中だったがハッキリとした声がする。
『もしもし?』
「あ、悠。俺、梓。夜分に悪い。」
『おーう、どした?』
俺は簡単にヴィーナスと絵画商法の事を説明した。
悠は一通りを聞き終えると笑った。
『なるほど、刹那主義のアズサにはぴったりの仕事だな。』
「笑い事じゃないって。クーリングオフの期限はすぐなんだ。なんかアイディアは無いか?」
『そうさなぁ…ヒントをやる。』
「ヒント?」
『キヨヒコって奴が買ったイルカとビキニのリトグラフはそのうち値がついて、とても五十万では買えなくなるっていったんだろ?』
「そうだけ…」
頭のなかで火花が散った。一気に絵ができあがる。
ヴィーナスを追いつめるアイディアだ。
もっと細部まで計画を立てたほうがいいのかもしれないが、時間がまるでない。
あとはでたとこ勝負でいいだろう。
俺は礼をいった。
「悠、ありがとう。」
『おう、なんかアレばまた連絡くれ。』
俺は安心して、CDとテレビを消した。
なんとか窮地を切り抜けるアイディアをもらった。
俺たち男は頼れるのはやはり男のダチということか。
つぎの朝も抜けるような夏の青空。
俺はバイトを休む許可をもらって、西一番街を携帯をつかいながら歩いた。
午前中の池袋はさびれて、いい感じ。
「よう、キヨヒコ起きてるか。」
まじめな工員はすっかり目覚めた声でいう。
『どうも、アズサさん。エウレーカにいくっていってましたけど、どうでした』
俺は一連のいきさつを話してやった。
「そっちのときもだいたい同じ流れだったんだろう。」
やつは感心したようにいう。
『でも、途中で席を立てるなんて、アズサさんはすごいな』
いったいどこがすごいというのだ。
「あんなのは半監禁状態だぞ。嫌ならさっさとでればいいんだ。」
携帯の向こう側でキヨヒコの声が小さくなった。
『初めてのときは七時間もあの部屋でつかまったんです』
警察の取り調べも真っ青だった。
「それでおまえはクレジットの書類にサインしたのか。」
『ええ、まあ。それだけでなくエリーさんのこともありましたから』
どこまでもお人好しの男。
「そっちも例の美大をあきらめたって話を聞いたのか」
『はい、弟の学費もだしてるって。ぼくのときにはそれだけじゃなくて、ノルマに届かないとひどく給料が安いともいってました。歩合制になるのはそのノルマを達成してからで、そうでなければ、普通のOLと変わらないんだそうです』
「ふーん」
新しい情報がひとつプラスされた。結局は詐欺まがいの商法でさえ、楽ではないということか。
人生はきびしい。
俺は三枚のリトグラフのオーナーにいった。
「ところで、これから時間はあるか」
工場はひまな時期で、やつは延々と自宅待機だといっていた。
次に忙しくなるのは、正社員が夏休みをとる期間だそうだ。
使い捨ての契約社員も大変だ。
音を消した深夜のテレビを見ながら、リッカから借りてきた『展覧会の絵』を十何度か聞いていた。
俺はなんとなく悠に電話を掛けた。
真夜中だったがハッキリとした声がする。
『もしもし?』
「あ、悠。俺、梓。夜分に悪い。」
『おーう、どした?』
俺は簡単にヴィーナスと絵画商法の事を説明した。
悠は一通りを聞き終えると笑った。
『なるほど、刹那主義のアズサにはぴったりの仕事だな。』
「笑い事じゃないって。クーリングオフの期限はすぐなんだ。なんかアイディアは無いか?」
『そうさなぁ…ヒントをやる。』
「ヒント?」
『キヨヒコって奴が買ったイルカとビキニのリトグラフはそのうち値がついて、とても五十万では買えなくなるっていったんだろ?』
「そうだけ…」
頭のなかで火花が散った。一気に絵ができあがる。
ヴィーナスを追いつめるアイディアだ。
もっと細部まで計画を立てたほうがいいのかもしれないが、時間がまるでない。
あとはでたとこ勝負でいいだろう。
俺は礼をいった。
「悠、ありがとう。」
『おう、なんかアレばまた連絡くれ。』
俺は安心して、CDとテレビを消した。
なんとか窮地を切り抜けるアイディアをもらった。
俺たち男は頼れるのはやはり男のダチということか。
つぎの朝も抜けるような夏の青空。
俺はバイトを休む許可をもらって、西一番街を携帯をつかいながら歩いた。
午前中の池袋はさびれて、いい感じ。
「よう、キヨヒコ起きてるか。」
まじめな工員はすっかり目覚めた声でいう。
『どうも、アズサさん。エウレーカにいくっていってましたけど、どうでした』
俺は一連のいきさつを話してやった。
「そっちのときもだいたい同じ流れだったんだろう。」
やつは感心したようにいう。
『でも、途中で席を立てるなんて、アズサさんはすごいな』
いったいどこがすごいというのだ。
「あんなのは半監禁状態だぞ。嫌ならさっさとでればいいんだ。」
携帯の向こう側でキヨヒコの声が小さくなった。
『初めてのときは七時間もあの部屋でつかまったんです』
警察の取り調べも真っ青だった。
「それでおまえはクレジットの書類にサインしたのか。」
『ええ、まあ。それだけでなくエリーさんのこともありましたから』
どこまでもお人好しの男。
「そっちも例の美大をあきらめたって話を聞いたのか」
『はい、弟の学費もだしてるって。ぼくのときにはそれだけじゃなくて、ノルマに届かないとひどく給料が安いともいってました。歩合制になるのはそのノルマを達成してからで、そうでなければ、普通のOLと変わらないんだそうです』
「ふーん」
新しい情報がひとつプラスされた。結局は詐欺まがいの商法でさえ、楽ではないということか。
人生はきびしい。
俺は三枚のリトグラフのオーナーにいった。
「ところで、これから時間はあるか」
工場はひまな時期で、やつは延々と自宅待機だといっていた。
次に忙しくなるのは、正社員が夏休みをとる期間だそうだ。
使い捨ての契約社員も大変だ。