ー特別編ーWORLD・THE・LinkⅡ
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「ジョナサン・デイヴィスは日本ではまだそれほどではありませんけど、欧米では一流の作家です。あと何年かしたら、とてもこんな値段では買えなくなります。」
「だけど、俺には五十万なんて金ないよ。」
実際に無いのだった。
学生はリトグラフ売りと違って、ぜんぜん金にはならないのだ。
「それならだいじょうぶです。うちの提携先のクレジット会社がありますから、サインをしていただくだけで、あの絵は桐山さんのものになるんです。長期のローンにすれば月々の返済額もわずかですし、契約もすごく簡単なんですよ。あんなに素敵な絵を持っているセンスのいい人なら、私もお付き合いしたいなあ。」
これではもてない男たちが引っ掛かるのは無理もなかった。
間抜けなリトグラフに、もれなくグラマーなヴィーナスがひとりついてくる。
まあ、詐欺師のヴィーナスなんだが。
クレジット会社もグルなんだろう。
長期返済なら金利がかさむ。
エウレーカもクレジット会社も丸儲けである。
すでにここまでで、二時間半経過。
やつらの手口を調べるのはもう十分だった。俺はいきなり立ち上がった。
「あの絵はすごくいい作品だと思うよ。でも、もうちょっと考えさせてくれ。」
あきれた顔をしたエリーを残してさっさと商談室から出てしまう。左右の黒いアクリル壁にかかったジョナサンのイルカを横目に早足にギャラリーを出た。
こんなところで商売ネタになる哀れなイルカたち。やつらにも肖像権があればいいのに。
夕方、果物店にもどった。
リッカももどっていて店番をしていた。
「あ、梓くんおかえり、お母さんに変なことたのまれたんだってねー。」
俺は経緯を軽く話して定位置についた。
さて、エウレーカとエリーをどうするか。
残る期限はあと二日。
これが死刑執行までの期日でなくてよかった。俺の場合は失敗しても、キヨヒコが大損するだけだ。
女の勉強をしたと思えば、安いものかもしれない。
店先のラジカセには『展覧会の絵』がかかっていた。
原曲のムソルグスキーのピアノ版とラヴェルのオーケストラ版。
全然違うから時間のあるやつは聞いてみるといい。
ムソルグスキーは白黒の異様に迫力のあるデッサン。そいつにラヴェルが極彩色で精密に色をのせていったのがオーケストラ版だ。
比べてみると面白いよ。
俺が考えていたのは二点だった。
まずひとつは、キヨヒコのこと。やつが自分でもう一度エリーに会った方がいいだろうと、俺は思ったのだ。
なにごとも自分の目で確かめなくちゃ納得できないもんな。
とくに女心と五年ローンに関しては。
もう一点はエリーのことだった。ほとんどはマニュアルどおりのセールストークなのだろうが、貧しくて美大を断念したというところだけは、真実であるように聞こえたのである。
エリーの本心を確かめ、キヨヒコを納得させるには、どんな方法があるのか。
おれは「キエフの大門」の爆発するような左手バスの強打をききながら、じっくりと考えた。
タイムリミットは今夜である。
「だけど、俺には五十万なんて金ないよ。」
実際に無いのだった。
学生はリトグラフ売りと違って、ぜんぜん金にはならないのだ。
「それならだいじょうぶです。うちの提携先のクレジット会社がありますから、サインをしていただくだけで、あの絵は桐山さんのものになるんです。長期のローンにすれば月々の返済額もわずかですし、契約もすごく簡単なんですよ。あんなに素敵な絵を持っているセンスのいい人なら、私もお付き合いしたいなあ。」
これではもてない男たちが引っ掛かるのは無理もなかった。
間抜けなリトグラフに、もれなくグラマーなヴィーナスがひとりついてくる。
まあ、詐欺師のヴィーナスなんだが。
クレジット会社もグルなんだろう。
長期返済なら金利がかさむ。
エウレーカもクレジット会社も丸儲けである。
すでにここまでで、二時間半経過。
やつらの手口を調べるのはもう十分だった。俺はいきなり立ち上がった。
「あの絵はすごくいい作品だと思うよ。でも、もうちょっと考えさせてくれ。」
あきれた顔をしたエリーを残してさっさと商談室から出てしまう。左右の黒いアクリル壁にかかったジョナサンのイルカを横目に早足にギャラリーを出た。
こんなところで商売ネタになる哀れなイルカたち。やつらにも肖像権があればいいのに。
夕方、果物店にもどった。
リッカももどっていて店番をしていた。
「あ、梓くんおかえり、お母さんに変なことたのまれたんだってねー。」
俺は経緯を軽く話して定位置についた。
さて、エウレーカとエリーをどうするか。
残る期限はあと二日。
これが死刑執行までの期日でなくてよかった。俺の場合は失敗しても、キヨヒコが大損するだけだ。
女の勉強をしたと思えば、安いものかもしれない。
店先のラジカセには『展覧会の絵』がかかっていた。
原曲のムソルグスキーのピアノ版とラヴェルのオーケストラ版。
全然違うから時間のあるやつは聞いてみるといい。
ムソルグスキーは白黒の異様に迫力のあるデッサン。そいつにラヴェルが極彩色で精密に色をのせていったのがオーケストラ版だ。
比べてみると面白いよ。
俺が考えていたのは二点だった。
まずひとつは、キヨヒコのこと。やつが自分でもう一度エリーに会った方がいいだろうと、俺は思ったのだ。
なにごとも自分の目で確かめなくちゃ納得できないもんな。
とくに女心と五年ローンに関しては。
もう一点はエリーのことだった。ほとんどはマニュアルどおりのセールストークなのだろうが、貧しくて美大を断念したというところだけは、真実であるように聞こえたのである。
エリーの本心を確かめ、キヨヒコを納得させるには、どんな方法があるのか。
おれは「キエフの大門」の爆発するような左手バスの強打をききながら、じっくりと考えた。
タイムリミットは今夜である。